川崎市で広がる「寺子屋先生」 人生経験を生かして勉強、遊びを伝える 養成講座も開催
「努力が認められる経験」を
「先生、できたよ、見てみて!」。今月15日の放課後、川崎市立さくら小学校(川崎区)の家庭科室で開かれた寺子屋には、教材を持って集まった子どもたちの元気な声が響いた。
同小の寺子屋「寺子屋さくらッ子」は、2022年12月に始まった。市民らでつくる「さくらもと地域教育会議」が運営。「一人一人の子どもが寺子屋で子ども時代を謳歌(おうか)してほしい」との思いで、9人のメンバーが先生として参加している。
代表の高野詔次さん(80)は「楽しいことをして息抜きができれば。子どもたちは結果だけを求められがちだが努力が大切。努力が認められる経験を増やしてあげたい」と話す。
勉強の後は、折り紙や将棋も
さくらッ子は、1時間程度の開催時間のうち30分ほど勉強し、残りは遊びの時間としている。漢字ドリルなどに取り組んだ後、子どもたちは紙飛行機を飛ばしたり、折り紙を折ったり。将棋にチャレンジする子もいた。
3年生の桑澤朱莉さん(9)は「先生がみんな優しい。勉強も教えてくれて音読も聞いてくれる。寺子屋に来て計算も速くなった」。同じく3年生の宮下凜花さん(9)も「先生が勉強を教えてくれるからうれしい。割り算ができるようになった。お絵かきもできる」と喜んでいた。
2014年度に始まった寺子屋事業は、NPO法人やPTAを通じてできた地域のグループなどが実施団体となり、小・中学校や特別支援学校などが開催場所になっている。協力企業も宇宙航空研究開発機構(JAXA)など60団体以上にまで増え、企業の協力で工作体験をしたり、地元のダンスチームに踊りを習ったりと、それぞれの寺子屋が独自の活動を展開している。
大人のための「先生」養成講座
先生役として関わりたいという大人のために用意されているのが、寺子屋の意義や最近の学校事情などを学ぶ養成講座だ。さくらッ子のメンバー松田道世さん(75)も講座を受講してメンバーに加わった。「燃料電池関係の仕事をしてきたが定年後時間ができ、その経験を子どもたちに教えることができればと思った。地域のイベントでも子どもが『先生』と呼びかけてくれたりする」とやりがいを話す。
羽鳥正策さん(69)も「話していくうちに、落ち着いて過ごせるようになった子もいる」と子どもたちの変化を感じている。
高野さんは、「子どもたちに信頼してもらい、心と心が握手できるような関係をつくってステップアップしていきたい」と話した。
本年度最後の「寺子屋先生」養成講座が2月7、14、21、28の4日間、中原区の生涯学習プラザで開かれる。今月24日までに川崎市のホームページから申し込む。問い合わせは、川崎市生涯学習財団=電話044(733)6626=へ。
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