面会交流は公共の場で、集団で 「あったかハウス」の支援の狙いは〈離婚しても「親子」 後編〉

加藤祥子 (2025年4月30日付 東京新聞朝刊)
 さまざまな支援方法がある親子交流(面会交流)。NPO法人・あったかハウス(名古屋市)は10年ほど前、公共の場所を使って集団で子どもを受け渡す「面会交流広場」を始めた。専門家によると、全国でも珍しい取り組み。意義や課題を支援担当総括責任者の中尾康子さん(70)に聞いた。 
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面会交流支援の取材に応じる中尾康子さん=名古屋市昭和区のあったかハウスで

他の親子の姿に「安心感」と「覚悟」

―面会交流広場とは。

 公園や商店街など、決まったエリアで複数の親子が面会交流できる支援です。愛知県内のショッピングセンターから始め、今は、名古屋市の鶴舞公園と、大須商店街・白川公園の2カ所で開催。月平均で計約14組が利用しています。

 子どもが小学生くらいになると、動き回りたくなり、従来型の室内での見守り以外の方法も必要だと、家庭裁判所の元調査官で理事長の沢井俊穂が考えました。

―広場の良さは?

 複数の親子が集合場所に集まり支援スタッフが子どもたちを預かり、別居の親に受け渡しをします。同じような境遇の子たちが一緒なので、「自分だけが特別ではない」という安心感を抱いているように感じます。

 親も他の親子の姿を見るので、同居親には、別居親に子どもを預ける覚悟が芽生え、別居親は「決められたルールを守らなければ」との思いを強くしているようにも見えます。

 屋外のため、子どもも開放的。遊具で遊んだり、ショッピングを楽しんだりします。当たり前の風景のようですが、その子にとっては、別居の親と過ごすひとときは日常ではありません。

面接で不安があれば、交流支援はしない

―安全の配慮は?

 事故は今まで一件も起こっていません。この活動で一番大事なのは、交流後に同居親の元へ子どもを帰すこと。事前面接をして、誓約書を1項目ずつ読み上げて確認し、署名してもらいます。連れ去りをしないことも盛り込んでいます。写真や動画撮影の許可など、その家族ごとにルールも決めます。面接で不安を感じた場合は受けません。

 交流中はスタッフが近くで待機し、体調不良や帰りたいという子に対応します。当日、子どもが「どうしても行きたくない」と言う場合も。無理やり連れて行くことはできません。

―現在の課題は。

 広場の利用料は1カ月に1回までで年間1万2000円と低価格。ぎりぎりの経営状態です。

 親子の面会は、DVなどの影響を受けている一部を除いて、子どもが成長する上で大切なこと。別居する親を知ることや、会いに来てくれたという経験です。面会の機会を保障してあげることが大事だと思って活動しています。そういった組織があることを知ってほしいです。

支援団体がない地域も

 面会交流について立命館大の二宮周平名誉教授(家族法)は「子どもの権利であると同時に、虐待などがなければ、親の権利でもある」と説く。その上で、父母の関係性がさまざまであるため、多様な形の支援が大事だと訴える。

 あったかハウスの実践では、エリアを区切って自由に遊べる仕組みをつくり、10年もの間、ルール違反や事故なく続いている点を評価。国の事業の「一時預かり」を利用したふぁみちぇん(名古屋市)の支援は、利用のしやすさから、他地域に広がることを期待する。

 だが、支援団体がない地域も多く、運営費や場所の確保などで課題を抱える団体も少なくない。二宮さんは「より多くの子どもが面会交流できるよう、公的支援が必要だ」と指摘する。

 そのために面会交流の際のルールや団体の適切な運営といった活動の質の保証が欠かせない。二宮さんは、一般社団法人・面会交流支援全国協会を設立し、2023年から基準を満たした団体を認証している。「質を保証することで、公的施設を利用したり、補助金を得たりできるようにしたい」と話している。

〈離婚しても「親子」〉同居親と別居親のコミュニケーションが取りにくく、子どもと別居親の面会交流がスムーズに出来ない人たちのために、間に入って支援する団体があります。先進的な事例を取材しました。

過去の連載はこちらから。
両親の関係が壊れても、子どもが別居親に会えるように 面会交流を支える「ふぁみちぇん」の試み〈離婚しても「親子」 前編〉

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