ヤツらが妻を占領してしまうので、僕は祈る〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉
夜。
寝る前にベッドに倒れ込んだ妻が、「私もう死ぬ」と言った。子育てと家事に疲れて言った。
次の日の朝。三男が寝ている妻の元にいき、「ママ、まだ生きてるじゃん」とうれしそうに笑った。
妻は、いつも子どもたちに必要とされている。僕の比ではない。妻がいないと生きていけない生き物が4匹。
「ママ、ママ」「次こっちこっち」「いまぼく話してんだから」「全然聞いてくれないじゃん」と、ママを取り合い、わめく、すねる、泣く、叫ぶ。
僕はこの東京新聞の連載も、書くと最初に妻に読んでもらっている。しかし、ヤツらが妻を占領しているので、読んでもらうだけでも一苦労。
一瞬の隙をついて原稿を渡すけど、妻は妻で「今(読むの)?」と聞いてくる。あとにすると、またいつチャンスがくるか分からないので、「今」と答える。妻は「私の時間ないんやけど」とインスタを見ていたスマホを置き、面倒くさそうに原稿を手に取る。
僕は祈る。どうか妻が原稿を読み終え、感想を言ってくれるまで、赤ちゃん泣きださないでください。誰もけんかしないでください。「ママ、おしりふいて」とトイレから三男叫ばないでください(僕が行くと嫌がられる)。
原稿を読み終えた妻は大抵、「うん、面白かったよ」という。「どこが?」と聞くと、「全部」と答える。「どんなふうに?」と粘ると、ため息交じりに、「最後の方がなんとなく」とテキトーに答える。
僕はその答えに満足したわけではないけど、具体的にアドバイスされればされたで腹立つだろうから、これでいいことにする。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。11歳、8歳、4歳、1歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。
なるほど!
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とても楽しく読ませていただきました。
うちには男の子と女の子が1人ずついるのですが、お兄ちゃんはパパ大好きで、お尻を拭く役目もパパが担っています。私は、ラッキーと思う時と、私もパパみたいに必要とされたいと思う時があり、ちょっと複雑な気持ちです。パパはパパで、息子に愛されて嬉しいながらも、妹はパパっ子にならないように、密かに願っているようです。
いつも楽しく読んでいます。
お父ちゃんやってます!というタイトルなので、奥様の話よりはお父様がどのような育児や家事(ともに具体的に)されているのか興味があります。
ママは人気者や妻は子どもたちに必要とされているという言葉を使い、巧みに育児や家事をまるごと奥様に押し付けてない?と穿った見方をしてしまいました。
因みに奥様の休日は作っていますか?