LGBTの子どもが悩むこと、周囲の大人ができること 当事者の遠藤まめたさんに聞く
見分けるのではなく、子どもの気持ちを尊重する
―同性愛者や、生まれた時の性別と自認する性別が異なるトランスジェンダーなど、LGBTへの認識は広がりつつあります。
自分は兄2人の下に生まれた、親にとって待望の女の子でしたが、物心つくころからリカちゃん人形が苦手で、スカートは嫌。「女ではない」と思って子ども時代を過ごしました。小学校の作文の時間に原稿用紙に「わたし」と書けずにかたまったこともあります。高校の時、「セーラー服をズボンに替えたい」と訴えると、先生は「思春期の勘違いじゃないかな」と言い、絶望的な10代でした。今はLGBTの情報や知識が格段に増えて、若い当事者の集まる場でも、学校で望む性別の制服に替えてもらったなど、いい話も聞くようになりました。
ただ、今も中学校の教科書には「思春期になったら異性にひかれる」といったことが書かれていて、家族が描かれる時も、ひとり親や同性カップルは出てきません。日本社会はLGBTがいない前提で動いています。そうした中で、いじめられたり、不登校になったりと悩んでいる子も多くいるのが現状です。
―親や学校の先生、保育士など、周囲の大人が気を付けることはありますか。
LGBTかどうかを見分けることはできないし、する必要もありません。LGBTに限らず、すべての子が好きなことを伸び伸びできて、気持ちが尊重されることが大切です。
早い子は、保育園や幼稚園の時に性別への違和感を持ちます。自分は女の子であるという感じ方があるのにも関わらず、男子として生きなさい、男子だから人形遊びはやめなさいと強いられるなど、好きに遊ぶことを許されない子もいます。好きなおもちゃや服などを、頭ごなしに「おかしい」と否定しないでほしいと思います。
子どもは大人をよく見ています。大人が「オネエキャラ」と呼ばれる人たちをからかうようなテレビ番組を見て、それに同調していたら、悩んでいる子どもは言い出しにくくなります。「こういう生き方もあるよね」と多様な性について好意的な反応をしたり、一緒に本を読んで学んだりしてほしいですね。
社会にあふれる「男女分け」必要なのか考え直す
―自分の子がLGBTかも、と思ったらどうすればいいのでしょう。
特に小学生以下の場合、性別への違和感は継続しなかったり揺らいだりすることもありますが、今、目の前にいる子どもの気持ちを尊重することが、その子の自尊心を育てることにつながります。
あとは、家族が抱え込まないこと。昨年から15歳以下の子どもと家族の交流会を始めましたが、家族も周囲の無理解に悩んだり、孤立したりしやすいです。家族間でも受け止め方が違うこともあります。専門の相談支援機関や自助グループを活用するのもよいでしょう。(遠藤さんが世話人を務める10代~23歳の当事者の居場所「にじーず」のサイトにも他団体紹介があります)
―他にできることはありますか。
社会にあふれる不要な男女分けを見直すのも重要です。餅つきで、男子はきねをつく役、女子は餅を返す役と決めていた幼稚園がありましたが、必要でしょうか。良い例では、誕生日にもらえるメダルのリボンを男の子は青、女の子はピンクにしていた保育園が、いろいろな色から子どもに選ばせるようにしました。その方がLGBTに限らず皆が喜びます。
海外では、英王室のウィリアム王子がゲイ雑誌の表紙を飾るなど、影響力のある人がLGBTに好意的な発信を始めています。日本のドラマやアニメも、同性愛などを扱い出していて、子どもの方が詳しく柔軟です。むしろ大人から多様な性を話題にしてみてもいいかもしれません。子どもに学ぶことも多いはずです。
えんどう・まめた
一般社団法人にじーず代表。トランスジェンダー当事者としての自らの体験をきっかけにLGBTの子ども・若者支援に関わる。近著に「教師だから知っておきたいLGBT入門」(ほんの森出版)ほか。毎日小学生新聞にコラム連載中。NHK Eテレ「虹クロ」監修。
※記事の一部とプロフィールを加筆、修正しました(2024年6月10日)
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