生理中の女性にどう接したらいい? 品川女子学院の中高生が同世代に伝えたかったこと

品川女子学院クレアのメンバー(右)の説明を聞きながら、経血に見立てた水溶液にタンポンを入れる東海大付属高輪台高校の男子生徒=東京都港区で(須藤英治撮影)
「お互いを理解する努力をしたい」
「男性と女性でそれぞれ違って、わかり合えない部分や、大変な部分があるとは思います。男性と女性、どちらが大変だからと対立するのではなく、完璧に理解できないながらも、お互いを理解する努力をしていきたいです」
3月11日、東京都港区の東海大付属高輪台高校(共学校)で開かれた講座。集まった同校の生徒約40人に向けて、クレアのメンバーが冒頭に呼びかけた。

「生理の貧困」について説明するクレアのメンバー(右奥)
赤い水をナプキンに吸水「重い」
メンバーはまず、講義形式で生理の仕組みや、生理痛と痛み止めなどについて説明。生理用品が買えない「生理の貧困」や生理休暇が取りにくい現状も説明し「生理について話しづらい風潮の原因として、男性が生理について知る機会が少ないことが挙げられるのではないでしょうか」と話した。
6グループに分かれたワークショップでは、クレアのメンバーが多彩なナプキンやタンポンなど生理用品の現物を見せながら使い方を紹介した。男子生徒は「タンポンはどれくらいもつのですか」「いくらくらいですか」などと積極的に質問していた。
実際に経血に見立てた赤い水をナプキンやタンポンにしみこませる体験も。男子生徒は「水分を吸収するとナプキンが重い」と驚き「これだけ重いと、あまり激しい動きができないかもしれない。配慮できることが増えた」と話した。

クレアのメンバー(右)の説明を聞きながら、経血に見立てた水溶液を生理用品に注ぐ男子生徒
生理痛の女性に何を渡せばいい?
生理中の女性への対応を学ぶロールプレーも実施。「おなかが痛いよ。生理痛を和らげるものを買ってきて」と言った女子生徒に、男子生徒はコーラなどの飲み物や毛布など用意された選択肢の中から、温かいコーヒーを選んで差し出した。
クレアのメンバーは「コーヒーには、(生理中にはあまり好ましくない)カフェインが入っている」とした上で、「温かいものを配慮して持ってきてくれたのはいいなと思った。カフェインを取らずに体を温められる毛布を渡すのがおすすめです」と話した。
他にも体調が悪そうにしているクラスメートにはジャケットを貸したり、経血で洋服を汚してしまった女子生徒には毛布を巻いたりするなど試行錯誤した。
クレアのメンバーは「相手が何に困っているかを考えて配慮するだけで救われる人は多くいる。体調が悪そうな人がいたら、大丈夫?と声をかけることを意識してもらえるとうれしい」と呼びかけた。

男子生徒にタンポンの使い方を説明するクレアのメンバー(右)
「社会に出ても助け合えるように…」
参加した東海大付属高輪台高1年の松本龍さんは「同年代の生徒から素直な気持ちを教わったことで、配慮や行動の仕方がわかったと思う」と話した。
同校1年で、保健委員の千葉永昌さんは「保健委員だけでなく、この講義を全校生徒にしたら、生理について知ってもらう一歩になるのではないか」と考える。「男子としては、生理はデリケートな問題だからそこまで触れたくないし、干渉したくない気持ちもある」とためらう気持ちを明かし「でも女性の気持ちを聞いて、触れ合う方法を考えられたら、社会に出ても恥ずかしがらずに助け合うことができると思う」と話した。
同校の原田菜々養護教諭は「今回の学びを友達や家族との人付き合いにも生かしてほしい」と期待した。

生理をテーマにした授業の感想を話す千葉永昌さん(左)と松本龍さん
クレアの活動は?
クレアは2021年、学校の起業体験プログラムをきっかけに結成。活動理念は「生理期間を生きやすく」。生理の知識を広めて生理のタブー視をなくし、最終的には年齢や性別に関係なく、相手を思いやる社会を目指して活動している。
週に1度の勉強会で生理の理解を深めつつ、他校や小学生に向けて講座を開いたり、インスタグラムで生理の情報を発信したりしている。
クレアのメンバーで高校2年生の飯田楓さんは東海大付属高輪台高での講座について「ロールプレーや話し合いをしていく中で、具合が悪そうにしている人がいたら助けられたらいいよねという考えが、お互いに伝わって理解し合えたのがすごくよかった」と手応えを語った。

生理の授業を行ったクレアのメンバー。(右から)新代表の三春悠理子さん、飯田楓さん、大塚あやめさん、戸塚琴美さん
本も出版、活動の軸は…
1月には、クレアが協力し、産婦人科医の高橋幸子さんが監修した本「女子中高生が教える 男子にも知ってほしい生理の話」が出版された。クレアのメンバーが幼なじみの男子生徒に生理について授業をする漫画を通じ、生理について詳しく解説している。出版社側がクレアの活動を「面白い」と感じ、実現した。
図書館向けの本のため、各学校図書館などで活用してもらう予定。クレアのメンバーは「この本は私たちが経験したことや学んだこと、生理についてもっと前向きに考えられる社会をつくるためのヒントが詰まっている」と話している。

協力した本を紹介するクレアのメンバー。(右から)新代表の三春悠理子さん、飯田楓さん、大塚あやめさん、戸塚琴美さん
本ではクレアからのメッセージも掲載した。新年度から代表を務める予定で高校1年の三春悠理子さんは「私たちの活動の軸です」と紹介する。
「この本を読んで、『生理だから』『女性だから』ではなく、つらそうにしている人がいたときに、『大丈夫ですか?』と声をかける人がたくさんいる、お互いに相手を思いやることのできる社会に近づくことを願っています」

クレアが協力した本「女子中高生が教える 男子にも知ってほしい生理の話」(Gakken、4950円)
なるほど!
グッときた
もやもや...
もっと
知りたい