便秘疑いの小学生、4年連続で2割超 「うんちチェックシート」で自分の状態を知って 良い便に近づく効果も

「うんちチェックシート」(右)を手に、排便を記録する意義を説明する「日本トイレ研究所」代表理事の加藤篤さん=東京都港区で
「かなり実態に近い数字」
-昨年10~11月に日本トイレ研究所が実施した調査では、便秘が疑われる小学生が24.5%に上りました。
調査は全国の小中学生が対象で、子どもたちに「排便の有無」と「便の形状」を7日間記録し提出してもらいます。今回の調査では、小学校111校、中学校12校の協力を得て回収した1万2693人分の記録を集計しました。
7日間のうち、「排便があった日数が2日以下」と「硬い便が2回以上」のどちらか、もしくは両方に該当する子どもは、便秘が疑われます。その割合を出したところ、小学生は24.5%、中学生は18.4%でした。
同じ形で調査をしている2021年以来、小学生は4年連続で2割を超えており、かなり実態に近い数字だと考えています。
-調査を始めたいきさつは。
当研究所では学校のトイレの環境改善に30年ほど取り組んでいますが、その中で小学校の保健室の先生や保護者、医療関係者から、「子どもたちのおなかの状態がかなり乱れている」との声を耳にしていました。養護教諭からは「腹痛の子どもが保健室によく来る」、保護者からは「子どもが学校でトイレを我慢して帰ってくる」といった内容です。
そこで、子どもの便秘の実態はどうなっているのだろう、と探したのですが、当時は一人一人の状況を調べた大規模なデータを見つけられなかったんです。厚生労働省の国民生活基礎調査(2016年)では、便秘を訴えている子どもは5~9歳は男児0.46%、女児0.46%、10~14歳は男児0.45%、女児1.14%という結果が出ていましたが、非常に低い数字で、現場の感覚とは大きなズレがありました。本格的に実態を把握する必要があると考えて2020年に始めたのが、この調査です。翌2021年からは、今回と同じ形で毎年調査を続けています。
小学校で学ばない「排泄」
-調査で重視していることは。
2つあります。1つは、子どもたちの排便の傾向を把握すること。もう一つは、子どもたちに排便の大切さを知ってもらうことです。
残念なことに、小学校の学習指導要領には「排泄(はいせつ)」という文字が出てこないんです。運動、食事、休養および睡眠については重視していますが、食べたものを体から「出す」ことについては学びません。
「自分で排泄をして清潔を保つ」というトレーニングは小学校入学前に済ませます。その次の段階として、「便から自分の健康状態を理解し、それを指標として自分の体を整える能力を身に付ける」必要があるのに、現状はその機会がありません。
そこで私たちは「トイレの教科書」を作り、それを学んだ上で1週間、「うんちチェックシート」を使って自分の体で確認する取り組みを、11月10日の「いいトイレの日」から11月19日の「国連・世界トイレの日」を「トイレweek」と定め、2020年から続けています。この調査もその一環です。

NPO法人「日本トイレ研究所」が作成した「うんちチェックシート」
自分で体を整えるきっかけに
-1週間、「うんちチェックシート」を使って排便記録をつけるねらいと効果は。
「自分の体の状態を知り、判断する力」を身に付けてもらうのがねらいです。1週間の排便を記録し振り返ることで、行動変容が起きるはずです。子どもが元気に健やかに育つためには、「寝て、食べて、動いて、出す」、この4つが絶対欠かせませんが、4つのうち「出す」だけが抜け落ちています。学ばないから「出す」ことの不具合に気付かない、気付かないから放置する、放置するから悪化していきます。そのことに気付き、自分で自分の体を整えるきっかけにしてもらうことを目的としています。
「いいトイレの日」の11月10日に合わせて7日間取り組んでもらっています。大事にしているのは、子どもたち自身が便の形状をチェックし、当てはまる欄に丸を付ける行為です。アナログですが、自分の便を見て、「この状態だ」と丸を付けるのは、非常に印象に残る取り組みです。子どもは純粋で、「バナナうんちが、いいうんち」と書かれると、それを目指そうと思うんですね。ですから、実は1週間「うんちチェックシート」に取り組むこと、それ自体で便の状態が改善に向かうことも少なくないんです。
-「子どもの便秘だと気付いていない保護者がかなりいる」と(第2回の記事で)小児外科医の中野美和子さんも指揮しています。
便秘状態だと考えられる子どもの保護者に「子どもは便秘だと思うか」を聞いた2022年の調査では、約4割の保護者は「そう思う」と答えましたが、「全く思わない」「あまりそう思わない」と答えた保護者も約2割いました。便秘だと思っていない2割の保護者は、ケアや受診まで至らない可能性が高いです。
※第2回の記事【見逃される子どもの便秘 気付けないのはなぜ? 「便をため込む癖」がつく悪循環を小児外科医が解説】では、「小学生の便秘は乳幼児の頃から続いている可能性が高い」と指摘する小児外科医に、子どもが便秘だと自覚できず、大人も見逃してしまう背景や、子どもが便秘になってしまう際の「悪循環」について詳しく聞きました。
目に見える「食」は、一緒に食事を取れば食べ方も偏食の具合も分かるので、把握とサポートがしやすいです。一方、排泄は年齢が上がるにつれ人に見せなくなっていくので、把握しづらくなります。だからコミュニケーションが食以上に大事で、丁寧に話したり聞いたりする必要があります。
大人が整えたい「3つの間」
-家庭や学校でできることは。
まず、「出すことはいいことだ」と伝えてほしい。大人が口にしない、触れないテーマを、子どもは意識することができません。「体にとって不要なものをしっかり体の外に排泄するのは、とてもいいこと。ため込んではいけない」と言わなくてはいけません。
次に、「出てきた便の状態は、体の状態を知らせてくれるメッセージで、きちんと把握して、どうしたらいいかを一緒に考えよう」と伝えてほしい。加えて、保護者が子どもの状態を把握しておくことも大切です。学年が上がってくると、恥ずかしさも出てくるので、うんちチェックシートもうまく活用して子どもの状態をつかんでください。1年を通して記録する必要はなく、1年に1回くらい、1週間、できれば家族で取り組んでみてください。
-小学校入学は、離乳食の開始やトイレトレーニングの時期と並んで、便秘になりやすい時期だと言われています。
子どもたちが学校でトイレを我慢しないために、大人が整えるべき「3つの間(ま)」があると、私たちは言っています。
1つ目は「空間」。子どもたちはトイレが清潔でないと避けてしまいます。家庭のトイレは今やほぼ全て洋式で、床もドライ式(床に水を流さないで掃除するタイプ)です。学校のトイレもそうしたトイレが増えてきました。家庭とのギャップはストレスになるので、家庭に近づける方が安心して利用できます。老朽化していないか、汚れていないか、暗い雰囲気になっていないか。まず、空間を整えることが大事です。
2つ目は「時間」。トイレに行きたいときに行かせてあげたいです。もちろん「できるだけ休み時間に行きましょう」という前提は必要ですが、そうはいっても生理現象なので、急に行きたくなることや、給食を食べた後に行きたくなることはあります。その時に、行ける時間を確保し、我慢させないことが大事です。
3つ目は「仲間」。自分一人が「トイレは行きたいときに行った方がいい」と理解していても、周りの人たちが「いいよ」と思っていないと行くことができません。日本人は特にそうです。「行きたいときに行くのが当たり前だよ」「行ってきなよ」という共通認識がないと行きづらいので、学校やクラス全体でこれを理解することが大事です。
この「3つの間」を整えるのが大人の役目です。
-授業中にトイレに行く子が何人もいたり、何回も行ったりする子がいると、教員は学級運営に困らないでしょうか。
我慢させても何もいいことはありません。生理現象として行きたいのだから行かせた方がいけれども、もし頻回に行くようであれば違う原因が隠れている可能性があります。体調が悪いのかもしれないし、何か嫌なことがあってそこから逃げ出したいのかもしれません。子どもがSOSのサインを出してくれていると考えて、目を向けていくことが必要でしょう。
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい
もう70近いおばあさんです 子育て時代から、わが家では私と娘たちの間では”排便”の話は挨拶代わりでした 今日も元気だバナナうんち! 今日はコロコロ兎のうんち! おー、ご立派! 残念、ピーです!てな感じ…
思えば、私も幼時から2DKの狭い団地の和式水洗トイレで流す際に”バイバイ〜”と言っていました。
父と私も朝から排便の話で盛り上がっていましたねぇ、今では”その情報要りません”と言われる始末ですが、よそのお宅では違うんですね、と驚きでした
第一回の見出しに飛びつき、第三回までじっくり拝読しました。
乳児の長男の排便時にたまに血が混じり、排便回数が多いことが気になっていた矢先にこの記事を読み、すぐ小児科を受診しました。やはり便秘で、モビコールを服用することになりました。
そのうち治るかな、と思って半年くらい経ってしまったので、気付けて本当に良かったです。ありがとうございます。
子育てをする中で、気になってはいても、対応は後回しになっていることが多々あります。すくすくのサイトでバランスの良い情報に触れ、行動のきっかけになることが多く、大変助かっています。