長引く休校…大量の課題と「時間割」に保護者が悲鳴 家庭で管理するのは無理がある!
山のような課題「1学期の成績に入ります」
世田谷区の区立中学に次男(2年生)が通う母親(51)は、今月11日の登校日に息子が山のような課題を持ち帰ってきて驚いた。朝9時から午後3時までの時間割も添えられていて、保護者には「配布した時間割通りに毎日しっかりと学習させてください」「在宅学習期間中の課題への取り組みは1学期の成績に入ります」とのメールも送られてきた。「これを家庭の自己管理で完結させるの?」
休校が始まって3カ月目。母親は「子どもたちの学習の遅れを少しでも補おうと学校や先生たちが頑張ってくれていることは分かるんです。でも、新しい学年の内容を教科書を見ながら時間通りこなすのは、子ども一人では難しいと思う」と話す。
家庭によっては落ち着いた勉強スペースが確保できないかもしれない。図書館や児童館など子どもが過ごせる場所も開いていない。「先生たちの仕事は教えることで、管理することじゃないはず。ベルトコンベヤーに子どもたちを乗せてるだけに見える。それよりは、電話1本かけてくれて、子どもに声をかけてくれるほうがありがたいと思うのだけど…」
計画表に「何分やったか」チェック欄まで…
墨田区の区立小学校5年の男子児童の母親(45)も「これまでの2カ月と比べて、課題の量が格段に増えた」と感じている。漢字ドリルや算数の教科書の練習問題のほか、NHKEテレの番組を見た感想文や、雲の観察などの新学年の単元にも取り組むことになっている。縄跳びやストレッチなどの体力づくりまで細かくやるべきことが計画表に書き込まれていて、それぞれ何分やったかチェック欄も。
来週以降も週1回の登校日が設けられ、その際に一部の課題は提出する。「ふだんだったら計画的にやれたかもしれないけれど、正直、親も子も学校に行かない生活に慣れてしまっているし、いつもと違う生活への疲れもあって、学習習慣や気力が落ちている部分があるので負担は大きい」
オンライン授業…親の会議と重なったら?
今後オンライン授業を進めるための準備として、家庭のネット環境について尋ねる調査用紙も配られた。「家にあるパソコンでやらせようと思っていたけど、夫も在宅勤務でオンラインミーティングなどの時間と重なる、ということもありそうで…。パソコンを買いました。オンラインもやるとなれば、家庭の環境も整えなくては」
すでに先行してオンライン授業をやっている地域や自治体があることについては、「今の時点では仕方がない面もあると思う。でも、今後もどういう状況が続くかわからないのだから、どこの学校に通っていても同じように学べるように国がしっかり考えなくてはいけないのでは」と投げかける。
「未就学児がいる家では絶対に無理では」
文京区立の小学校に3人の子を通わせる女性(49)も11日に3人が課題をそれぞれ持ち帰ったときは「バタバタでどうなることかと思った」。
この学校でも朝から午後にかけて、学習スケジュールの参考にするよう時間割が出されたが、6年生の長男と4年生の次男に出された課題の量はさほど多くなく、「1時間くらいでこなしている感じ」だ。それでも、「きょうだいそれぞれ課題のボリュームが違うので、目を配るのは大変。うちは小学生3人なのでなんとかなるけれど、就学前の弟や妹がいる家は絶対に無理だと思います」
社会の教科書○ページ~○ページ、などと「何をやるか」は細かく示される一方、この単元で何をつかみとるのか、などの説明がないので、消化不良にならないかと感じる。18日からはZoomを使った双方向性のオンライン授業を始める、との連絡もきた。「必ずしもオンラインではなく紙の課題でもいいとは思うが、この単元では何を覚えてほしいのか、身につけてほしいのかを先生から伝えてもらうことが大事なのでは」
悩む教員「通信環境が整っていない家庭も」
先生たちも手探りが続く。墨田区の公立小の男性教諭(36)は、「オンライン授業や動画配信に力を入れる学校もあるが、勤務する学校の子どもは情報端末を1人1台持っているわけではなく、通信環境が整っていない家庭もある」と話す。教員にとってもオンラインで子どもを教えるというのは経験のないこと。「教科を教えるのに特化して考えれば、塾の先生の方が進め方は上手かもしれない」と気持ちを明かす。
「でも、学校は勉強だけをする場所ではない。学校の先生がやるべきことは、子どもそれぞれの努力や過程を認めてあげて、人間的な成長を支えること。休校中の学習支援でも、一方的に課題を出して終わりではなく、子どもの能力や親の負担などを考え、結果だけにとらわれないことを大切にしたい」
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