つるの剛士さん 家事育児は「誰にも評価されず、同じことの繰り返し」 育休で夫婦の信頼関係が築けた〈みんなでもっと男性育児・番外編〉

大野雄一郎 (2025年5月28日付 東京新聞朝刊)
 世の中に浸透しつつある男性の育児や育休。2010年に「イクメン」という言葉が「新語・流行語大賞」のトップテンに入った際、受賞者となった「元祖イクメン」のタレント、つるの剛士さん(50)は、受賞から15年の社会変化をどう見ているのか。5人の子どもを育てている自身の経験と合わせて語ってもらった。
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自身の育児経験について話すつるの剛士さん=名古屋市東区で

育休「ぐちゃぐちゃな家を正したくて」 

 今でこそイクメンという言葉は広く知られていますが、僕が育休を取った2010年当時は、そんな風潮は全くありませんでした。芸能界での取得も珍しく、すごくセンセーショナルに言葉が広まっていったことを覚えています。

 ただ、僕自身はイクメンになりたくて育休を取ったわけではありません。当時は4人目の子どもが生まれるタイミングで、仕事も忙しかった。ぐちゃぐちゃだった家庭を正したい、取らなきゃまずいと思って取っただけなんです。

 2カ月間の育休は最初、新鮮でしたが、途中からつらくなりました。仕事であれば目標に向かって達成感を味わえますが、家の中のことって誰からも評価されないし、同じことの繰り返し。午前5時半に起きて子どもの弁当を作っているのに「ごちそうさま」のひと言もないんです。インスタグラムで弁当の写真を上げて「いいね」を求めるママたちの気持ちがよく分かりましたよ。気付いたら自分も同じことをしていました。

 仕事に復帰後は、家庭にいる時間は減りました。でも、育休を経験してママの理解者になることができたので、心の底から「ありがとう」「お疲れさま」という言葉が出てくるようになったんです。これは、その後の生活を送る上で大きかったですね。

夫婦の仲が良ければ、子どもは育つ

 今は男性の育休取得率もかなり上がりました。良いことだと思います。ただ、数字を上げるという目標にとらわれすぎて、取得が義務的なものになってしまうのではないかという懸念もあります。ママに「家事ができないなら仕事に戻って」と言われてしまっては、せっかくの男性育休の風潮が台無しです。

 子どもの誕生は、家庭の機能が拡張してアップデートされる大切な時期。パパたちには、育休が取りやすくなった今の風潮を利用し、チャンスだと思って、しっかりと家庭の基盤に入っていってほしいなと思います。

 男性の育休は「休み」ではなく「家庭訓練」の時間だと考えます。そこで夫婦の信頼関係をしっかりつくること。僕の持論ですが、夫婦の仲が良ければ、それを見ている子どもはちゃんと育っていきますよ。子どものことは心配するよりも信頼してあげてください。

 育休から復帰した後も、家庭と仕事を両立するのは大変です。僕もそうでした。でも、そんな大変な時期は、子どもがつくってくれた修業の機会だと思って。子どもは大きくなってからも、幸せをたくさん運んできてくれますから。

つるの剛士(つるの・たけし) 

 福岡県出身。2008年にバラエティー番組発のユニット「羞恥心」を結成し、リーダーとして活躍、人気に火がついた。育児にも積極的で、22年には幼稚園教諭2種免許と保育士資格を取得した。31日に「50歳記念ライブ“50th!!”」を東京・日本橋三井ホールで開催。6月25日には自身の家族や子育てについて紹介する著書「つるのの恩返し」(講談社)が出版される。

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