自殺した中学教員の父に、教委幹部が耳を疑う一言… 長時間労働の改善を訴え遺族らが会見
日記に「今、欲しいものは…睡眠時間」
友生さんは2014年、福井県教員に採用され、若狭町立中に赴任。1年の担任や社会などの教科、野球部の副顧問を担当していたが、同年10月に自殺した。残された日記には「今、欲しいものはと問われれば、睡眠時間」「指導案、レポートとやらねばならないことがたくさんあり、しかし体が動かず…」などとつづられ、表紙の裏には「疲れた。迷わくをかけてしまいすみません」と走り書きがあった。最後の言葉とみられる。
友生さんの死去後、富士男さんは町教委事務局長にこう言われ、がくぜんとした。<亡くなったことは残念ですが、皆に慕われたいい先生で、よかったではないですか>
「耳を疑った。『いい先生』だから、息子は自分を追い詰めたというのか」
富士男さんは、自殺の原因は長時間労働による精神疾患で、学校側が安全配慮義務を怠ったとして、美浜町と福井県を相手に福井地裁へ損賠提訴。パソコンの記録などから残業が月128~161時間にのぼると訴えた。2019年に勝訴。町と県は控訴せず、確定した。
お金が増えても、残業が減らなければ
あれから4年。教員の長時間労働、なり手不足は深刻なままだ。永岡桂子文部科学相は今月22日、給特法のあり方を含む教員の処遇改善、働き方改革の検討を中央教育審議会(中教審)に諮問した。
これに先立ち、自民の特命委員会がまとめた提言では、給特法を改正し、残業代が出ない代わりに教員に支給する「教職調整額」を現行の「月給の4%」から「10%」に増額すべきだ、などとしている。
「お金が増えても、残業や仕事が減らなければ、過労死はなくならない」と富士男さんは言う。「今、自分の命は守られていますか?と、頑張っている先生方に問いたい。時間や仕事に追われるのではなく、子どもたちに親身に寄り添えるよう、働く環境を整えてほしい」
働かせ放題の温床・給特法 自民改正案は「管理職の責任があいまい」
解像度の低い言葉「頑張っている」
自民案は
- 教職調整額を基本給の4%から10%以上に増額
- 学級担任手当の新設など処遇改善
- 校務デジタル化などによる効率化で残業時間月45時間以内を目標にし、将来は月20時間以内を目指す
―など。一般企業のような時間外手当の導入は「取るべき選択肢とは言えない」と否定的だ。
残業を減らすには、教員の仕事を減らさなければならないが、小室社長は「この行事はしなくてよい、この資料は作らないなど、仕事を減らすには管理職の許可が必要。責任が不明確では減らせない」と懸念を示した。
自民案で処遇改善について「真に頑張っている教師が報われるよう、職務の負荷に応じた給与体系」の構築をうたっていることには、中原淳・立教大経営学部教授が「『頑張っている』などという、解像度の低い言葉で政策を決めないでほしい。丸1日、学校にいて、先生方の多忙な実態を見てほしい」と話した。
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