世界パラ車いす陸上で金の佐藤友祈選手 3歳長男と強化合宿に参加 「妻が育児してくれるから集中できるという状況を変えたかった」〈みんなでもっと男性育児〉

世界パラ陸上競技選手権で獲得したメダルを刻ちゃん(左)に見せる佐藤友祈選手=岡山市で
子どもといると気持ちがマイルドに
「妻が何かを犠牲にして育児をしているから、パパアスリートはトレーニングに集中できるという、そんな状況を変えたかった」。佐藤選手は、8月下旬に北海道函館市であった強化合宿に刻ちゃんを同伴した理由を話す。
日本パラ陸上競技連盟(大阪)に許可を得て、宿泊地のホテルで刻ちゃんと寝泊まりし、食事などの世話をした。練習中は連盟スタッフに面倒を見てもらったり、現地の託児施設に預けたり。「競技以外の時間で気持ちがマイルドになる。行動の予測がつかない子どもと一緒に過ごすことで、ちょっとしたことでは動じないようにもなった」
大会本番では、100メートル決勝で別の選手が失格となる事態があったが、2着に入れた。「合宿の経験が生きたのかも」と笑う。
21歳ごろの病が原因で車いす生活に。絶望感を抱いていたが、2012年のロンドン・パラリンピックの陸上競技を見て、かっこよさに引かれた。21年の東京パラでは400メートルと1500メートルで優勝。刻ちゃんが生まれたのはその翌年だった。「子どもができたから競技力が落ちたと思われたくない」と練習に打ち込んだ。
お迎えの後は「父親モード」
一方で、子育てをおろそかにするつもりもなかった。「2人の子なのに、パパが育児に『参加する』なんて言葉自体がおかしい」。現在、保育園への送り迎えは会社員の妻麻由子さんと協力して行い、預けている間に練習。お迎えの後は、完全に「父親モード」に切り替えている。
インドから帰国後、刻ちゃんが佐藤選手のメダルを自分のもののように大切にしている姿を見て、決意を新たにした。「次のパラリンピック(28年ロサンゼルス大会)では自分の姿が子どもの記憶にも残る。勝っている姿を鮮明に残したい」
その過程にある来年10月の愛知・名古屋アジアパラ大会でも「会場のセンターポールに日の丸を掲げる」と宣言。そのためにも「妻に育児面で負担をかけないようにしながら、今まで以上の家族関係で競技にも向き合いたい」と見据える。
スポーツ界も男性育児の潮流
民間企業の男性育休取得率が昨年度に40.5%となるなど社会的に進む男性の育児。スポーツ界でもその潮流が生まれつつある。
日本スポーツ振興センター(JSC)は本年度、トップアスリートらを対象に、育児にかかった経費を一部負担する「育児サポート」制度について、男性も対象であることを改めて周知。昨年度まで男性の利用実績はなかったが、本年度は10月中旬までに男性6人が利用申請し、3人が援助を受けた。
JSCの担当者は「子育てをする男性アスリートのためのサポートも基本的な環境整備として必要だと考えている」と話している。
〈みんなでもっと男性育児〉育児に積極的な男性を指す「イクメン」が新語・流行語大賞に選ばれて15年。社会に浸透しつつある男性の育児や育休の現在地を取材します。
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