〈国際女性デー 2022〉女性の政治参加を進めよう 「育児と選挙の両立」の壁を壊した2人に聞く
女性であり母親である私にしかできないことがある 座間市長・佐藤弥斗さん
2男2女の母「生活に密着」の視点で変革
「女性であり母親である私にしかできないことがある」
座間市の佐藤弥斗市長が初めて政治の世界に足を踏み入れたのは、2004年の同市議選。地域で持ち上がった火力発電所建設計画への反対運動を経て、2000年の市議選で当選した夫が大腸がんで闘病する中、思いを継いで出馬し、議席を勝ち取った。夫をみとり、2男2女を育てながら活動を続けた。
4期目の途中で辞職。議会の会派には入っていなかったが党員だった自民党を離党し、2020年の市長選に立候補。「家庭代表」を掲げて生活者目線をアピールし、「現市政には市民の声が届かない」と変革を訴えて前市長の4選を阻んだ。就任後は市職員との「共創」を目指し、係長級以上の全員と面談するなど「職員の皆さんが意見を言いやすい環境づくりに気を付けてきた」。
女性が政治に参加するメリットを「生活に密着していること。多くの家事や育児、介護などをまだ女性が担っている。家庭、学校、介護の現場の状況が分かり、市民感覚を共有できる」と語る。同時に、家庭で多くの役割を担うことが、女性の政治家が増えない理由になっているとも指摘。「どう折り合いをつけるかが一番の課題。家族や家庭の理解、協力がとにかく必要な仕事」と実感を込める。自身は夫の両親からサポートを得てきたという。
子どもが『大人になりたい』と思う社会に
ハラスメントは「いろいろあった。(男性関係の)うわさを立てられたこともある」と明かす。対策として、「『相談がある』と呼び出されても一人では行かず、支援者や後援者と一緒に行く」と決めている。
昨年8月に横浜市の林文子・前市長(75)が退き、神奈川県内の女性首長は2人になった。「女性の政治家は増えた方がいい」と期待するのは「社会の半分は女性で、代表も半分ぐらいいるとバランスとして良い」から。国際女性デーを迎え、日本社会の将来をこう描く。
「女性が輝いている社会は、男性もやる気が出る。すべての人が、それぞれの特性や個性を生かして輝ける社会が一番素晴らしく、子どもたちが『大人になりたい』と思える社会にするべきだ」
朝早くの候補者活動はしません 昨年の衆院選に出馬した斉藤温さん
朝は授乳、動画で演説 共感の声集まる
「朝早くの候補者活動はしないことに決めました」
衆院選が公示された昨年10月19日朝、神奈川9区から共産党公認で出馬した斉藤温さん(31)は、こう宣言する動画をツイッターに上げた。朝は生後9カ月(当時)の娘の授乳が欠かせない。育児と選挙を両立させるための判断だった。
選挙は早朝から夜遅くまでの運動が鉄則だが、できない人は子育て中の女性に限らない。「親の介護をする人や障がいのある人。体を張れない人でも政治や社会に参加できる環境を整えたい」と動画で訴えた。
妊娠が分かった後、「ジェンダー平等をうたいながら、出産や育児を理由に立候補を取り下げれば、後悔が残る」と臨んだ選挙戦。「母親失格」と批判を受ける恐怖もあったが、「応援します」「勇気ある決断」と多くの共感のメッセージが寄せられた。選挙期間中に再生は十万回を超えた。
同世代の父親から「政治に希望が持てた」とメールが届いた。斉藤さんは「男性も育休のとりづらさなど『男性らしさ』を求められ、苦しんでいる。ジェンダー平等はあらゆる人に必要。その先に多様性を大切にする社会がある」と話す。
朝の演説代わりに選挙期間中に公開した「1分動画」は15本。当選は果たせなかったが、週1回の動画投稿を続けている。「女性議員を増やす以前に、立候補できないという壁を壊したかった。私の小さな行動が、次の誰かの行動につながることを願っています」
神奈川の女性議員の割合、平均は23.1%
最高は大磯町の50%、最低は横須賀市
大磯町議会は2003年に全国で初めて男女同数になって以来、その傾向が定着しているが、例外的な存在だ。他に女性の割合が高いのは二宮町議会(38.5%)や海老名市議会(38.1%)、逗子市議会(37.5%)など。一方、県議会(18.3%)と24市町村議会では3割に届かず、このうち県議会と9市町村議会では2割に満たなかった。最も低いのは横須賀市議会(10%)だった。
一方、内閣府の昨年のまとめで、全国の都道府県議会の女性割合の平均は11.6%、市区議会は16.8%、町村議会は11.3%。県内の状況はいずれも上回った。
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