就活生は「男性育休の取りやすさ」に注目 晩婚化が進む一方で…〈みんなでもっと男性育児・上〉

大野雄一郎 (2025年4月3日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
写真 男性の育休取得推進をPRするロジスティード中部のブース

男性の育休取得推進をPRするロジスティード中部のブース=静岡市のツインメッセ静岡で

 3月から本格化した、2026年春に卒業する学生の就職活動。労働人口の減少で就活が売り手市場になる中、学生が就職先を選ぶ際に「男性職員の育児休業取得」に対する姿勢を重視する風潮がじわりと広がっている。企業も就活の現場で育休制度をPRするようになっており、専門家は、働きやすさを示す指標の一つとして浸透していると指摘する。

企業も「パパ育休推進」をPR

 3月上旬に静岡市内で開かれた就職情報会社マイナビ主催の合同就職説明会(合説)。100社ほどが参加した会場を見渡すと、いくつかの企業が、男性育休の推進をPRする張り紙をブース内に掲げていた。

 名古屋市中区の物流会社「ロジスティード中部」は、ブース内に「パパ育休推進」という文言を掲示。同社の2024年度の男性育休取得率は50%(3月中旬時点)で全国平均を上回っており、人事担当者はスライドを使って「社員は産後パパ育休(男性版産休)も積極的に取得しています」などと学生に説明していた。

 こうした情報を学生も注視している。合説に参加した東海大の村瀬佑樹さん(21)は「会場でいろいろな企業が『女性だけでなく男性も育休を取れる』と説明していたことが印象に残った」と振り返り、「今後のことを考えればそういう制度があるのはありがたい」。中央大の前田拓海さん(21)も「制度が整っている企業にはプラスのイメージを持つ」と話した。

男性育休を重視するのは何割?

 学生の意識は数字にも表れている。厚生労働省のイクメンプロジェクトが昨夏に公表した意識調査によると、就活で「企業の育休取得情報を重視する」と答えた若者の割合は69.7%で、男性だけに限っても63.3%と高い数字になった。昨春のマイナビの調査でも、企業選びで「男性の育休取得率」に関心があると答えた学生は72.2%に上った。

 育休関連の情報を学生に積極的に届けようという動きもある。リクルートグループが運営する新卒向け就職情報サイト「リクナビ」では7年前から、企業を探す際に男性育休取得率を条件に加えて検索できるようにした。26年卒向けサイトでも取得率を「10%以上」や「20%以上」と絞って検索することが可能。同社広報によると、個別ページで育休取得率を 記入する企業は年々増えてきているという。

取得率は働きやすさの指標に

 晩婚化・晩産化が進む社会状況で、なぜ学生は男性育休の情報を重視するようになってきているのか。

 同プロジェクトの推進委員会委員でNPO法人ファザーリング・ジャパン副代表理事の徳倉康之さん(45)は「若者がすぐに子どもを望むようになったわけではなく、男性でも育休が取れる会社は働きやすい環境だと類推している」と分析。東日本大震災などをきっかけに、職場中心でなく家族や自分自身を大切にする働き方を望む意識の変化もあったとみている。

 その上で徳倉さんは、男性育休取得率などのデータを「企業の健康診断項目」と表現し、「就活生が見やすい指標の一つになっている」と指摘する。「企業にとって大きなコストをかけずに従業員の満足度を上げ、採用活動にも好影響を及ぼせる取り組み。今後も取得を促す流れが続いていくのではないか」と展望する。

〈みんなでもっと男性育児〉育児に積極的な男性を指す「イクメン」が新語・流行語大賞に選ばれて15年。社会に浸透しつつある男性の育児や育休の現在地を取材します。

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