アレルギー対応のレトルトなどは増えたけれど、外食先探しは大変 「一緒に食事を楽しめる社会に」

佐橋大 (2025年2月3日付 東京新聞朝刊)
 食べ物に含まれる特定の物質に過剰反応し、じんましんや呼吸困難、腹痛などが起きる食物アレルギー。こうした症状がある子どもにも安心して楽しんでもらえる商品の開発が広がる。ただ、食品アレルギーに対応した飲食店は少なく、外食の選択肢が少ないのが悩みだという。
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小麦や卵など8種の特定原材料を使っていないフィナンシェを試食する子どもたち=名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で

学校給食での工夫や商品の開発進む

 名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で1月12日に開かれた「アレルギーっ子のフェア」。13の事業者がアレルギーを起こしやすい原材料を含まない非常食やレトルト食品、菓子を出品した。簡単に食べられるアルファ化米を使ったおこげには、食べ飽きないようにコンソメやカレーなど、さまざまな味つけが用意されている。

 「アレルギーのある子も一緒に食べられる」とうたった商品も並んだ。「いっしょがいいね」のシリーズを展開する石井食品のミートボールや、永谷園の「エー・ラベル」ブランドのふりかけなど。子どもたちは、ふりかけを見つけて「これ、給食で出た」と声を上げたり、非常食を味見して「おいしい」と笑顔を見せたりした。

 フェアは認定NPO法人のアレルギー支援ネットワーク(名古屋市中村区)が主催。新型コロナの影響で5年ぶりの開催になった会場には、親子ら約400人が足を運んだ。同ネットワークは昨年1月の能登半島地震の際、日本栄養士会や自治体などの要望を受け、アレルギーに配慮したレトルト食品など約2000食を被災地に送った。これらは、食物アレルギーのある子どもの代用食などとして活用された。

 ネットワーク理事長で、北医療生活協同組合あじま診療所(同市北区)所長の坂本龍雄さんは「アレルギー疾患対策基本法が2014年にでき、国、自治体だけでなく社会全体の意識が変わってきている。アレルギーのある子も、ない子と同じようにおいしく食べられるよう、学校給食の調理面の工夫や商品の開発が進んでいる」と語る。

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2525スイーツで提供している「米粉フィナンシェ・デセール イチゴのショートケーキ」(阪下さん提供)

外食先や総菜で対応する店が少ない

 ただ、アレルギーを起こす8種類の特定原材料(卵、牛乳、小麦、エビ、カニ、そば、落花生、クルミ)を表示することが義務付けられているのは容器包装された加工食品に限られる。飲食店で提供される食事や対面販売の総菜などは対象外。アレルギーのある人が誤って口にすることを防ぐ取り組みが、十分に広がっているとは言い難い。対策に必要な手間と費用が大きいためだという。

 フェアで「米粉フィナンシェ」を販売していた同市東区の阪下大さん(48)の小学6年の娘も鶏卵アレルギー。以前は小麦と牛乳も口にできず、これまで外食先探しに苦労してきたという。「アレルギー対応の店自体少ないし、対応していても食べられる品数が少ない」

 娘のような子どもでも楽しめる菓子やカフェの選択肢を増やそうと、阪下さんは勤めていた会社を辞め、昨年3月、市内にカフェを兼ねた店舗「2525スイーツ」を開いた。通信販売もする米粉フィナンシェは、8種の特定原材料を一切持ち込まない専用キッチンで作る。

 おしゃれな雰囲気の店では、フィナンシェをスポンジ代わりにし、豆乳のクリームを使ったケーキも提供する。誕生日に来店した小学生は、これまで食べられなかったケーキの味に感激し、涙を流したという。もらい泣きした阪下さんは「アレルギーのある子も、もっと食事を楽しめる社会になれば」と願う。

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