「学童野球の親の負担が重すぎる」に反響続々 練習付き添い、お茶当番、車で送迎…一切なくしたチームも

(2023年6月14日付 東京新聞朝刊)

座間ひまわり野球倶楽部代表の榊原貴之さん(奥)は「大人も子どもも楽しいと感じられるようにしたい」という=川崎市中原区で

古泉さんの子育て日記に共感と提案

 親の負担が重すぎることが理由で、小学生の息子が入っていた学童野球チームを辞めざるを得なかった-。漫画家の古泉智浩さんが東京すくすくで連載する「子育て日記」で、こんな経緯を書いたところ、共感や提案など約50件のさまざまな意見が届いた。読者の声を紹介し、子どものスポーツと保護者の関わりについて考えた。

「まさに今の私。息子の野球がつらい」

 古泉さんは今年4月の子育て日記で、小学3年の養子うーちゃんが昨秋から活動してきた野球チームを辞めたことを報告。練習時間が長く、親が一日中グラウンドにいなくてはならない雰囲気があったり、レクリエーション係を担わされて夏合宿に参加せざるを得なかったりと負担が重く、自分たち夫婦がついていけなくなったとし、うーちゃんに対して「申し訳ない思いでいっぱい」とつづった。

〈古泉智浩さんの子育て日記〉親の負担が重い少年野球 本当は応援したいのに…辞めました→こちら 

 「まさに今の私です。息子の野球がつらくてつらくて苦しいです」。こう気持ちを打ち明けるのは30代の女性。熱心な母親たちを見ると申し訳なさを感じるが、「母の役割、母のコミュニティーが苦痛。育休中だが、野球に行きたくないので仕事への復帰を早めることも考えている」という。

「当番はない」と聞いたのに…話が違う

 小学4年の男児を育てるシングルマザーの女性も「共感しかない」と感想を寄せた。道具やユニホームを譲ってもらえることになり、「親の当番はない」という話を聞いたため入団したが、やはり当番はあり、練習時間が予定を2時間も超えてしまうことも。保護者の親睦会への参加を断ったことがチーム内で問題視され、「居心地が悪い」と感じている。

 「子どものやりたい気持ちに応えたい思いはある。ただ、(親の)苦手な気持ちを押し殺してまでこの生活を続けることが正解なのか…。このままでは、親が精神的に参ってしまいます」

「成長も見えるし、大変だけど幸せ」

 一方、50代の女性は「親が頑張って参加する分、子どもと苦楽を共にでき、成長も見えるし、大変だけど幸せだと思います」とコメント。「でも、できない家庭を責めたり、強要したりはしないであげてほしい」と訴える。

 かつて息子が学童野球をやっていたという60代の女性からは、「子どもに協力するのは数年だけ。親が子どものために一生懸命協力、努力しているのを見せるのも大事。父親が苦手なことを頑張っているのを見たら、その気持ちは子どもに絶対通じます」とのアドバイスもあった。

チームにとって、一番つらいことは?

 練習の見守り、会場までの車の送迎、監督やコーチ、選手の飲料の準備など親に求められる役割は多い。

 「親が必ず何かの係を担わなければならない仕組みのチームであれば正直、古泉さんには合わないと思います」と書いたのは40代男性。「ただ昨今、野球に限らず親の負担を減らす動きがかなり増えてきて、ほぼなくしているチームが増えています。でないと、古泉さんのように辞めてしまう家庭がある。それはチームにとっては一番つらいことなんです」

 

 古泉さん親子はチームを辞めた後、野球教室や地元以外の子も受け入れているチームなど複数の体験練習に参加。自宅から少し離れた地域のチームに入り、親も子も前向きに活動に参加している様子を5月の子育て日記でつづっている。

〈古泉智浩さんの子育て日記〉新しい少年野球チームでうれしい衝撃 少ない当番「やれる人がやれば」→こちら 

親の手伝い一切なし!「座間ひまわり野球倶楽部」はこんなチーム

座間ひまわり野球倶楽部の練習風景

 ユニホームを着用せず、色とりどりのビブス姿でバッティング練習をする小学生たち。神奈川県座間市を拠点に活動する学童野球チーム「座間ひまわり野球倶楽部」の練習風景は、従来の学童野球のイメージとは違う。代表で指導者の榊原貴之さん(48)は「野球をやりたい子が楽しく続けられる土壌をつくりたい」と話す。

「監督やコーチのため」の風習なくそう

 30代から市内で野球教室を開き、今は神奈川県内の高校でも外部コーチとして指導する榊原さん。「技術を教えるだけではなく、試合の楽しみも感じてほしい」と考え、5年前にひまわり野球倶楽部の小学生チームを立ち上げた。

 その後、中学生や就学前の子どもたちにも対象を拡大。月4回ほど土曜か日曜に半日練習するほか、チームの子だけでなく野球に興味がある子ならだれでも参加できる平日放課後の活動日も月に2回ほど設けている。まだ人数は少ないが、近隣の他の野球チームに声をかけ、集まった子どもたちをチームに分けて対戦する大会なども開く。

 「学童野球では、保護者が車出しやお茶当番、イベントの企画などをするものという固定観念で、大きな負担が当たり前になっていることにモヤモヤしている人は多い」。榊原さんのチームでは、指導料や必要経費を賄うために月8000円(小学生)を徴収し、親の手伝いは一切求めない。

 「大人がすべきことは野球ができる環境づくりと安全管理。特に監督やコーチのために何かしなくてはならないといった風習は、なくすべきでは」

 小学5年の息子がチームで活動する賀沢(かざわ)勇介さん(40)は「地域のチームをいくつか見学し、息子が『ここでやりたい』と言ったので決めた。保護者同士の関係性も良くありがたい」と感じている。

 「野球が好き、やってみたい、という子どもたちが諦めることなく、輝ける場所を選べるのがベスト。既存のチームとはまったく違った自分たちのような取り組みも各地に広がれば」と榊原さん。「大人も子どもも楽しいと感じられるチームでありたい」

連盟が今月通知「強制や同調圧力が起こらないように」

 各地の学童野球チームを統括する全日本軟式野球連盟(東京)は今月、全国の支部に対し、チーム活動への保護者の協力を強制することがないよう求める通知を出した。

 通知では、父母会の設置や保護者のサポートを求めることは各チームの任意とした上で、「強制や同調圧力のようなことが起こらないように配慮してください」と求めている。

 保護者参加に関する注意点として、「伝統のあるチームであっても『ずっとこうやっている』『うちのチームはこうなんだ』と決めつけない」「(保護者が)役を担わないと子どもが(試合に)使ってもらえないなどの誤解を生まないことは大切」などと伝えている。

 小林三郎専務理事は「積極的に関わりたい保護者もいれば、そうでない家庭、そうできない家庭もある。そのことでチームに居づらくなるということがあってはならない」と指摘。「チームを運営する代表者や指導者の意識改革が必要だ」と強調する。

全日本軟式野球連盟の小林三郎専務理事

 連盟は選手の引き抜きなどを防ぐため、所属チームに対し、年度内に選手がチームを移ることを禁じている。ただ、入ってみて保護者の負担や指導者によるハラスメントなど「特別な理由」がある場合には移動も認められる。この点も周知徹底するため、昨年度、規定に明文化した。

 連盟によると、2022年度の全国の学童野球チーム数は、10年前より4000減り約9800で、初めて1万を切った。小林さんは「指導方法や費用面、チーム運営などさまざまな課題がある。野球以外にもいろいろなスポーツがあり、子どもたちに選択肢があることが大切。その中で、野球を選んでもらえる環境をつくっていきたい」と話す。

コメント

  • スポ少の野球チームに子供を所属させています。 毎週、土日祝はほぼ試合が組まれていて、各家庭からの車出し、審判の協力、お父さんコーチ、お母さんのスコアラー、見守りなど、がっちり各家庭の負担がありま
     男性 40代 
  • 現在息子がシニアリーグに所属して毎週末送迎1時間半を使って父母手伝いをしています。 家から近くにもシニアリーグはあるのですが、息子がこのチームで野球をやりたい!との事で通うことを決めましたが、父
    野球少年 男性 40代