子どもの「隠れ便秘」に注意 小学生の2割超が便秘疑い 気付かれず乳幼児期から持ち越している可能性も

便秘の薬を服用する小学2年生のソウタさん(左)。4歳の夏から3年半以上、治療を続けている=東京都内で
毎日出ていても便秘のケースも
東京都内在住の小学2年生のソウタさん(8)は、保育園年中児だった4歳の頃から3年半以上、便秘の服薬治療を続けている。父親(41)は「毎日便が出ていたので、まさか便秘だとは思わなかった」とかかりつけの小児科で診断された当時を振り返る。
2021年6月、歩けないほどの腹痛があり受診したソウタさん。肛門のすぐ上にある直腸に便がたまっており、触診した医師から「腸にうんちをため込む癖がついている。薬でちゃんと出すとため込まなくなるが、治りきるまでには長くかかる」と説明を受けた。
排便外来を開設し多くの症例を見てきた、さいたま市立病院元小児外科部長(現在は非常勤)の中野美和子さん(74)は「排便の頻度だけでなく、便の形状も非常に重要。なめらかなバナナ状の便が良い便です」と話す。1週間のうち「排便が2日以下」「硬い便が2回以上」のどちらかでも当てはまれば便秘の疑いがあり、便の硬さや形状から排便の状態を判断する指標=イラスト=が参考になる。

3、4の形で硬そうでなくても太い便や、5ぐらいの軟らかさでも大きな塊状の便は注意
NPO法人「日本トイレ研究所」(東京都港区)が昨秋、全国の小中学生を対象に行った調査(有効回答1万2693件)では、便秘が疑われる小学生は24.5%、中学生18.4%に上った。2021年に同じ形で調査を開始して以来、小学生は4年連続で20%を超えている。
中野さんは「便秘の小学生の中には、乳幼児から便秘を持ち越した子がかなりいる」と指摘。「食と違い排泄は見えにくい。加えて周りの大人自身が便秘傾向で、『硬めの便が普通』『排便は苦しいもの』と思い込んでいると、子どもの便秘のサインを見逃し、ケアや治療につながらない」と危惧する。冒頭の男児の父親も「コロコロ状はさすがにまずいと分かるが、正直、表面がひびわれた硬めの便が問題だとは思わなかった」と打ち明ける。

さいたま市立病院で2004年に排便外来を開設し、多くの便秘の子どもたちを治療してきた小児外科医の中野美和子さん=東京都世田谷区で
見逃さないために「排便記録」を
離乳食・幼児食の開始時など食生活が変わるタイミングや、入園・入学など環境が変わる時期は便秘になったり、便秘が悪化したりしやすい。何らかのきっかけで便が滞り、硬い便や大きい便が続いて痛い思いをすると「子どもは怖くなり、便意があっても排便を我慢するようになる」。さらに「便意に応えないでいると体はだんだん少しの便量ではサインを出さなくなり、たまった便を出すにはいっそう大きな苦痛が伴うという悪循環に陥る。結果、便意を感じない腸になり、便をため込む癖が付いてしまう」と解説する。
見逃さないためには、どうしたらよいのか。中野さんは「周りの大人が正しい知識を持ち、子どもと排便記録を付けてみることが大事」と話す。
便の状態は「表面がひびわれたり、ごつごつしたりしている便も便秘のリスクがある」と強調。「大人はこうした便が出る人も多いが、2歳でこの便だったら立派な便秘」と注意を促す。便のにおいや排便後のすっきり感もポイントだ。

「うんちチェックシート」(右)を手に、排便を記録する意義を説明する「日本トイレ研究所」代表理事の加藤篤さん=東京都港区で
日本トイレ研究所の調査で小中学生は「うんちチェックシート」を使って排便記録に取り組む。同研究所代表理事の加藤篤さん(52)は「まずは自分の便の状態を知ることが第一歩。子どもは素直なので『バナナうんちがいい』と言われると、それに自分の便が近づくように意識する」と話す。
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