コロナ・インフル同時流行への備えは? 感染制御学の専門家に聞く

植木創太 (2022年10月25日付 東京新聞朝刊)
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同時流行への備えを呼びかける中村敦さん=名古屋市瑞穂区の名古屋市立大学病院で

 この冬は新型コロナウイルスとインフルエンザが同時に流行する可能性が高いとされ、政府や医療機関が対応に追われている。私たちはどんなことに気を付ければいいのか。感染制御学が専門の名古屋市立大医学部教授、中村敦さん(60)に聞いた。

集団免疫が低下 国外からのリスクも

-同時流行が懸念される理由は。

 インフルは過去2年、新型コロナ対策の効果もあって流行しなかった。国が予防接種法に基づいて行う調査でも、年代によっては抗体の保有率が低く、以前と比べても低下している傾向が見られる。社会全体の「集団免疫」が落ち、感染が広がりやすくなっている。

 流行予測の指標では、南半球のデータが参考になる。日本と季節が逆のオーストラリアもここ数年は流行しなかったが、今年は4月後半から報告数が増え、例年を超える流行になった。日本も同じような動きになる可能性がある。ちなみに、欧州では昨秋から流行していた。海外からの入国が緩和され、国境をまたぐ人の行き来も増えており、ウイルスが国内に持ち込まれるリスクは高まっている。

 新型コロナは以前と比べて感染者や入院患者が少なくなり、医療現場も落ち着きを取り戻してきた。一方で、秋の行楽シーズンで全国旅行支援も始まり、人の流れは戻ってきた。人の流れが増えれば、再び感染が広がる恐れがある。同時流行すると思って備えておかないといけない。

-インフルとコロナはどうやって見分けるのか。

 いずれも呼吸器感染症で、発熱や喉の痛み、せきなどの症状はよく似ており、検査に基づいて診断するのが基本。発熱の原因は多種多様だ。コロナかインフルかにとらわれず、医師の診察を受けることが大事だ。

 同時流行で発熱患者が大幅に増えれば、発熱外来が逼迫(ひっぱく)し、診療や検査が追いつかなくなる。その場合、政府が示した対策案のように、重症化リスクの低い人にコロナの自己検査を促すなどし、リスクの高い人を確実に医療へつないでいかざるを得なくなる。コロナの検査が陰性なら、インフルは検査なしで診断して治療を始める選択肢もあり得るが、確実性に欠けることは心にとどめておいてほしい。

流行期は12~2月 早めに予防接種を

-同時流行に備えて市民ができることは。

 換気の徹底、飛沫(ひまつ)感染リスクの高い活動を避けるなどの「三密(密閉・密集・密接)回避」といった従来の新型コロナ対策はインフル対策にもなるため、引き続き意識してほしい。体調を整えてウイルスに対する抵抗力を保つことも忘れてはいけない。乾燥しやすい季節になるので、室内では加湿を心がけてほしい。寝不足や過労にならないことも大切だ。

 みんなマスクをしているから流行しないのでは、という声もあるが、会食や家庭など外す場面はあり、効果を絶対視するのは危険だ。国や都道府県が出す流行状況と共に、「子どものクラスや職場で休みが多い」といった周囲の状況にも気を配り、対策を取ってほしい。

 加えて、オミクロン株対応のコロナワクチン、インフルワクチンの両方を接種することが、流行の規模を小さくし、重症化を予防するためにも重要だ。今冬のインフルワクチンの供給は順調のよう。通常インフルが流行するのは、気温低下と乾燥が強まる12月から翌年2月。同時接種も認められるようになったので、時機を逸することなく、早めに接種することをお勧めする。

 また、高齢者はインフルの感染に続いて細菌による肺炎になり、重篤化することが結構ある。インフルで傷ついた気道に細菌がくっつきやすくなるためで、主な原因菌は肺炎球菌だ。身を守るために肺炎球菌ワクチンの接種も検討してほしい。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年10月25日

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