キラキラしたママも、実は精神的に孤立… ママ友にも言えないSOSに寄り添う「ホームスタート」

加藤健太 (2019年11月6日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
 慣れない育児に悩む親たちの元をボランティアが訪問して支えるホームスタートという取り組みがあります。実施団体「ホームスタートこうとう」の磯野未夏さん(55)にホームスタートの特色や、利用する良さなどを聞きました。
写真

「孤立するママたちに寄り添ってきた」と話す磯野未夏さん

特集・変わりたいあなたのために

電話をくれただけでも「よく頑張ったね」

―ホームスタートはどんな人たちが利用しているのですか。

 身なりもおしゃれで、お金にも困っていないし、ママ友もいる。私たち「ホームスタートこうとう」が活動する東京都江東区は、豊洲や有明など臨海部にタワーマンションが建ち、子育て世帯が多い地域。利用者の多くは、一見すると悩んだり困ったりしているようには見えないママたちです。

 それでも訪問してほしい、とSOSの連絡をしてくるのは、精神的に孤立しているからです。このままではまずい、と自分で電話をしてきてくれた時点で、その人は一歩を踏み出している。まずは「よく頑張ったね」と伝えるようにしています。

写真

ボランティア養成講座の様子=東京都江東区で(ホームスタートこうとう提供)

本音を打ち明けられる、ちょうど良い存在

―利用者と接していてどんなことを感じていますか。

 子どもと2人きりは息苦しいから、社会とのつながりは欲しい。でも、「話が漏れるかもしれない」などとためらい、ママ友ともそこまで深く関わることはできず、本音を打ち明けられない。そういう悩みを持つ人たちにとって、私たちはちょうど良い存在なのかもしれません。秘密を守り、話をじっくり聞くことを大切にしています。

 児童館などで開かれる子育て広場や、子育て支援センターなどの行政機関に行くのにもためらいがあって、「一緒に行ってほしい」と頼まれることもあります。

写真

家庭訪問型子育て支援の意義を語る磯野未夏さん(左)と石岡桜子さん

週1で訪問、全6回 ママの表情が変わる

―訪問支援の良さはどんなところなのでしょう。

 依頼があると、週に1度のペースで1回2時間、研修を受けた地域の子育て経験者が訪問します。一緒に家事や赤ちゃんのお世話をしたり、話し相手になったり。ママたちと一緒に行動することで、徐々に子育てに自信を持ってもらうようにしています。無料で、昨年度はゼロ歳児のいる家庭を中心に、130件の利用がありました。

 ある家庭では、ボランティアが抱っこしようとした子どもが「ママがいい」と泣きました。その姿を目にしたママは、あらためて自分はこの子にとって必要な存在なんだ、と感じられたと言います。

 そうして全6回の訪問を終えたころには、険しかった表情が別人のように変わるママたちをたくさん見てきました。今のママたちは出産前、仕事を一人前にこなしてきた人が多く、誰かに頼ることを否定的にとらえがちです。でも子育ては頼ったもん勝ち。各地で訪問活動をしている私たちの仲間にぜひ連絡してほしいです。 

写真

家庭に訪問するボランティアのメンバーたち(ホームスタートこうとう提供)

家庭訪問型子育て支援

 ホームスタートこうとうは、英国発祥の支援を参考に2009年に活動を開始。現在、同様の取り組みが全国約100カ所で展開されている。各地の実施団体の連絡先などはホームスタートジャパンのホームページで。

11月は児童虐待防止推進月間。虐待を防ぐため、親子を支えたり助言したりする人々から、子育てに奮闘する親たちへのメッセージを〈特集 変わりたいあなたのために〉として随時掲載します。
0

なるほど!

3

グッときた

1

もやもや...

5

もっと
知りたい

すくすくボイス

  • 匿名 says:

    すばらしい。頭が下がります。こうした方々の善意があって世の中が良くなって行くのですね。だから、ボランティアを提供できるだけのゆとりが人々の中にあることも大事ですし。子育ての問題だけでなく、万事そうなのだろうと改めて思い出させてくれた点でも読めてよかった記事でした。

      
  • 匿名 says:

    素晴らしい取り組みです。昔の江東区はビルなど無く、玄関から玄関へ子供達は移動し、私の子供達はご近所さんに育てられたようなものでした。ストレス等は溜まらずのびのびと子育て出来ました。抱いてくれる人、遊んでくれる人が周りに沢山居ました。

      

この記事の感想をお聞かせください

/1000文字まで

編集チームがチェックの上で公開します。内容によっては非公開としたり、一部を削除したり、明らかな誤字等を修正させていただくことがあります。
投稿内容は、東京すくすくや東京新聞など、中日新聞社の運営・発行する媒体で掲載させていただく場合があります。

あなたへのおすすめ

PageTopへ