最貧国ルワンダで子ども向けラジオ番組を立ち上げ 元ユニセフ職員の栄谷明子さん、体験談を本に
虐殺の影響で国民の半数が18歳未満
ラジオ番組「イテテロ」は、ルワンダ語で「子どもを育む場」という意味。ルワンダは急速な経済発展を続けるが、いまも最貧国の一つだ。未就学児の教育施設は少なく、玩具や絵本を買える家庭はわずか。昼間は子どもだけで何もすることがなく過ごしていた。
栄谷さんは2013年にコミュニケーション戦略の専門家として赴任した。「手洗いなどの生活習慣を身に付けることや、想像力を膨らませてワクワクすること、希望を持って生きることを教えたい」。虐殺で深い傷を負ったルワンダは、18歳未満が国民の半数を占める。彼らに希望を与えられないか、と思案した。
「おかあさんといっしょ」がヒントに
テレビが普及していないため、ルワンダ放送協会に子ども向けラジオ番組を提案。番組作りの経験はないため、「自分がNHKで見た『おかあさんといっしょ』などの番組が手掛かりになった」という。幼児教育やラジオ制作の専門家ら協力者と話し合いを重ねた。
主人公はライオンやウサギなど動物たち。「友達と仲良くする」「子どものしつけ」などをテーマに物語を創作し、オーディションで選んだ子どもが声優を務めた。2015年に30分番組で放送を始めた。反響は大きく、感想を語り合うファンクラブもつくった。ある保護者には「たたいたり、説教すればいいと思っていたのは間違っていた」と気付くきっかけになった。
日本の中高生に伝えたいワクワク感
栄谷さんは5年間の勤務を終え、番組が続く道筋を付けて2018年にルワンダを離れた。移住したエジプトで1年間かけてつづった初の著書は、「内向き」といわれる日本の中高生に「夢に向かって道を切り開くワクワク感」を込めたという。
「会員制交流サイト(SNS)やインターネットが大きな世界を占めるかもしれないが、現実が充実することが本当は必要。自分のやりたいことが社会に直結し、役に立っていると思える生き方があると伝えたい」
栄谷明子(さかえだに・あきこ)
1978年、東京都生まれ。東京大卒業後に外資系銀行勤務を経て米国で修士号を取得。2004年からユニセフのセルビア・モンテネグロ(当時)事務所で働き、出産を経て米ニューヨーク本部などで勤務。2013年にルワンダに赴任した。2019年から国際協力機構(JICA)専門家としてエジプト人留学研修生を日本に送る教育パートナーシップ人材育成事業共同議長。
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