保育所から療育施設に通う障害児、施設がお迎えするのはダメ? 東京都の曖昧対応に疑問の声
長男を通わせる女性会社員「効率よく働け、通所日も増えた」
今年4月に開所した児発事業所「poco a poco(ポコ・ア・ポコ)」(荒川区)は、都内では珍しい保育所送迎のある施設だ。子どもたちは月に4~23日通い、1時間半以上、訓練を受ける。施設を運営するNPO法人「あした場」代表理事の小川明子さん(47)は「送迎は当然の配慮だ」と保育所送迎にこだわる。
保育所送迎でポコアポコに週2日、長男を通わせる区内の女性会社員は「以前預けていた施設は保育所送迎がなく、仕事を抜けて通わせていた。今は効率よく働けるし、訓練を受ける日数も増えた」と喜ぶ。
都「いいとも悪いとも言えない」 荒川区は送迎分にも補助金
都内で児発事業所を運営するには都に申請し、指定を受ける必要がある。都施設サービス支援課の担当者は保育所送迎について「国の制度は保護者以外の送迎を想定していないため、いいとも悪いとも言えない。また送迎では事故や事件に巻き込まれる可能性がある」と指摘。事業所側にもこれを説明し納得してもらっているという。都内の保育所から送迎する児発事業所は「把握してない」とした。
児発事業所は提供するサービスに応じて国や都道府県などから給付金を得られる。利用者の自宅から施設への送迎は給付金が認められるが、保育所送迎の場合はどうなのか。
小川さんは開設前に給付が得られるか都に問い合わせたが「認めていない」との回答だったという。それでも「送迎は当然のことだ」として、都に代わって給付関係の書類を受け付ける荒川区に保育所送迎分も申請。「書類には送迎場所が自宅か保育所か記入を求めていない」(同区)ため保育所分も給付を受けられたといい、運用は曖昧だ。
ある児発事業所関係者は「都が『やらないで』という態度なので、分からないように保育所送迎をしてきた。保育所分は給付金を申請しないが、こうした運用は改めてほしい」と話す。
専門家の声「安全確保のためのマニュアル整備を」
◇障害児支援に詳しい淑徳大の柏女霊峰(かしわめ・れいほう)教授の話
事業所の保育所送迎は、子どもの最善の利益や、親の就労継続のために重要。ただ、安全性の担保は必要で、事業所や保護者、保育所で覚書を交わすといった都によるマニュアルの整備などは必要。全ての子どもたちが地域で生きられるよう、療育の専門職員による保育所訪問も含め、施策が必要だ。
千葉・埼玉は送迎に給付金 神奈川は支給せず
児童発達支援事業所は全国に約4700カ所(医療支援型除く)ある。利用者は原則利用料の1割を負担、残りは公費で賄われるが、保育所送迎への対応は都道府県によって分かれる。
千葉、埼玉両県や大阪府は保育所送迎分に給付金を支払う対応を取る。大阪府の担当者は「就労などでやむを得ない人はおり、もちろん給付対象だ」と説明する。一方で、神奈川県は「送迎は可能だが、支給はしない」としている。
厚生労働省の見解は、給付を受けられる送迎場所は原則居宅だが、保育所でもきちんと計画を立て、保護者が同意していれば可能という。ただし「送迎場所を保育所とは明記しておらず、最終的には自治体の判断」としている。
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