埼玉県内で「オンライン授業を全校実施できる」自治体は3分の1未満 全63市町村アンケートで見えた課題
秩父、越谷、戸田、久喜は昨年から実施
アンケートは1月に埼玉県内の全63市町村に依頼し、管内の公立小中学校の状況を尋ねた。
既にできる | 秩父市、飯能市、加須市、本庄市、狭山市、羽生市、深谷市、草加市、越谷市、蕨市、戸田市、入間市、志木市、久喜市、八潮町、越生町、横瀬町、東秩父村、宮代町 |
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2月から | 幸手市、鶴ケ島町、鳩山町、小鹿野町 |
3月から | 春日部市、上尾市、朝霞市、新座市、桶川市、三郷市、蓮田市、吉川市、白岡市、伊奈町、三芳町、小川町、川島町、吉見町、長瀞町、美里町 |
4月から | さいたま市、川口市、行田市、東松山市、鴻巣市、和光市、北本市、坂戸市、ふじみ野市、毛呂山町、滑川町、嵐山町、ときがわ町、皆野町、神川町、上里町、寄居町、杉戸町 |
5月以降 | 所沢市 |
めど立たず | 川越市、日高市、松伏町 |
実施予定なし | 富士見市 |
検討中 | 熊谷市 |
昨年の臨時休校期間にオンライン授業(朝の会など学活を含む)を「全校でできた」と回答した自治体は秩父、越谷、戸田、久喜の4市だった。学校再開から約7カ月たった今年1月8日時点では、「全校でできる環境にある」は19市町村に増えた。他は4市町が「一部の学校でできる」、40市町が「全校ともできない」と回答した。
増加中だが、めどが立たない自治体も
コロナ禍でオンライン学習への対応が急務となり、国は小中学生に1人1台ずつ情報端末を配備する「GIGAスクール構想」で、2023年度までとしていた計画を前倒しし、本年度中の配備完了を目指している。
これに沿うように、オンライン授業を「2月からできる」と「3月からできる」を合わせると39市町村。「4月からできる」まで含めると57市町村が準備が整うとした。一方で川越、日高の両市と松伏町は「めどは立っていない」、富士見市は「実施する予定はない」と回答。熊谷市はアンケートの選択肢にない「検討中」とした。
できない理由「端末が行き渡らない」
オンライン授業ができない理由(複数回答可)は「児童生徒に端末が行き渡っていない」(42市町)が最多で、「ネット環境のない家庭がある」「校内の機器が不十分」と続いた。
市立小中学生が約10万人のさいたま市の担当者は、そうした機材・環境の整備に加え、端末を使用可能な状態にするための設定や管理用シールの添付、保管庫の整備など関連の作業も膨大な量に及ぶと指摘する。
「評価の指標がなく難しい」との意見も
また、所沢市は端末の配備は年度内に終わるものの、ネット環境がない家庭があることに加え、各校が一斉にオンライン授業をするとやりとりするデータ量が増え、現在の市のシステムでは対応できないという。設計を見直し中で、全校で実施できる環境が整うのは5月以降の見込みだ。
自由記述欄は「家庭の通信費の補助拡充」や「教職員への支援体制の構築」など、国や県に予算や人的な支援を求める内容が多かった。「どのように評価するのか明確な指標等がない中でのオンライン授業の実施はなかなか難しい」(越谷市)との意見もあった。また、複数の自治体は、著作物を教材として使うためネット送信する際に、著作権者の許諾を不要とする代わりに支払う補償金について、負担の免除を要望した。
積極導入した自治体は効果実感「インフルなどの学級閉鎖でも使える」
オンライン授業に積極的に取り組む自治体は、その効果を実感している。飯能市は昨年の臨時休校の際、小中一貫の市立奥武蔵小・中学校で毎日1、2コマのオンライン授業を実施。子どもたちは画面越しでも久しぶりの授業再開に安心し、保護者からも歓迎されたという。中学校の数学では、生徒同士が「あの公式を使ったら解けるかも」と話す姿も。市は昨年9月にタブレット端末を市内の全小中学生に配備。通信費込みで家庭の負担がないようにした。
久喜市も昨年の一斉休校時は1日に1コマ程度だったが、学校再開後も試行し、現在はオンラインでも時間割通りの授業に対応できるという。市の担当者は「先生のスキルが向上し、家庭側でも操作に手間取らなくなった」と説明する。
昨年は小中学校全3校ともできなかった越生町は、12月に端末の配備が完了。全校でできる環境が整った。越生中では、コロナ対応で念のため学校を休んだ生徒向けに授業をライブ配信。画面越しに意見を発表する機会もあり、問題なく行えたという。町の担当者は「今後はコロナだけでなくインフルエンザなどの学級閉鎖などでも授業を進められる可能性がある」と期待した。
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