障害があっても、創作意欲は育つ 自分を丸ごと肯定される練馬のアトリエ〈多様な学びの現場から・4〉
自閉症の子どもが、思いを積極的に伝えるようになった
4月中旬、小中学生2人が久しぶりに教室を訪れた。中学1年の金城大永(きんじょう・ひろなが)さん(12)は知的障害を伴う自閉症。「動物園に行こう」とつぶやき、上野動物園のパンダをクレヨンで描いた。パンダの太い耳を垂直にピンと立て、黒色を際立たせた。教室に通って3年。会話は苦手だが、相手の手を引っ張るなど自分の思いを積極的に伝えるようになった。
昨年12月から通う小学6年の大滝祥さん(11)は自閉症。大好きなタレント武井壮さんのスーツ姿を題材に、数種類の色鉛筆を上下左右に走らせ、「よく描けた」と笑った。「褒められることで自信につながっている」と母親の好恵さん。
教室は2008年4月、アトリエを障害の有無にかかわらず、地域に開かれた学びと表現の場にしようとスタート。通っている小中高生19人の大半に障害があり、画家やデザイナーらが1対1で寄り添う。最初は「何かさせられるんじゃないか」と警戒する子もいる。創作時間を15分、30分、1時間と延ばしていき、教室になじんでもらう。描いた感触が直接伝わるクレヨン、色の重なりを楽しめる水彩絵の具、一人一人にあった画材を選び、創作の意欲を育てる。
カレンダーを見て「アトリエ、アトリエ」再開を待ち望む
昨年、国分寺市の市立小学校で教室の絵を展示した。美術家の井坂奈津子代表(37)は「教育などに影響されず描いた圧倒的な絵の個性に、児童たちが素直に驚き、個性とは何だろう、と自分のこととしてとらえてくれた」と振り返る。
現在は新型コロナウイルスの感染拡大で活動を休止。金城さんは、通うはずのカレンダーの曜日を見ては「アトリエ、アトリエ」と再開を待ち望む。井坂さんは「アトリエは自分が丸ごと肯定される場、こころの秘密基地のようなものなので、絶対に維持していく」と力を込める。
こどもの日特集「多様な学び」を考える
今日は「こどもの日」。新型コロナウイルスの感染拡大で、休校が続く中、子どもの学びについての議論も活発になっています。子どもたちが自らやりたいと思う気持ちを尊重し、探求できる学びの場を記者が訪ね、「学校での一斉授業」だけではない「多様な学び」について考えます。
〈多様な学びの現場から〉
1・学校とは違う学び 子どもの「どうして?」の力を信じる、松戸の探求型スクール
2・宿題も定期テストも廃止 公立校の”当たり前”の改革者・工藤勇一校長の挑戦
3・外国籍の子どもが多い横浜市南区 休校で孤立しないよう、学習支援を続ける信愛塾
4・障害があっても、創作意欲は育つ 自分を丸ごと肯定される練馬のアトリエ
〈多様な学びを広げるために〉
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