息子の障害で気づいた「みんな違って当たり前」 草加の岩渕さんが親子向けワークショップ バッグを自由にデザインしよう
近藤統義 (2020年1月24日付 東京新聞朝刊)
わが子に障害があると分かった時、最初は受け入れられなかった-。埼玉県草加市のデザイン業岩渕鉄平さん(36)は正直に明かす。でも、次第にこう考えるようになった。誰でも生きづらさは抱えている。「みんな違って当たり前」。バッグを自由にデザインする親子向けの催しを県内外で開き、そんなメッセージを発し続けている。
現実から逃げたけど…妻の涙に気づかされ
長男の心(しん)君(9つ)には知的障害と発達障害がある。5年前にそう診断された際は「絶望した」という。「この子は一人で生きていけるのか」。将来への不安から妻に子育てを任せ、東京都内のデザイン会社で仕事に明け暮れた。
その間にも心君はすくすくと育った。いつまでも現実から逃げても仕方がない。「向き合ってよ」と、涙ながらに訴える妻の言葉にも背中を押され、2017年に独立。在宅ワークで家族との時間を増やした。
トートバッグに霧吹き 自由に色を付ける
三男の陽君(6つ)も同じ障害があるが「息子たちは普通にやんちゃもするし、他の子と変わらない。障害への偏見から、何も知らないだけだった」と気付いた。多くの福祉関係者とも出会い、今度は自分が社会の視線を少しでも変えたいと思い立った。
Tシャツなどのデザインを手掛けてきた経験を生かし、2018年に始めたのがトートバッグに霧吹きで色を付けるワークショップだ。どんな色を使っても、どれだけ色を混ぜ合わせてもいい。
「それでいい」と自分を肯定してほしい
インクのしぶきを飛ばしてデザインするため、障害があってもなくても、誰が作っても、同じものは2つとできない。「正解も間違いもない。それでいいんだよと、自分を肯定してほしい」。そんな願いを込め、制作に没頭する子どもたちを見守る。
こう思うようになったのは「周りより少し早かっただけ。息子たちのおかげ」と語る岩渕さん。2月21日~3月1日、パルコ浦和店(さいたま市)でワークショップを複数回開くほか、2月13日に草加市立中央公民館である「ケアラーシンポジウム」にも登壇する。
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