障害児育児の「しんどい」イメージ変えたい 希少疾患の子を育てる母親がつくった「パラリンビクス音頭」
「暗いイメージしか持てなかった」
穐里さんの長男明ノ心(あきのしん)さん(9つ)は、生後3カ月の乳児健診をきっかけに難聴と分かった。穐里さんは「その先に暗いイメージしか持てなかった。『自分の思うような子育てができない』と何日か泣いた」と振り返る。
でも目の前の明ノ心さんがかわいいことには変わりなかった。この時「『理想の子育て』なんて、自分のエゴだと気付いた。息子のために何ができるか考えようと思って、気持ちを切り替えられた」という。
明ノ心さんはその後、難聴などの症状が出る「ワーデンブルグ症候群」や、自閉症と診断された。今は歩いたり食べたりできるが、話すことはできず、表情や手でほしいものを指し示すことなどでコミュニケーションを取っている。
障害者スポーツの知識を生かして
穐里さんは22歳の時からフィットネスインストラクターとして活動してきた。27歳でインストラクターの養成校を設立し、30歳の時に入った大学で障害者スポーツを学んだ。
こうした経験や知識を生かして2020年、理学療法士らと発達障害児向けの運動プログラム「パラリンビクス」を考案。カニの横歩きや、フラミンゴの片足立ち、ヤモリが壁をはい上がる様子といった、動物などを表現した50種類の動きがある。
この動きに、より親しみをもってもらおうと、BGMに乗せた「音頭」を制作した。老若男女が楽しめるようにと、メロディーは盆踊り風。子どもが口ずさみやすい「パチパチ」「リンリン」などの擬音語を入れた歌詞に合わせ、パラリンビクスの動きをダンスとして構成している。
公募の親子でPV撮影 イベントも
2月には、公募した障害児や親らによる音頭のプロモーションビデオ(PV)を撮影。3月21日にPVの披露やダンス解説のオンラインイベントを開催し、その様子はYouTubeで見ることができる。
「撮影時はみんな楽しそうに踊ってくれた」と穐里さん。「音頭を楽しむ親子の姿を発信することで『しんどい』『先が見えない』といった障害児育児へのイメージを変えたい」と話す。
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