昔ながらの駄菓子屋は、働く母も癒やしてくれた
長竹祐子 (2023年4月20日付 東京新聞朝刊)
「今日はいい陽気ですね」「はい、いらっしゃい」。文京区本郷の駄菓子店「あさひ菓子店」。パンや菓子、飲料が並ぶ昔ながらの小さな個人商店で、高齢の店主夫婦と世間話をするのが何よりの楽しみだった。
平日の夕暮れ時、わが子を保育園や学童保育に迎えに行った帰りに、子どもに駄菓子代として100円玉を握らせる。最大限の菓子を買おうと子どもが真剣に選ぶ間、静かな店内でぽつりぽつり会話を交わした。
壁際のテレビで夕方のニュースを眺めながら、その日の話題に。ご主人の政治批判は辛口で痛快だった。4人の子を育て上げた奥さんは「今の人たちは大変よね」と、育児の悩みを優しくねぎらってくれた。
仕事と育児の両立で時間に追われるが、店に寄るとクールダウンし、ささくれた心が和らいだ。
一昨年にご主人が、そして今年2月の寒い日、奥さんが急逝し、閉店した。私はこれからどこで「何でもない話」をしたらいいんだろう。まけてもらった1円を返せていないよ、おばさん。
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