37歳2児の母、こうしてリスキリングしました 在宅プログラムで技術習得 自分らしい働き方で収入アップ、子育てと両立

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リスキリングでデジタル技術を習得し、自分らしい働き方をスタートした川崎真菜さん(木口慎子撮影)

 リスキリング(学び直し)でITスキルを磨いて、収入増と自分のライフスタイルに働き方を模索する女性たちがいます。政府が「女性活躍」と「デジタル人材育成」を推進する中で、学習プログラムを提供する企業や自治体が増えています。東京すくすくでは、そのようなプログラムに応募して技術を習得し、新たな働き方をスタートした川崎真菜さん(37)=東京都江東区=に仕事や家事育児をこなしながらのリスキリングのリアルについてお話を聞きました。

 川崎さんは小学2年生と4歳のお子さんを育てています。夫は営業の仕事をしていて、日常的には家事、育児の担い手ではないそうです。

コロナ禍を経て、両立が難しくなり…

―リスキリングに挑戦しようと考えたきっかけはどのようなことでしたか?

 それまでは派遣で事務の仕事をしていました。コロナ禍で私は出社と在宅が半々となりました。そして夫が在宅勤務となり、保育園の送り迎えをしてくれるようになり、うまく回っていました。それがコロナ禍が落ち着き、夫婦ともに出社するようになったとたんに仕事と家庭の両立が大変になりました。

写真 川崎真菜さん

 上の子が小学生になったこともあり、在宅でできる仕事を探していたところ、女性のリスキリングと就労支援事業を展開している「MAIA(マイア)」(東京都港区)の「でじたる女子プロジェクト」に出合いました。締め切りまであと3日というタイミングで、家族にも相談せずに申し込みました。昨年5月のことです。

子どもが寝た後に勉強 先輩に質問も

―研修はeラーニングとはいえ、約200時間に上ります。仕事や家事のやりくりはどうしましたか?

 同じ時期にそれまでの派遣の仕事をやめて、在宅でできる仕事に切り替えたこともあり、本当に大変でした。そちらは午後2~3時ぐらいまでと前職よりは拘束時間が短い仕事だったのですが、上の子が学童と合わなくて学校が終わると帰ってきていたので、勉強できるのは子どもたちが寝た後の夜10時過ぎ。そこから1~2時までやっていましたが、下の子の夜泣きでできないこともありました。

―どう乗り越えましたか。

 夫は自分の仕事に専念してもらうことにして、自分で全てやりくりをするときめました。MAIAは受講生同士の交流だけでなく、同じ学習をした先輩サポーターが受講中の悩みや質問に回答してくれる「コミュニティラーニング」があり、大きく助けられました。私は最初に出遅れていたのですが、そこをみると、先に学習を進める仲間たちが投稿した疑問とそれに対する答えがあるので、その投稿を参考に学習を進めました。質問者の投稿時間をみると、私と同じように夜中、勉強している人もいて、自分だけじゃない、と頑張れました。

写真 川崎真菜さん

合格後、あきらめずに応募して…採用

―修了の認定試験に合格して、ほっと一安心ですか?

 合格後は、本当に仕事に就けるのか心配でした。最初に応募した案件は落ちましたが、ここでめげたら今まで使ったお金も時間ももったいない、とあきらめずに次の案件に応募したら採用されました。

―今はどんな仕事をしているのですか。

 今現在は、学習で習得したスキルとは違う仕事となりますが、企業のシステムの設計書、そしてワードやパワーポイントで作成された書類のチェックやテストをする仕事をしています。仕事はママたち4人と管理者1人がチームとなり、すべてオンラインで行っています。子どもの用事などでお休みする場合でも、お互いに融通しながら業務を行っています。子育て中のメンバーが多いので、お互いさまです。チームで協力しながら仕事を進められるのがいいですね。

次の案件も獲得して、柱を増やしたい

―収入はアップしましたか? 働き方に満足していますか?

 時給は上がりましたが、個人事業主になったので収入としては大きく変わりません。会社員や派遣での働き方と違い、確定申告など初めて経験することも多くてどきどきしていますが、希望していた在宅での仕事に就けて、頑張って良かったと思っています。

―今後はどうしていきますか?

 このような働き方を長く続けていきたいので、現在の業務委託の仕事に加えて次の案件も獲得して、収入の柱を増やしたいと思います。MAIAさんは修了後のサポートもあり、ライフステージによる働き方の変更についても相談できるので良かったと思っています。

写真 川崎真菜さん

リスキリング

 社会人における学び直し。世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で2020年に提唱され、話題になった。職場外の大学などで学ぶ「リカレント」教育と異なり、個人が自らのスキルアップのため、業務に関連する専門的な知識や技能を習得したり、デジタル技術を学習する。少子高齢化が進む中、政府は個人の能力を磨くことで生産性向上を図り、経済活性化を促す狙いがある。コロナ禍でテレワークが浸透し、デジタル化対応の需要が高まったことも影響した。

「でじたる女子プロジェクト」受講は無料、目安は200時間

 東村山市では23年度、東京都の助成金を活用して、同様のプログラム(東村山市女性デジタル人材育成事業)を提供しています。2023年度は約30人の同市在住の女性がデジタル技術を学んでいます。現場を取材しました。
でじたる女子

「東村山でじたる女子プロジェクト」の集合研修で話すMAIA執行役員の森山譲治さん=東村山市で

ITスキルだけでなく「意識改革」を

 9月30日午後、東村山市役所に受講生のうち約20人が集まりました。8月下旬からスタートした「東村山でじたる女子プロジェクト」に応募し、合格した女性たちです。この日は約5カ月の学習期間中、唯一の対面集合研修会。MAIAの森山譲治執行役員が「ITスキルを身につけただけでは仕事はできません。働く上ではマインド(意識)が重要です」とこの日のポイントを熱く解説していました。

 このプロジェクトは、東村山市在住(住民登録)で、現在離職中や非正規雇用の女性に対し、就労につながるIT技術を習得する機会を提供するものです。2022年4月に内閣府の男女共同参画会議において決定した「女性デジタル人材育成プラン」をもとに市が企画立案しました。男女間の賃金格差の解消や女性の経済的自立の取り組みを推進するため、柔軟な働き方ができるスキルを身につけてもらおうとの狙いです。オンライン学習のため、インターネット環境があればいつでもどこでも学ぶことができるのが特徴です。

伴奏型支援 地元企業とマッチング

 こちらのプロジェクトは、東京都地域人材確保総合支援事業補助金を活用しており、受講料は無料。修了後は、希望する在宅・リモートワーク案件とのマッチングも行われます。東村山市では10月から、市内企業を対象とした「中小企業等デジタル化推進事業」の伴走型支援が始まっており、被支援企業をはじめとする市内の企業を優先とした就労あっせんを行います。市内で就職できなかった場合には、市外の企業への就労あっせんを行います。

 当初は定員を20人としていましたが、20~60代まで75人の応募があり、30人に枠を増やしました。中心は子育て中の30、40代です。女性たちは世界最大のシェアを持つERP(企業資源計画)統合基幹業務システム「SAP」の品質検証テスターを目指すための学習をします。その上で、DX(デジタルトランスフォーメーション)についての基本的な知識・リテラシーを習得する研修も受けます。IT初心者向けでも取り組みやすいよう、イラスト付きのカリキュラムになってはいるものの、学習目安時間は約200時間となり、熱意と根気がいる内容です。

でじたる女子

研修であいさつする渡部尚市長

 渡部尚(たかし)東村山市長は「日本では男女の賃金格差が大きく、その理由の一つは女性の非正規雇用が多いからです。日々の生活の中で、約200時間のeラーニングをやるのはつらいことだと思いますが、同期の桜、お仲間と励まし合って学んでいただきたい。そしてスキルアップ、収入アップにつなげてください」と激励しました。市では24年度以降も、同様のプログラムを継続していきたいと考えています。

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