「保育士を見捨てないで」の声を届けたい コロナ禍で浮き彫り、保育現場の窮状を変えるために

(2020年5月19日付 東京新聞朝刊)

「あした退職する予定でしたが、記事を見てもう少し頑張ろうと」

 待機児童問題や保育士不足、保育の質…。東京すくすくで手厚く取り上げているテーマの一つが、子どもが育つ環境や保育現場で働く人たちの状況を伝える記事です。新型コロナウイルスの感染が広がる今は、毎日のように保育士らから切実な声が届いています。

 国は、待機児童対策を重点施策に位置付けますが、少ない保育士が多くの子を預かる状況や長時間労働、低賃金などの課題があり、より良い保育環境をつくる取り組みは不十分です。コロナ禍でこうした状況への怒りや不満が噴き出しているようにも見えます。

 「あした退職する予定でしたが、記事を見てもう少し頑張ろうと思いました」。大型連休明け、大阪府の保育士の女性から編集チームにメールが届きました。コロナ対応で疲弊する保育現場からのコメントを紹介した記事を見たそうです。

誤解を招く政府のCMにショック「通勤中に罵声を浴びせられた」

 政府は先月、医療従事者の子どもの預かりを拒否する保育所があるとして、こうした対応をしないよう求めるテレビCMを放映しました。女性は、全ての保育施設が同様の対応をしていると誤解され、通勤中に知らない人から罵声を浴びせられたそうです。心身が不調になり、仕事を辞めることも考えました。

 勤務する保育所で着替えるため、ジャージーを5枚用意。1日に10枚使うマスクは、ミシンを買い20枚手作りしたそうです。「つらい思いをしている保育士はたくさんいる。私たちを見捨てないで」と訴えます。国のCMに対しては、他にも怒りの声が寄せられました。

マスクも消毒液も足りない…3密を覚悟で出勤 コメント300件

 マスクや消毒液が足りない中、「3密」になりやすい職場に出勤せざるを得ない保育士ら。「園内を消毒して、残業も増えている」「政府にはもっと利用者の制限、時間短縮、マスクの支給、保育士の給料の値上げ、補償をお願いしたい」という訴えもあります。この2カ月で、保育現場の窮状を訴えるコメントは300件ほど届いています。

 一方、保育士たちは、休園や登園を控えている家庭で過ごす子どもたちの様子を気に掛けています。

 東京都内の認可保育所園長で、NPO法人こども発達実践協議会代表理事の河合清美さん(47)は「『マスクして!』『あちこち触らない』と怒られることが増えているのではないかと心配」と子どもたちを気遣います。協議会では、ウイルスの知識を分かりやすく伝える紙芝居を作り、読み聞かせ動画を公開しています。

 保育所は、子どもたちの成長や発達、子育て支援に欠かせない場所です。現場からの声を改善につなげられるよう、これからも東京すくすくでも、東京新聞の紙面でも伝えていきます。 

コメント

  • 保育士です。 育休・産休中の人も普通に預け、両親共に在宅の方も長時間預ける現状。私たちの負担はどんどん大きくなります。いっそ、保育園が休園すれば、それを理由に仕事を自粛せざるを得なくなり、コロナ感染
     
  • 保育士です。コロナ禍の中、保育士はまるでこの世にいないかのような扱いをされているようです。世の中の歪みや矛盾を一身に背負わされ続けています。在宅勤務の保護者に家庭保育の協力依頼をすれば逆ギレされ、開園