保育士の配置基準を76年ぶり改定へ 4~5歳は30人から25人に 2024年度から、実効性には課題も

坂田奈央 奥野斐 (2023年12月12日付 東京新聞朝刊)

「こども未来戦略」案に明記

 政府は11日、「次元の異なる少子化対策」の具体的政策や財源を盛り込んだ「こども未来戦略」案を公表した。来年度から保育士の配置基準の一部を76年ぶりに見直すことが明記された。3月末に方針を発表した際には、「保育現場に混乱が生じる可能性がある」(小倉将信前こども政策担当相)などとして、配置基準の改定を否定していた。保育現場からの切実な声で見直しに至った格好だが、課題も多い。

表 保育士1人で受け持てる人数(国の配置基準)

「基準の改善」から一転 3歳児も改定へ 

 来年度から基準を改定すると明記したのは、保育士1人がみる4~5歳児の数で、現行の30人から25人に手厚くする。こども家庭庁によると、同時に3歳児の数も現行の20人から15人に改定するという。認可保育所では、国の配置基準によって、保育士1人がみる子どもの人数が年齢ごとに決まり、受け持つ子どもの数が多いため現場の負担が大きいことが課題だった。

 ただ、政府はこれまで基準の見直しには後ろ向きで「(基準を満たす)保育士等が確保できない施設では保育の提供に支障が生じる」などと主張。保育士を増やす保育所を資金的に補助する公定価格の加算措置による「基準の改善」を打ち出していた。

 今回、政府は方針を転換し、加算と合わせ基準自体の改定が実現する。だが急な保育士の確保は難しいとの配慮で「当分の間は従前の基準により運営することも妨げない」との経過措置を付記した。

「加算では格差が広がる」現場の声届く 

 こども家庭庁は、6月にこども未来戦略方針を発表後、保育事業者団体や専門家を交えた「子ども・子育て支援等分科会」での議論を通じ、具体案を固めてきた。8月の第1回会合から、加算措置でなく、基準そのものの改正を求める声が相次いでいた。

こども未来戦略会議であいさつする岸田首相(右から3人目)=11日、首相官邸で

 というのも、加算では事業者や自治体の判断で保育士を増やさない恐れがあるためだ。今月6日の第4回会合でも「全国保育協議会」(東京)の代表者が、保育所や地域で「格差が広がる可能性がある」と指摘していた。

 これら現場の声に加え、国会でも野党から加算では不十分と批判が出ていた。こども家庭庁の本後健保育政策課長は、今回のこども未来戦略案に「配置基準の改正」と明記した理由を「分科会などでの現場の意見も受け、基準の改善をより明確にした」と説明した。

保育士は歓迎「ようやく山が動いた」

 「ようやく山が一つ、動いた」。愛知県の保育士らによる「子どもたちにもう1人保育士を!」運動の呼びかけ人の平松知子さんはそう喜ぶ。運動を始めたのは2021年末。街頭で配置基準問題を訴えても、関心を持たない人がほとんどだった。だが各地で保育事故や不適切保育が相次ぎ、配置基準を改善すべきだとの意識が広がったと感じる。

 もっとも分科会では「4~5歳児15人に保育士1人」とさらなる改善を求める意見もあった。平松さんも「国はこれで十分と思わず、配置基準改善を進めてほしい」と望む。

だが…期限が未定なら骨抜きの懸念も 

 一方、新基準が骨抜きになる懸念もある。旧基準でも構わない「経過措置」の期限は未定だからだ。

 新基準でも保育士を増やした分の財政的な手当てが自治体により不十分な可能性もあり、約60の認可施設を展開する事業者代表は「利益追求型の事業者は、今後も最少人数しか配置しないだろう。期限を決めないと、実効性が乏しいのでは」と指摘した。

関連記事保育士の配置基準76年ぶり見直し、それでも「まったく足りない」現行の2倍を求める政策提言(12月14日)

保育士の配置基準

 保育士1人で受け持てる園児数で、1948年に国が定めた。1998年に0歳児「6人」を「3人」に改善してから変わっていない。現在は1・2歳児6人、3歳児20人、4・5歳児30人となっている。保育所に支給される人件費に、この基準が反映される。

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  • ママ保育士 says:

    子育てしながらパートで保育士をしています。
    乳児も配置基準改善!!

    昨年度から2歳児18名担任してますが、
    集団に入れない子どもも数名おり
    危険な場面が多々ありました。
    危険な行動や他の子へ手が出たりして
    ケガが事故が起きないかずっと緊張感が
    あり精神的にも疲弊していました。

    そのような子もいる中、まだ手のかかるりトラブルや噛みつきのある幼い子どもを一部屋に18人詰め込んで安全にケガさせずみろと言うのは無理です。

    園長は集団で動けるようになるのは2歳後半からと言っていましたが、集団で動けない子を18人同時に怪我しないようみろというのは不可能だと思います。

    ましてやイヤイヤ期。子どもは機嫌よく可愛い時ばかりではありません。
    1対1でみても大変なのに。

    そして時給は1000円以下。
    いつも辞めたいと思ってしまいます。

    ママ保育士 女性 30代
  • y says:

    新規開園園で4歳児9人を1年間担任しました。すごくゆったりとひとりひとりに接することができ本来の保育はこうあるべきだと感じました。

    本当に色々な子ども達がいます。それはあたりまえのこと。みんな発達も性格も違うのですから。

    働くお父さんお母さん達が安心して子どもを預けられるように。子ども達がお家の人がそばにいない時間も「今日も楽しかった!」と思えるように。保育士が丁寧に保育でき、自分の仕事に誇りをもてるように。

    保育園こども園は本当に社会にとって大切な場所です。現場の実態は閉鎖的であまり知られていないですが、就学前の子ども達がほとんど利用する場所です。

    いま、保育について検討が必要です。必要なのは気持ちと時間のゆとり。本当にトイレや少しの休暇さえとれない保育生活を何年もしてきたので、ま、そんな仕事よ、と保育士自体感じてしまいそうにもなるのですが、普通におかしな話。

    それなのに、誰でもできる仕事と思うひともいるのが現実。とっても、かわいい子ども達の「ねぇ、先生♡」の声に「今ちょっと無理〜ごめんね〜」といわないでいい保育がしたいという、保育士の思いに寄り添ってほしい。何より子どもの命、笑顔を守りたいから保育士は自分のキャパを超えて仕事をしています。

    今日から新年度。全国の保育士仲間へ、エールを送ります!

    y 女性 40代
  • てぃー says:

    現役保育士です。

    4、5歳児25対1、3歳児15対1に改善されても、まだまだ厳しいのが現状です。発達が緩やかな子どもや、なんらかの困難を抱える子どもが、以前に比べて、本当に増えています。集団生活が難しい子ども達が多く、個々に合わせて丁寧に関わってあげたいけど、保育士が足りず、思い通りにいかない毎日です。今や、子どもだけでなく保護者もたくさんの問題を抱えていて、保護者支援も仕事の一つ。保育士は毎日疲弊してます。

    一歩間違えれば不適切保育。

    子ども達一人ひとりの命、人生の土台を大切にしてあげるためにも、どうかもっと人数配置を増やして欲しい。そして、保育士を確保するためにも給料をもっと上げて欲しい。

    みんなやる気を失っていってしまいます。。

    てぃー 女性 無回答
  • パパ says:

    職員増は必要だが、問題はその職員をどのように確保するかである。全産業で労働人口不足が進み、特に保育、医療、介護は著しい。法律変更しても職員確保できなければ、先に進まない。

    具体策として

    ①保育資格なくても一定の教育、研修受けた者を保育士と同等の人員として認める(介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、看護士など)

    ②無資格でも、国が定めた研修を受講すれば就労できる仕組みを作る

    ③法人の財務諸表公表を法人格とわず全て義務化する(園長、その経営者だけが高収入はあり得たない、法人の収支がブラックボックス化している。透明化して賃金アップ交渉がしやすい土台をつくる)

    など、このサイトを活用して様々な前向きな案を意見交換して、現実的な解決法を国に訴えてはどうか。

    パパ 男性 40代
  • みなみな says:

    0歳児が3人はいいと思いますが、1歳児も3人体制でいいかと思います。

    会議室で保育をするのではないので、是非現場へ来て大変さを見てほしいです。お願いします。

    みなみな 女性 50代

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