児童養護施設の子どもたちに4年間かけ密着した映画「大きな家」 企画・プロデュースの齊藤工さん、監督の竹林亮さんに聞く 「お守りになるような作品に」
「もう来ないの?」一時的に訪れるのではなく
「今度、ピアノを聴かせてあげるよ」。4年前、1日限りのイベントのスタッフとして東京都内の児童養護施設を訪ねた日、齊藤さんは1日一緒に過ごして仲良くなった男の子から帰り際に声をかけられた。
「『また来てよ』という誘いと視線が、僕には『もう来ないの?』という問いに聞こえた」と振り返る齊藤さん。「一時的に訪れるのではなく、彼らと当たり前の時間を過ごすことが自分がすべきことなのではないか」と感じ、施設に足を運ぶようになった。
子どもたちと過ごす日常を重ね、職員の心根に触れるうちに、「子どもたちの物語や施設での日々を記録映像として残し、施設内で上映したい」という思いが募った。そんな時に、公開を劇場内のみに限った竹林さんの監督作品「14歳の栞(しおり)」を知り、「この手法なら、映画館をシェルターにして被写体の子どもたちのプライバシーを守れる」と映画化への道筋が見えたという。
過去にドキュメンタリー番組をともに作った竹林さんに相談し、企画が動き始めた。子どもたちや施設職員との信頼関係を築くため、準備に2年半、撮影に1年半をかけた。竹林さんは「こういうセリフ、こういうシーンを撮りたい、と目標を定めないようにした。子どもを追いすぎず、一緒に過ごす時間を楽しむように心がけた」と明かす。
日常にどう持ち帰るか「見た人自身が決めて」
施設での誕生日会、職員との進路についてのやりとり、18歳での巣立ち―。映画に登場する年齢も家族の状況も異なる子どもたちが、異なる場面で、ふと口にすることがある。「(施設の仲間や職員は)本当の家族じゃないから…」
それでも職員の手厚いケアを受け、子どもたちは揺れながら成長していく。竹林さんは「お守りになるような映画にしたかった」と話し、「全国の施設で暮らす子どもたちにも、ぜひこの映画をみてほしい」と願う。
国は「施設から家庭養育へ」との方針を2011年に打ち出したが、里親委託率は同年度末の13.5%から増加したものの、2022年度末時点で24.3%にとどまっている。齊藤さんは「日本の里親制度には欧米のような良い意味でのカジュアルさがなく、日本では多くの子は施設で過ごすと聞いた。自分自身の隣にある、そういう日常を見て見ないふりをしていた」と自らを省みる。
齊藤さんは「この施設で過ごす子どもたちに映画館の中で出会ってもらうことが作品の役割。エンタメとしてのうまみを抽出することを一切せずに生まれた作品だが、彼らの心の葛藤が、見た人自身の中に反射するのではないか」と期待する。竹林さんも「映画を見た人がそれぞれの日常にどう持ち帰るかは、見た人自身に決めてほしい」と話す。
映画「大きな家」は、6日から東京・渋谷のホワイトシネクイント、名古屋・センチュリーシネマなどで先行上映がスタート。20日以降、全国で順次公開する。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
私も物心ついた時から15歳まで養護施設にいました。
現実は男性職員による中学生の女の子への性的暴行や、寮長や職員による殴る蹴るの暴行は日常で、高校生や中学生の男子による年下の子供たちの暴力も普通でした。
今の本当の親子ですら虐待する世の中。どんな映画を作ったのかなぁ?って今思ってます。
2歳から施設に預けられ3歳で別の施設に行き18歳までいました。
いろんな有名人からコメントがきてるのをみました。が全部外側から見た綺麗なコメントで、所詮こんなものかなと言う印象です。
まだ映画を観ていないので感想は述べられません。
施設で暮らす人間の気持ちなんて絶対にわからない、18歳で世間に投げ出される気持ちなんて絶対にわからないデス