〈中倉彰子さんの子育て日記〉57・将棋ざんまいの夏休み

(2017年9月8日付 東京新聞朝刊)

中倉彰子さんの子育て日記

ハプニング! 手番が分からない

 夏休みも終わり、通常の学校生活に戻りました。子どもたちは嘆いていましたが、私は「ようやく終わった!」とホッとしています。

 小学1年生のシンは、将棋道場に行ったり大会に出たりと、将棋ざんまいの夏になりました。

 まずは毎年、東京・渋谷のデパートで行われている子ども大会へ。シンのコーチ役の次女マキも同行。マキは「絶対勝つんだよ」と、いつもの強気の応援でシンを送り出しました。

 一回戦の対局中、ちょっとしたハプニングが発生。子どもたちの対局は指し手が早く、シンの対局も互いにどんどん指しているうちに、どちらの手番か分からなくなってしまったようです。

 シンは係の人を呼ぼうとしましたが、気づいてもらえず、相手の男の子と相談し、2人で手数を数えてみることに。無事手番も分かり、互いに納得して再開。ママに頼らず、自分で解決できた姿にちょっと成長を感じました。

 この日は予選通過後、本戦一回戦で負けました。勝ち上がるのは難しいです。

負けて強くなる

 別の日は、東京ビッグサイトが会場の大会へ。今回は私と2人。お弁当を持って、電車で出掛けました。1回戦は勝ち。2回戦は相手がなかなか来ず、しばらくして係の人に不戦勝を告げられ、うれしそうなシン。次はなんと大きなお兄ちゃん。恐らく中学生で、とても強そうです。

 結果、負け。でも、この日一番いい顔をしていました。棋力差があっても、やっぱり悔しそう。終わった後、お兄ちゃんから「ここはこの手が良かった」と教わり、真剣にうなずく姿に、「負けて強くなる」だなと思いました。

 夏休み最後の週は、地元の大会に参加。私は出張があり、伯母に連れて行ってもらいました。私が夜遅く帰ると、シンが泣きまねしながら「ママ、次の大会いつあるの?」。マキが「シン、仕方がないでしょ」となだめると、おもむろに「じゃ~ん! 優勝しました」と表彰状を私の目の前に。2人でお芝居を考えて私をビックリさせようとしたのです。ちょっとわざとらしい感じではありましたが(笑)。

 10人ほどの小さな大会でしたが、シンにとってはうれしい夏休みの思い出になりました。(プロ棋士)

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