重度障害児はもっと意思を伝えらえる 視線入力訓練アプリEyeMoTは「希望の種」
眼球の動きでパソコンを操作して…
神奈川県からは、横浜市立東俣野特別支援学校の在校生や卒業生数人と家族が参加する。カメラで眼球の動きをとらえる視線入力装置を付けたパソコンを操作し、液体を混合するポンプを動かして横浜名物・崎陽軒のシウマイの「たれ」を作り、来場者にふるまうイベントを企画した。
今月中旬、横浜市内の福祉施設に集まった3人が視線入力の練習をしていた。指導役は人工呼吸器を付けた4年生、古川結莉奈さん(10)。ベッドの上から、見やすい位置に固定されたパソコン画面のイラストに視線を合わせると、コードで接続したポンプが作動。4つの容器に入った水が、それぞれのチューブを通って1つのコップに注がれた。イベント本番では、しょうゆや酢などを混ぜてオリジナルのたれをつくる。
「介助を受け食べさせてもらうだけだった子どもたちが、『召し上がれ』とふるまう側になる。自信がついて世界がぐっと広がる」と母親の綾子さんは言う。
「できた!」積み重ねて楽しく習得
アイモットは、画面上の動物に視線を向けると鳴き声が出たり、動く風船を注視して打ち落としたりするゲームがあり、楽しみながら視線入力を習得できる。光る鍵盤を目で追ってメロディーを奏でたり、表示された文字を入力したりする練習もできる。視線が少しずれても風船が割れるよう設定できるなど、「できた!」という成功体験を重ねられる工夫がされている。
結莉奈さんが視線入力に取り組んだのは5年前。自宅のベッドに寝たままで視線を合わせられるよう、綾子さんはパソコンを固定するスタンドの高さや角度を試行錯誤を重ねて調節した。訪ねてきた人に視線入力で「おはよう」「ありがとう」とあいさつできると、達成感もあって表情が豊かになってきたという。
寝たきりの子も「分かっている」
アプリを開発したのは島根大大学院の伊藤史人助教(47)=福祉情報工学。視線入力装置が安価になったのをきっかけに2014年、アイモットを無料公開した。
EyeMoT(アイモット)は伊藤史人さんが主宰するサイト「ポランの広場」で無料公開されています。→こちら
現在は全国の特別支援学校などで約1万人が使っている。支援学校の教員からは「意思疎通が難しい寝たきりの子は『分からない』『理解できていない』とされてきた。アイモットで外に発信するチャンスを得て、『この子は分かっている』に変えることができた」と感謝が伝えられた。
クラファン実施中 ゲーム大会も
7月には、各地域の重度障害児が視線入力で対戦するオンラインゲーム大会も計画中。伊藤さんは「病院の天井を見て暮らしている子にもっと広い世界を見せてあげたい。大事なのはその子を信じること。希望の種をまき続けていきたい」と話している。
伊藤さんらは、イベント費用や、視線入力装置の購入費用などを賄うため、2月28日午後11時までクラウドファンディングを実施している。
なるほど!
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たいへん興味深く、拝見させていただきました。
障害者施設に勤務していますので、導入できればと思っていますが、上司の考え次第です。