夫に失望「いないほうがまし」…産後クライシスで離婚が頭をよぎる〈座談会・私たちの産後クライシス②〉

 前回の〈座談会・私たちの産後クライシス①〉では、妊娠中、お産のとき、産後まもない時期に参加者のみなさんが感じた、夫との意識のズレやもどかしさなどについて紹介しました。育児が本格スタートしてからも、さまざまな“危機”は訪れます。

口だけの「ごめん」 孤独でつらい

編集チーム みなさんは「こうしてほしかったのに、こうされた」、逆に「こうしてくれて、すごく愛情が深まった」ということ、ありますか。

ユキエさん 30代会社員。夫が海外赴任中で、保育園に通う4歳の長男と都内で2人暮らし。「フルタイムで働きながらのワンオペ状態は大変ですが、ママ友に助けられることも」

ユキエ 育児がスタートしてからも、飲み会と友人との約束とかで「誘われたから、行ってくるわ」という感じで言われることにすごく憤りを感じました。協力者が同じ方向を向いてくれていないというのは孤独でつらいな、という気持ちが大きかった。愛情が深まることはなかった気がします。夫の一つ一つの言動に腹が立って、産後クライシスなのか何なのかもよく分からなかった。やることなすこと「なんでこの人はこうなんだろう」って腹が立ってましたね。

 

編集チーム そういうのを言い合える関係でしたか?

 

ユキエ 言い合いにならない。一方的に私が怒って「ごめん」で終わる。そう言えば終わるから言うんですけど、「ごめん」と思ってはいないから、その後も何回も同じことをする。だんだん自分は疲れて、言うこともあきらめて、言う方が疲れちゃうから「もう言わないで私が頑張ればいいんだ」と無理しちゃう…というのが続きました。具体的なことが変わる方向に、もう全然向かわないんです。

読者のコメント③怒り→あきらめ

 「大変さを分かってもらえない」「一緒に育児をしてもらえない」つらさは、そのうち怒りに変わり、やがて「いないほうがまし」とあきらめに向かうようです。産後クライシスの記事に寄せられたコメントを抜粋して紹介します。

「おまえは育児を楽しめないのか」
 仕事が大変だからと言って、家事、育児の協力はゼロ。2歳と4カ月の2児のお世話は大変だと言うと、「お前は育児を楽しめないのか」と言われて、一気に冷めました。話す気にもなれない。

こっちは週休0日ですけど
 1人目が生まれた後、「週に一度の休みくらい、好きなことさせて」と言われた。こっちは週に一度の休みなんてないのに。

娘が同じことされても許せる?
 今どきインターネットでいくらでも情報収集できるのに、調べるのは自分の趣味だけで「知らないからできない」。「仕事で部下が同じような言動をしたら腹が立たないか?」「将来娘が自分と同じことを夫にされても怒らないか?」と言っても響かない。

それはやってるって言わないよ
 「育児なんて簡単でしょ。お風呂も一人で入れられるでしょ。みんな入れてるんだから」って言われた。一人で最初から最後までお風呂入れたことないくせに。服脱がせて着せるところまでがお風呂入れるって言うんだよ。離乳食もミルクも私が用意したやつをあげてるだけ。それはやってるって言わないよ。イクメン気取りもほどほどにしてほしい。

「うちの母はちゃんとできてた」
 2歳差で2人目を出産して3カ月。上の子の赤ちゃん返りもあり、家事が滞り部屋の中はめちゃくちゃ。毎週末飲みにいく夫に、精神的にしんどいから手伝ってほしいと伝えたところ…「俺はいつ休んだらいいの?」。とどめが「うちのお母さんはちゃんとできてた」。その時はショックで何も言えず、だんだん「あなたが乳児の時のお母さんをご存じなんですか」と怒りが止まらなくなった。この発言で、愛情どころか夫に「何も」期待しなくなった。

あなたもこの子の親だよね?
 私は自営なので子ども同伴で仕事、夫は外へ通勤。その日は私にどうしてもはずせない仕事があり、上の子のお迎えを頼んだら「俺ばかりに甘えるな」「俺に仕事させろ」。大変なのはわかってて、でも最後の頼みの綱だと思って頼んだのに。うちの2人の子の親は、私だけじゃないよね?

私の育休中、家事をしなくなった

編集チーム 家事はどうですか?

 

ユキエ 今は夫が海外勤務で別居ですが、それ以前はゴミ出しとか、朝に洗濯物を干すとかをしてましたが、本人はすごく「俺できている」と思っていて。私が「いや、でもやってるのこれだけじゃん」と思ってしまう、その差が激しい。あと、私が育休中だったときは夫は家事を一切やらなくて、そこにすごく不満はあった。育休になったとたん、家事、育児すべてを私がやるものだ、というふうになって。2人だったときはやっていたことをやらなくなった。

 

編集チーム 意味分からないですよね。(赤ちゃんが生まれて)大変になっているのにやらなくなるって。

産後クライシスについて本音を語り合った「すくすく座談会」。奥は右から小林由比・東京すくすく編集長、今川綾音・副編集長

ユキエ 「今日、何してたの?」と聞かれても、「いや、やってましたよずっと。いろんなこと」みたいな感じなんですけど。「出かけたの?」と聞かれて「いや、生きてた」「寝かせてた」みたいな。

 

編集チーム 「今日も生き延びた」みたいな感じですよね。でも(夫は)全然悪気はないんですか?

 

ユキエ 悪気はないですね。それに対して私が意見しても、届いていない。「違うよ、こんなこともいろいろ大変だったんだよ今日は」って言っても「大変だね」という言葉はもらえなかった。全部やって当たり前だと、多分、思われていました。

 

編集チーム 典型的ですね。

 

読者のコメント④なぜ家事やらない

 家事は育児と同時進行だから大変なのに、なかなか夫には伝わらない。伝えようとすると逆ギレされるケースも…。

いい人ぶって「後で洗えば?」
 寝不足の身体にむち打って食器を洗おうとしたら「大変なら後で洗えば?」。一見いい人ぶって、要は苦労の先送りをしろと。「洗っておくからゆっくり休んで」と言ってほしかった。

豚の角煮…今から作れと?
 退院後、食べたいと言っていた角煮を買ってくるのではなく、豚バラブロックを買ってきた。「いや、いつ煮込むのよ?新生児抱えて」と気持ちが冷え込んだ。体がつらいし赤ちゃんのお世話で大変なのに、イチから料理をしないといけないつらさを分かってくれてなかった。

育児の合間にやるのが難しいの
 息子の世話をお願いした時に「今日は掃除も洗濯もやったよ」と言われた。こちらは育児の合間になんとかやってるっていうのに。「家事は1人でできるが育児は1人では難しいよ」と伝えてみたが、休みの日に仕事で疲れていると「今日はすごく眠いや」と言ったり…。「結局1人でいるのと変わらないじゃん」と思った。

「育休なら全部やるのが当たり前」
 いま8カ月と3歳の子供がいて育休中。夫は家事育児をほぼやらない。妊娠中もせまいトイレでおなかがつらく、つわりで吐きながらトイレ掃除したり、おなかが張っていても上の子をあやしたりして結局、切迫になりました。上の子が生まれた時も現在も何も変わりません。私が仕事してようが具合悪かろうが、夫は自ら何もしません。育休中の今は「おまえが育休なんだから家事育児全部やるのが当たり前だろ」だそうです。だからといって、私が復職しても何もしませんでした。

誰かが作ったご飯が食べたい
 私だってゆっくり眠らせてほしい。ゆっくり落ち着いて食事させてほしい。誰かが作ったご飯が食べたい。たまには誰か部屋を掃除してくれないかな? 洗濯をたたんでくれないかな?

義父母との間に入ってほしいのに

編集チーム ハルカさんはどうでしたか?

ハルカさん 40代フリーのイラストレーター。都内で夫と、小学4年と幼稚園年中の2人の男の子と暮らす。「夫は最近ようやくパパらしくなってきたような…」

ハルカ 出産後に嫌だったのは、義理の母が「お食い初め」とかいろんな行事に関わりたくてガンガン攻めてきたとき、私の話も聞いてほしかったのに、夫が「いいよ、うちに来たら」と受け入れてしまったこと。家の中めちゃめちゃだし、子どもの夜泣きも激しいし、迎える余裕もないのに呼んでしまってトラブルになったことも結構あった。恨みに思っています。

 

編集チーム 整える時間もないですよね…。

 

ハルカ 夫の実家から私たちの家まで2時間くらいかかるんですけど、孫に会いたい一心で来ちゃうんです。しかも、来る時間が11時過ぎと言っていたのに朝8時過ぎにはピンポンって来ちゃったり。

 

編集チーム ホラーですね。「11時」が「8時」はすごい。

 

ハルカ 義母が帰ってからもすごくストレスが大きかった。夫にはどこまで言っていいのか分からなかったけど、産後しばらくしてから「控えてほしい。来る時間も守ってほしい」と伝えました。

読者のコメント⑤義父母を優先

 出産前後の大変な時に、義父母に気を使って疲弊する妻が多いようです。間に入って盾になってくれない夫への怒りの声が届いています。

◇休みたいのに続々と親戚が長居
 陣痛中に義母をLDR室に勝手に入れ、実母が懸命にマッサージしている横で、夫と義母は世間話。出産直後、個室に移動しても義母が長居。舞い上がった夫が親戚中に出産報告したら、その日と翌日に続々とお見舞い。しかも半日長居されたりして休むに休めなかった。里帰り中は「寂しくてたまらない。いい加減帰ってきて」と言われ、「義母に話したら『里帰りが長すぎる!帰ってきた時に子どもが順応できなくなる!自分が周りから冷たい目で見られる!』って」とまで言われた。

◇私の体調も気持ちも無視された
 出産直後に高熱が出て、さらに貧血で体調が悪かったので、夫に「義母のお見舞いを控えてほしい」と頼んだ。でも「気を使わなくていいから」と私の気持ちを無視して、義母を病室へ連れてきた。頭がもうろうとする中、夫と義母は生まれたばかりの赤ちゃんに夢中で、私の体のことなど気にも留めず長時間滞在。かわいい気持ちは分かるが、少しでも私のことを気遣ってほしかった。

◇アポなし訪問、無神経な発言
 義父母のアポなし訪問と無神経な発言を、夫は一切注意してくれなかった。出産当日に病院に来て10時間滞在。退院後はほぼ毎日押しかけて、寝ている赤子を勝手に抱き上げてキスしたりしながら朝から晩まで滞在。私はまだ悪露が止まらないのに寝かせてもらえず。家事育児は手伝わず、ひたすらお客さん状態で「お茶のおかわりをくれ」「お茶請けのお菓子がなくなったよ」「すぐ泣くのはおっぱい出てないんじゃないの」とかごちゃごちゃ言いながら居座った。夫は「両親もうれしいんだよ、そう怒らないで付き合ってよ」「産休、育休って子育てのためのもので自分が休むためのものじゃないんだから。昼間寝れないからって怒るなよ、俺だって仕事中に寝ないんだから一緒じゃん」とひたすら義父母の肩を持ち、私だけ我慢を強いられた。

ショックすぎる言葉で離婚を意識

編集チーム マリコさんは転勤による慣れない土地での子育て、夫との協力関係はどうでしたか。

マリコさん 30代主婦。3歳の長女と夫と都内で3人暮らし。長女は幼稚園に通わせる。「数年ごとに転勤が。働いているママたちをうらやましく感じることもあります」

マリコ うちは典型的な亭主関白で。私は結婚して仕事を辞めてから8年くらいですが、バイトやパートとかもしたことがなくて。妊娠中も仕事をしていないので、家事をするのが当たり前で、一切夫に何か手伝ってもらったことはありませんでした。生まれてからも、夫は忙しくて夜も遅い仕事なので、食事の用意も全部自分でやってきた。子どもがまだ1歳になる前に、夫婦のスキンシップがだんだんなくなってきて、私はそれがとてもショックで。夫に伝えたら「いや、自分の態度を1回振り返ってみろ」と言われた。

 料理も掃除もちゃんとやってたと思うんだけれど、夫が言うには「おまえは『やってやってる』みたいなふうに見える」「イライラしながらやってるのが、態度に出てる」と。それが私の中では一番の衝撃でした…。そんなこと思われてたんだ、と。

 

編集チーム なんと…。

 

マリコ 3年くらい前のことなんですが、あまりにショックで…。今まで専業主婦で、子どもも4、5年できなくて、いったい私は何をしていたんだろうと思って。今の時代、みんな子どもがいても外に働きに出てるのに、結婚したときに仕事を辞めたことをすごく後悔しました。それを言われて1年くらいは、本当に離婚したいと思っていました。

読者のコメント⑥離婚しようかな

 出産後、約5割の妻はこの言葉が頭をよぎるそうです…「離婚」。

子どもが大きくなるまで我慢
 子どもが2人、新築も建ててもらい、はたからみれば幸せの絶頂のようでも、夫婦仲は最悪だった。妊娠〜産後にかけて、父親の役割不足と感じるストレス、育児のストレス、経済的なストレス…夫が原因だと思うことが半分以上。子どもたちに「別れてほしくない。家を出て行きたくない」と泣かれたので、子どもたちが大きくなるまでと我慢している。

愛情なんか冷めきった、けれど
 育児に協力的でない夫にキツく文句を言うことが増え、二世帯住宅の新居への引っ越し前日、いつものけんかが始まると、夫が「やってられんわ」と離婚届を突きつけてきた。私が文句を言い過ぎて、何も言い返さない夫に甘えていたと反省した。夫は夫なりに育児に協力的なつもりだったらしい。離婚には至らなかったが、夫は育児も家事もしなくなった。子どもをスルーしたり、仕事を理由に夕方わざわざ出掛けたり…。愛情なんか冷めきった。結婚なんてしなければよかった。けれど住宅ローン、親、子ども…離婚はできない。

◇人格否定された記憶は消えない
 夫は何もしないわけではなかったが、もっと協力してほしかった。肉体労働で疲れているのもあり、お互いイライラしてケンカでは言っちゃダメなこともたくさんぶつけ合った。「自分は他の人よりよくやってる方だ」「他の人は何人も子ども抱えてやってんだぞ」「おまえが育てているから子どもがわがままになってきている」。心も身体も疲れている時に他人と比べられたり、人格否定の言葉も。最近はケンカも減ったが、言われた言葉や行動はとても悲しく消えない記憶。お互い思いやりの言葉を掛け合えば違う関係が築けていたのかもしれない。離婚したいと考えている。

◇年月を経て離婚 後悔はゼロ
 娘が1歳を迎えた夏、毎朝5時に起きていた。夫は仕事の関係で8時半まで起きない。私は娘に朝食を食べさせ、7時頃から公園に連れて行き、夫が起きる頃に家に帰り、夫に朝食を出していた。天気が悪くて出かけられず、娘がぐずって泣いていた時、まだ寝ていた夫に「うるさい!」と怒鳴られた。その後も暴言が多々あり、家事も育児も全くしないので、娘が高校2年になった今年、離婚に踏み切った。私は娘が1歳9カ月の時に職場復帰し、フルタイム正社員で働きながら家事・育児を全て担い、夫の分も含めた生活費をずっと負担してきた。貯蓄もして娘の大学卒業までの学費のめどもたったので、今後の生活に不安がないとは言わないが、離婚に後悔はまったくない。

「これなら、いないほうがましだな」

編集チーム アサミさんは出産前から仕事に打ち込んでこられましたが、仕事の苦労とはまた別の大変さがありましたか。

アサミさん 40代会社員。3歳の長男の出産を機に夫と3人で都内で暮らし始めた。「はからずも高齢出産。息子に振り回されながら過ごしています」

アサミ 私はもう、どこからが産後クライシスか分からないです。こんなもんなのかな、と疑問は持たなかった。女性は産休・育休を取って、社会に復帰しなければいけないというリスクを負う。一直線型のキャリア形成しかない日本社会では、明らかに「1回休み」っていうか。「マミートラック」と呼ばれてますけど、「違う道」を走らなきゃいけないリスクを冒してまでも子どもを産んでやってんだぞ、という感じがある。それなのに男の人は何も変わらない。いつもと同じ道をひたすら歩いていて。「ちょっと」って声を掛けたら「何?」って振り返るけど、こっちまで歩いて戻ってくる感じはなくて。妊娠中もお風呂を洗うのは私でした。おなかが大きいと大変じゃないですか。でも夫はやらない。

 子どもが1歳半くらいのとき、やっと寝かしつけたと思ったら、夫が帰ってきてごはんの支度をすることになり、「私こんなに働かなきゃいけないんだ」って思った。それまでもほとんど家事はやらない人でしたが、「これならいないほうがましだな」と感じてしまった。「いないほうがまし」って思うことが産後クライシスなんだ、って思いましたね。

 でも、まあとどのつまりは社会が悪いのかな、と私は思ってしまっています…。

 「社会が悪いのかな…」。アサミさんの思いを受け止めて、続く最終回・私たちの産後クライシス③では、社会で変えていくべきことについて考えます。

コメント

  • 女性は出産後、自分の体を労ることもなく怒涛の育児生活に駆り出されます。普段の生活に余裕などなく、自分のための時間など以てのほか。。その点、男性は気楽に生きてて良いなあと思います。
     女性 30代 
  • 去年妊娠3ヶ月目で流産し、現在お休み期間中ですが、内心ほっとしています。 1.夫の会社は育休に寛容な会社です。育休取るならどれくらいか話した所、産後2週間〜1ヶ月と返され。3ヶ月以上欲しいと感じ
    シオ 女性 30代