「おばあちゃんが最近ヘン…」子どもが認知症を知るための啓発サイト 体験ストーリーで学べます

佐橋大 (2022年6月29日付 東京新聞朝刊)
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認知症こどもサイトの「体験ストーリー」のひとこま

 2025年には高齢者の5人に1人がなるとされる認知症。子どもたちにも正しい知識を広めようと、ウェブサイトや漫画などを通して、症状や対応方法をやさしく伝える取り組みが進んでいる。

小学生向け「認知症こどもサイト」

 公益社団法人「認知症の人と家族の会」(京都市)は今春、小学生向けの学習サイト「認知症こどもサイト」を開設した。認知症への理解を深め、認知症の人と出会ったらどうするかを考えてもらいたいと計画。子どもを対象にした認知症サポーター養成講座の教材として使いたい、と自治体などからの申し出もあるという。

 認知症こどもサイトでは、認知症のことを学ぶ2つの「体験ストーリー」を用意。その1つの「おばあちゃんが最近ヘンなんです」は、小学2年の男の子が1人暮らしをしている80歳の祖母を訪ねたところ、夏なのに分厚いカーディガンを着て、家の中が散らかっているなど、様子がおかしいという内容だ。画面上の矢印をクリックすると紙芝居のように進んでいく。

 前編、後編それぞれの途中で、「『ヘンだよ』とおばあちゃんにはなす」「おかあさんに知らせる」といった対応の選択肢が出てきて、自分ならどうするかを考える。選んだ答えごとにストーリーが進み、祖母を悲しませたり、不快な思いをさせたりしない方法などを改めて考える。

 最後に、男の子が祖母の異変を感じたのは、認知症が原因だったことを「博士」が解説。認知症になっても、男の子を大切な孫だと思う祖母の気持ち、うれしい、悲しいといった気持ちは変わらないことも伝える。

学校での使用を想定したテキストも

 体験ストーリーは学校の授業で使うことを想定し、2つとも10分ほどで見られる分量。学校の先生も活用できるよう、サイト内に指導者向けのテキストも用意している。

 「認知症の人と家族の会」事務局の辻村康代さんは「核家族化で独居の高齢者が増えている。認知症の人を地域で支える必要性も高まっている」と指摘。「子どもたちがまちなかで知らない認知症の人に会っても、症状などを正しく理解して接してくれれば、認知症の人も地域で過ごしやすくなる」と話す。

 同会は、最近の子どもたちがYouTubeなどオンラインの情報に親しんでいることに着目。国内の競輪・オートレースを統括する公益財団法人JKAの補助を受けて認知症こどもサイトを整備した。辻村さんは「『認知症とは何だろう』と思ったら家でも活用してみて」と呼びかける。

ふりがな付き冊子「マンガで学ぼう」

 「認知症の人と家族の会」の愛知県支部などは小冊子「マンガで学ぼう認知症」シリーズ=写真=を発行し、希望者に販売している。「同じ物をいくつも買ってしまう」「お金の計算ができない」といった認知症の人に現れやすい症状を漫画で紹介。家族らへの専門家の助言も添えた。子どもでも読めるよう、全ての漢字にふりがなが付いている。こちらも認知症サポーター養成講座で使いたいといった注文が続いているという。

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 小冊子は12年前から少しずつ作っており、「基本編」から「施設のいろいろ編」まで全6種類。1冊100~200円で、送料などが別途必要。「認知症の人と家族の会」愛知県支部のホームページから注文できる。問い合わせは同支部=電話 0562(33)7048=で受け付けている。

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