別居親との面会交流 「両親が顔を合わせずに」を支える試み 〈離婚しても「親子」 前編〉

加藤祥子 (2025年4月23日付 東京新聞朝刊)
 離婚によって離れて暮らすことになった親と子が定期的に会ったり手紙をやりとりしたりする「親子交流(面会交流)」。子どもにとっては別居する親から愛情を感じる大切な機会となり、民法の改正によって、離婚前から家庭裁判所が交流を促せるようになる。ただ、一度関係が壊れた両親にとっては対応が困難なケースも。実現に向けて、どんな支援方法があるのか、取材した。
写真 面会交流を終え、受け渡し場所にきた親子

面会交流を終え、受け渡し場所にきた親子=愛知県半田市の子育て支援センターで

子の受け渡し、一時預かり支援の場で

 幼稚園に通う次男を抱っこした40代の男性が、小学校低学年の長男と姿を見せた。3月中旬の土曜夕、愛知県半田市の子育て支援センター。妻とは離婚調停中で、子どもたちとは別居している。2週間ぶりの面会交流を終え、2人を送り届けにきた。男性が施設を離れると、妻側が子どもたちを引き取った。

 この夫婦が頼るのは、一般社団法人Families Change(ふぁみちぇん)=名古屋市=の支援。子ども子育て支援法に基づく「一時預かり」事業を、子どもの受け渡しの場とする新しい仕組みだ。同法人が2023年から民間託児所で始め、今年3月からは半田市とも連携する。

 男性はこの日の朝、同センターで子どもを預かり、以前は4人で暮らしていた自宅へ。プレゼントするブロックを隠して見つけてもらう「宝探し」を企画し、発見後は一緒に組み立てて遊んだ。子どもたちの祖父母も合流し、楽しいひとときを過ごせた。男性によると、長男から「次はいつ?」と聞かれたといい、「面会交流調停の調書で、今後、宿泊の検討も協議するよう書かれている。旅行にも連れて行ってあげたい」と期待を膨らませる。

「スタッフ付き添い型」より自由度高く

 面会交流の是非は父母の協議で合意できなかった場合、家庭裁判所の調停や審判で決まる。虐待の恐れなどの子どもの不利益がなければ実施されるが、感情のもつれやDV被害などで関係が壊れた両親には、そもそも顔を合わせること自体が困難なことも多い。

 そこで間に入るのが第三者機関。安全安心を最優先にし、決まった場所でスタッフが1、2時間、交流を見守る「付き添い型」が定番となっている。

 同法人は、この方法でも支援するが、もっと自由に、子どもの希望もかなえられないかと模索。一時預かり事業を活用することを思いついた。

 受け渡し時間に合わせ、法人が交流の前後にそれぞれ1時間の枠を確保。同居親が子どもを預けた後、30分後に別居親が迎えにくる。交流後は逆の流れ。公的な事業を利用することで、一定の時間的な自由度を確保しつつ、利用者の経済的な負担も抑えられる。時間厳守が前提だが万が一、遅れる場合は法人スタッフが双方に連絡して調整する。

 この方法での支援を受ける県内の40代女性は当初、元夫と子どもを3人だけで会わせることには不安があった。まずは付き添い型から始め、子どもとの接し方などの元夫の様子を確認し、より自由な交流方法に変えた。「息子は面会を楽しみにしている。水族館など行ける場所も広がった。私にも自由な時間が生まれリフレッシュできる」と話す。

 法人の共同代表理事の今枝朱美さん(64)は「離婚前の交流を促される点を不安に思う人もいると思う。それぞれのニーズに応え、親と会えていない子がなくなれば」と願う。

「相手と関わりたくない」交流の実施率は3~5割 

 面会交流は、2011年に民法で明記された。ただ、2021年の厚生労働省の調査では、実施率は母と同居する場合で3割、父との同居でも5割弱にとどまる。面会について取り決めていない家庭も多く、6割強に上る。母子家庭では、その理由として「相手と関わりたくない」が26%とトップになっている。

 法務省が公表している一覧には、全国にある支援機関として66団体が掲載されている。法律で明文化される前から取り組んできたのが、家庭裁判所の元調査官らが中心となりつくった公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC)で、全国11カ所に相談室がある。

 その一つ、名古屋市の名古屋ファミリー相談室は、マンションの一室などで「付き添い型」を実施。数年前からは、市内の児童館1カ所の許可を得て、面会交流の場としている。

〈離婚しても「親子」〉同居親と別居親のコミュニケーションが取りにくく、子どもと別居親の面会交流がスムーズに出来ない人たちのために、間に入って支援する団体があります。先進的な事例を取材しました。
後編はこちらから。
面会交流は公共の場で、集団で 「あったかハウス」の支援の狙いは〈離婚しても「親子」後編〉

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