双子の母「子をあやめるか自殺か迷った」 過酷な多胎児育児、涙の告白 社会の支援が必要です

 双子や三つ子などを抱える家庭を支援する市民団体「多胎育児のサポートを考える会」が行ったアンケートで、93%が「気持ちがふさぎ込んだり、子どもに対してネガティブな感情を持ったりしたことがある」と回答しました。アンケート調査結果発表の場では、双子の娘を育てる都内の自営業、角田なおみさん(39)が、当事者としての経験を涙ながらに振り返り、支援の必要性を訴えました。全文を紹介します。
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双子の娘と一緒に会見で経験を語る角田なおみさん(左)

私だけの苦しみではなかった

 都内で双子を育てています。私は双子を授かってから厳しい経験をしてきました。双子の親だからつらかったと言えるのは、ここに集まった1500件を超えるアンケートのうち、多くの回答を読んだからです。これは私だけの苦しみではなかったのだと、確信しました。

 双子、三つ子の希少性や神秘性から、「いいな」と軽くあこがれる人は少なくないと思います。私もそうでした。双子を妊娠していると知ったとき、不安はありましたが、とても、とても、うれしかったです。

1歳までの記憶はありません

 しかし、生んだ後の過酷さについては知りませんでした。今は軽いあこがれが、多胎児育児の危険性を隠してきた一因だと思っています。また、「年子よりましよ」という励ましは、努力や気合い、根性の背比べとなり、「神様はあなただから双子を授けたのよ」という非科学的な励ましは、すでに限界に達している親の、重圧に苦しむ母親の口をふさいでいます。

 思い返しても、1歳になるまでの記憶はありません。なんとか今日を乗り越えて、明日につなぐことだけに懸命でした。1歳からは保育園の支援を受けられましたので、なんとか一週間を乗り切り、土日の綱渡りをして、翌週に控える日々です。

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 生後半年から10ヶ月の間、私は育児に向いていないなと思い詰め、子をあやめるか、自殺をしようかどちらがよいか迷ってました。

保育園に入れていなかったら

 生きているのがつらかった日、私たち家族を救ってくれたのは、保育園の入園通知です。とても幸運なことです。私はさまよっていた暗闇の中で、出口の光を見つけることができました。もしも保育園の入園が決まっていなければ、(愛知県豊田市の母親が三つ子の一人を虐待死させたとして実刑判決を受けた)三つ子事件よりも先に、虐待死事件を起こしていたかもしれません。

 入園するまで外出は思うようにできませんでした。いつまで続くか分からない暗闇の中でたった一人、孤独でした。もしも、あの(虐待死事件を起こした)ご家庭にも保育園の入園通知が届いていれば、お母さんは犯行を思いとどまれたのだと思います。

父親を、家庭に返してほしい

 どうしてここまで、多胎児家庭が追い詰められてしまうのか。私の場合は子育てに必要なマンパワーが足りなかったからです。夫は出社すると、終電近くまで戻ってきません。彼が定時で退勤し、一緒に育児をしてくれれば助かったと思うことがあります。信頼できる人が近くにいれば、母親の危険リスクが下がります。社会には、父を家庭に返していただきたい。そう思っています。

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 私の今までの経験を例えれば、長いトンネルです。妊娠が分かり、光の中。双子と分かってトンネルの入口。出産のときには入口の光が消えて、暗闇に包まれる。看護師さんのもっているランタンは明るかった。産後ケアセンターは高いお金で光を買った。自宅に戻り暗闇の中。実母と義母の優しい灯り。母が帰り、家族4人の暮らしが始まると真っ暗闇。足下は崖だったと気づく。夫のもつランタンの光は頼りなく、照らしてほしいときにいない。永遠に続く暗闇の中、早く楽になりたいと思っていたときに届いた保育園の入園通知。出口とおぼしき光の片。入園までなんとか、生き延びよう。そして入園日から出口まで、一緒に伴走してくれた保育士の存在。3歳の誕生日がトンネルの出口でした。

抱え込まず、自治体に相談を

 最後に、多胎児家庭の皆さんに伝えたい事があります。悪いのは無理のできないあなたじゃない。無理を強いる社会の仕組みです。相談することは恥ずかしいことではありません。解決の糸口を見つけるためにも、夫婦だけで抱え込む前に、自治体に相談してください。

 そして、社会のみなさん。多胎児家庭に優しい社会、それは一般のご家庭にとっても子育てしやすい社会だと思います。人口のわずか1%程度でしかない私たちのことですが、多胎児家庭の抱えている負担についてご理解いただき、ご支援をお願いいたします。ありがとうございました。

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すくすくボイス

  • 太郎 says:

    私だけ辛いんじゃないと思い涙がでてきました。3歳+一卵性双子(7ヶ月)の子供を現在育てていますが、産まれてから3ヶ月記憶がありません。

    1人目の時も産後うつになり、薬を飲んでたのに2人目がまさかの双子。嬉しいけど心配もしていたら、案の定産後うつになりました。

    毎日終電間際に帰る夫。上の子は保育園に行っているとはいえ夕方から寝かしつけまで1人。

    首が座ってない子供2人とイヤイヤ期の2歳だった息子をお風呂に入れるのは毎日地獄で、双子が泣く度にこのお湯に落としたら少しは楽になるのかな…と毎日思っていました。

    ベランダで洗濯物を干す度にこのまま落下すれば楽になれるのか、運転中にどうやったら迷惑かけずに自分だけ消えれるのか…。毎日考えていて今もふと考えます。

    1人目入院中にたくさんの双子のお母さんを見てきて羨ましく感じていた自分。現実はこんなに辛くて毎日が綱渡りでした。

    周りの人の助けをというけど誰に助けを求めろと? 電話するといいしてこない、相談しても話を流す保健師さんに相談なんかしたくないし。行政の介入を望みます。

    単胎でも多胎でも優しい世の中になって欲しいです。

    太郎 女性 30代
  • あやん says:

    私は3歳の娘と双子の息子の母です。夫が転職時間に余裕ができ、だいぶ育児に貢献してくれたことと、実家の敷地内に家を建てたので、実の母、父の援助を得ることができました。

    正直、その援助が無かったら…虐待の2文字が頭に浮かんでしまいます。また近くに住む義母や義父も協力的です。こんなにいろんな人の手を借りていいのだろうか、自治体主催の双子の会で出会ったママさんたちはみんな、ワンオペで頑張っているのにと情けなくなりましたが、私は1人では無理でした。

    自分を過信しすぎないことも虐待防止になるのではないかと今では思います。娘も5歳とはいえまだまだ甘えたがりだし、双子優先のため我慢をさせてしまうことも多いです。家族全員で出かけることが不可能です。娘がかわいそうなので夫か私のどちらかが近くの公園に連れて行き、それで納得してもらっています。

    双子は1歳半になりましたが、正直、乳児の時より手がかかります。思い通りにいかないと外出先でもどこでもずっと泣き叫ぶことが増えました。とにかく言うことを聞きません。1歳半検診の時に兄に目を取られている隙に弟が逃げ出し道路に飛び出す寸前でようやく捕まえました。

    言葉の遅れも指摘され、発達障害かもという心配もつきません。夫は転職したので、時間はありますが年収が減り、経済的にもかなりきついのが現状です。保健師に相談すると、ベビーシッターを勧められますがかなり割引されるとはいえ、雇っている経済的な余裕がうちにはありません。

    そんな中私の仕事復帰が決まっています。保育園に預けられるのは非常にありがたいのですがどうなることやら、先が見えず、不安な毎日です。

    よく「年子より楽よ」と言われますがそんなことを言われても「だからもっと頑張れよ」と言われているとしか思えず、双子の親にそれは言ってはいけないことだと思います。

    そもそも、そんなふうに言うのなら、かなりひどい言い方ですが、作る作らないの選択ができる年子と違って、双子は自分ではどうにもなりません。もともとうちは経済的にも私のキャパシティ的にも子どもは2人が限界でした。だから3人目の予定はありませんでした。双子妊娠が分かった時、嬉しさもありましたがそれよりも心配と不安の方が大きかった。

    今は産後うつにもなり、薬を飲んでなんとか落ち着いています。仕事復帰がある意味、好転となるか…暗闇を灯す光になってくれるか、そう願ってはいます。

    あやん 女性 30代
  • 匿名 says:

    来週でようやく6ヶ月になりす。1人だったらお出掛けや散歩ももっと気軽に行けたのに…爪切りもお風呂ももっと手をかけてあげれたのに…思い出すとキリがありません。
    出掛けるだけでひと荷物だし、双子連れてではまだ一人ではどこにも行けていません。
    そろそろ離乳食。作る大変さと食べさせる大変さ、想像するだけでどうにかなりそうで、まだ始める気力すらありません。
    双子妊娠が判明してから嬉しさや驚きよりも、不安しかありませんでした。1人目でなかった分、育児の大変さが身にしている分、双子妊娠と出産、育児の不安が上回っていました。

    やっと6カ月、でもまだ6カ月です。これからも育児に終わりはなく、毎日毎日続きます。なのでこの記事の、子をあやめるか自殺か迷ったと言うのは何も大袈裟ではありません。そうしないと、終わりがないからです。

    早く多胎家族が笑顔で毎日過ごせる様な、子育てに優しい社会の仕組みになります様に。

  • 匿名 says:

    子供と関わり合いたいのにコロナで十分に働けずウズウズしている元PTAマンパワーなんてどこにいるんですか?主婦幻想ですよ。みんな必死でしょ。失礼な言い方だな。

      
  • 匿名 says:

    パパを早く帰らそうが、口で言うほどは何も出来ない大きな子供が一人増えるだけなので、むしろ廃校舎などを使い、絵本の読み聞かせでもして子供と関わり合いたいのにコロナで十分に働けずウズウズしている元PTAマンパワーを使ってあげたらいい。

      

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