絵本は親子の思い出がつまった1冊のアルバム 破れてもいい、触れ合った時間が宝物になる
はじまるよ、はじまるよ、絵本の時間がはじまるよ――。先月21日、こどもブックワールド特別オンラインイベント『親子いっしょに楽しもう!絵本の時間』が開催されました。ページをめくるたびに広がる素敵な世界を案内したのは、聞かせ屋。けいたろうさんと、児童書専門店「ブックハウスカフェ」店長・茅野由紀さんのお二人。絵本の選び方や楽しみ方、読み聞かせのポイントなど、絵本の魅力を伝えた当日の模様をお届けします。
けいたろうさん&茅野さん 厳選の5冊
当日は、おうちで過ごす時間が増えるこれからの季節に合わせて、けいたろうさんと茅野さんが厳選した絵本5冊の読み聞かせが行われました。「絵本の時間がはじまるよ~」とウクレレを演奏しながら登場したけいたろうさんが紹介したのが、『わりばしワーリーもういいよ』(鈴木出版)。主人公ワーリーは、ラーメン屋さんの割り箸です。「おーい!ぼくをつかってよ! だけどワーリー なかなか なかなか なかなかつかってもらえません」と、読み聞かせ。茅野さんは「割り箸が主人公の絵本はかつてないですよね。作者のシゲタサヤカさんが生み出すキャラクターはどれも魅力的。文章も読みやすく、読み聞かせにピッタリの絵本だと思います」と作品の魅力を語りました。
続いての絵本は『わたしはじゅういさん』(潮出版社)。作者は本物の獣医さんです。「わたしはりっぱなじゅういさん だってね 小さいどうぶつも大きいどうぶつも みんなげんきにしてあげるんだ」と茅野さんが優しい口調で読み聞かせをします。けいたろうさんからは「主人公の女の子が動物たちに向けるまなざし、動物たちが飼い主をみているまなざし、すべてが優しい。ゆっくりとしたテンポで読んであげると、親子で優しい気持ちを共有できると思います。獣医さんの話を通して、仕事や職業について語り合っても面白いと思います」とアドバイスもありました。
ページをめくってドキッ! 一緒に体感
「おかあさん ねむっているの? はっぱのいろ あっちもこっちもかわったよ おかあさんのせなか ふかふか」と、けいたろうさんの声色が一段とやわらかくなった作品が、『ふかふか』(国土社)。クマの母子の愛情を描いた絵本です。茅野さんは「この作品は銅版画で描かれ、ふかふか感が表現されています。おかあさん、おかあさんと、クマの子が呼びかける様子は、たまらないですよね」と話すと、「お父さんはちょっとうらやましく思うでしょうね(笑)」(けいたろうさん)。
野で、山で、いつもの散歩道で,ふと目があった生きものたちの姿を描いた木版画の作品が、『みたらみられた』(アリス館)。「みたら、みられた」「みたらーー、みられた!」と茅野さんは言葉の抑揚やページをめくるタイミングに変化をつけます。けいたろうさんは「絵の圧がすごいですよね(笑)。表紙と裏表紙の絵がつながっているので、見開いてお子さんに見せてほしいです。ページをめくるたびにハッとしたり、ドキッとしたり、親子で体感してもらいたいですね」と作品の楽しみ方を伝えました。
「すみません、読みたがりやで」とけいたろうさんが最後に読み聞かせをしたのが、『とうみんホテルグッスリドーゾ』(岩崎書店)。「あきがふかまるころ どうぶつたちがやってきました ホテルグッスリドーゾへようこそ うさぎたちが げんきよくでむかえました」。ホテルグッスリドーゾは動物たちが安心して冬を過ごせるホテルのようです。「作者のかめおかあきこさんが描く動物たちはとっても愛らしいですね。細かいところも描き込まれていて、親子でじっくり何度も読んでもらいたい作品です」と茅野さんから絵本愛があふれます。
途中で子どもが飽きても、それでいい
当日は視聴者からの質問や悩みにお二人が答える時間もありました。「読み聞かせの途中で子どもが飽きてしまう」という悩みに、けいたろうさんは「最後まで読まなくても、絵本を触ったり、ページをめくったりして遊ぶだけでも良いと思います。親子の触れ合う時間が大切です」と笑顔で答えました。
また茅野さんが絵本の魅力について、このように語る場面も。「お子さんが小さいと、絵本を破ったり、汚してしまうこともありますよね。私はそれで良いと思っています。時がたつと、それが思い出になって、絵本がまるでアルバムのようになるんです」。多くの親子の思い出の1ページとなったイベントは幕を閉じました。そして、各家庭では楽しい読み聞かせの時間がはじまります。はじまるよ、はじまるよ――。
聞かせ屋。けいたろうさんの読み聞かせポイント
読み聞かせは自由です。無理に声色を変える必要もありません。一番大切なことは読み手である親御さんが絵本を楽しむこと!その絵本を好きだと思う気持ち、楽しんでいる雰囲気は、お子さんに伝わります。一緒に遊ぶように絵本を楽しみましょう。
聞かせ屋。けいたろう
絵本の文章作家・講演家。夜の路上で、大人に向けて絵本を読みはじめた聞かせ屋。親子読み聞かせ、絵本講座、保育者研修会で全国を駆け巡り、絵本の文章や翻訳も手がける。元保育士で2児の父。
ブックハウスカフェ店長・茅野由紀さんの絵本の選び方
お子さん自身が選んだ絵本はもちろん、親御さんがインスピレーションで選んだ絵本で良いと思います。それでもなかなか選べない場合は、書店の店員さんの意見を聞いてみるのも良いでしょう。豊かな読書体験を提供する、ブックハウスカフェにぜひどうぞ(笑)!
茅野由紀(ちの ゆき)
国内外を問わず1万冊を超える作品が並ぶ児童書専門店「ブックハウスカフェ」(東京・神保町)の店長。絵本に携わり15年、絵本をこよなく愛し続ける。2児の母。
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