妊婦とパートナーにワクチン優先接種を 不妊や流産の根拠なく、週数を問わず接種可能 医療現場の訴え
デルタ株で重症化が顕著に 母子を守れる病院は少数
年間3000件の出産を扱う母子愛育会総合母子保健センター(東京都港区)は、感染した軽症から中等症までの妊婦の治療も担う。今年4、5月には月3、4人だった患者は7月は6人、8月も上旬までで6人と増えている。
中林正雄所長は「春先は、治療を受けて軽快し、退院した妊婦がほとんどだった。しかし、デルタ株が広まった7月以降は、重症化して集中治療室(ICU)のある病院に移った妊婦は8割に上る」と話す。
感染した妊婦が肺炎を悪化させると、予定日より早く赤ちゃんを取り出すこともある。このため、小さく生まれた赤ちゃんをケアする新生児集中治療室(NICU)も整っていることが転院先の条件になる。中林さんは医療体制がただでさえ逼迫(ひっぱく)する中、「母子の命を同時に守れる病院は限りがあり、重症化しても搬送が難しくなっている」と危機感を強める。千葉県柏市では今月、感染した女性が自宅で早産となり、搬送先が見つからず、赤ちゃんが死亡する事態も起きた。
自身も妊娠中に接種した産婦人科医「安全性に問題ない」
妊婦へのワクチン接種が急務だが、そもそも優先接種の対象ではなく、自治体によっては妊娠出産期にあたる20~40代の接種機会もまだ限られているため、希望しても受けられない人もいる。
一方、妊婦自身が接種をためらうケースも。都内で開業する産婦人科医の竹元葉さんも「迷っている妊婦さんは実際多い」と話す。妊娠中の竹元さんは、妊娠初期に接種し、安全性に問題がない自身の体験を伝えているという。
竹元さんが診ている妊婦の中には、医療者の誤解で接種会場で取りやめた人もいた。問診を担当した医師に「本当に打つの?」と聞かれたり、妊娠初期の女性が「15週まで待ったらどうか」と言われたり。「少数だと思うが、そうした伝え方をする医師もいるようだ」と話す。
感染は「夫から」がほとんど 同居家族も優先接種を
そんな中、CDCが今月11日、接種した妊婦の流産リスクが高まることはないとの調査結果を公表。「メリットは、既知ないし潜在的なリスクを大きく上回る」と接種を強く推奨している。日本産科婦人科学会なども、時期を問わず接種を呼び掛ける。
竹元さんは「赤ちゃんへの抗体移行も明らかになってきており、本来は健診を受ける病院で接種できるのが良いのではないか」と話す。
母子保健センターは25日から、受診中の妊婦(28週以降)とそのパートナーに接種を開始。妊娠後期の人を優先する。中林さんは「妊婦の感染は同居の夫からがほとんど。国や自治体には、同居家族も優先接種できるよう検討してほしい」と求める。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい