「今こそ少人数学級を」 密を防げる、丁寧に指導できる…コロナ禍でわかった必要性 教育研究者が署名活動
教員「自分が感染したら子どもたちに…」
「学校という空間の中で密を避けるのは、大変」。世田谷区立小学校の40代男性教員は頭を悩ませる。担任のクラスは6月22日から全34人の児童が登校。次第に慣れ、休み時間に子どもたちがくっついたり、顔を近づけて話したりする姿が増えた。間隔を保つよう注意しているが、体育館やげた箱に移動する時は長い列ができてしまう。「目が届かないこともある。どうしても密を防ぐのは難しい」という。
別の学校で感染者が出たことに「ウチも時間の問題かもしれない。自分が感染したら、子どもたちにうつしてしまう。それだけは絶対に避けなければ」。学習の遅れを取り戻し、スムーズに学校生活を進めたいと考える日々。そんな中、都内で200人以上の感染者が確認されたことに「衝撃を受けた。また休校になったら…」と不安がよぎり、「やはり感染防止が第一」と感じている。
分散登校 一人一人を丁寧に指導できた
多摩地区の小学校で4年生の担任の女性教員(60)は「6月後半からクラス全員の35人が通うようになり、ものすごく神経を使うようになった。元々長時間で過密な仕事だが、さらに今は感染防止にピリピリしている」と訴える。
分散登校中は、クラスの人数を半分にして、1日2回の授業をした。密にならなかっただけでなく、「一人一人の声がよく聞こえて、静かに学習が進められた。ノートも丁寧に見てあげられた」と振り返る。「子どもたちの本音を聞いて、心のケアに努めながら、学習を進めていくことが大切。少人数学級が実現すればいい」と願う。
40人クラスでは教室で距離を保てない
義務標準法で定められた1クラスの人数は上限40人(小1は35人)。文部科学省施設助成課によると、教室の広さは平均64㎡で、40人だと、机を並べて1メートル以上の間隔を保つのは難しい。今後、授業にパソコンやタブレットが普及すると、1人当たりのスペースも足りなくなる恐れがあるという。
全国知事会と全国市長会、全国町村会は3日、「少人数編成を可能とする教員の確保」などを萩生田光一文科相に要望した。ただ少人数学級の実現には多額の予算が必要になる。
教職員やOBらでつくる「ゆとりある教育を求め全国の教育条件を調べる会」は6月、必要な予算を試算し「来年度から35人学級を実施し、再来年度から15年かけて段階的に20人学級に」と文科省などに提言した。小宮幸夫会長は「少人数学級を願う声はこれまでになく高まっている。今こそ進める時ではないか」と期待を込める。
教育研究者がネット署名「収束まで3年、ゆとりある教育環境を」
大学教授ら教育研究者有志のメンバーが16日、文部科学省で記者会見を開き、小中高校で少人数学級を速やかに実現することなどを国に求める署名活動を、インターネットサイト「チェンジ・ドット・オーグ」で始めたと発表した。10万人を目標に賛同者を募り、9月上旬をめどに国に要望書を手渡すとしている。
呼び掛け人は、東京都立大の乾(いぬい)彰夫名誉教授、名古屋大の内田良准教授、中嶋哲彦名誉教授、東京大の本田由紀教授、前川喜平文科省元次官ら12人。現在1クラス上限40人(小1は35人)の編成を「ただちに30人、そして早急に20人程度にする必要がある」と訴えている。
乾名誉教授は「感染が再び拡大し、収束には3年程度かかると言われる中、『密』を避けつつ、適切な人間関係を確保した、ゆとりある教育環境が必要だ」と指摘。中嶋名誉教授は「学校現場では教室を密にしないよう努めているが、限界がある。(長期休校による学習の遅れなどで)苦しんでいる子がいる中、授業を増やして詰め込んだり、ネットで配信したりすればいいわけではない」と少人数学級の意義を強調した。
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