東映アニメーション初のアカデミー賞ノミネート「あめだま」はこうして生まれた 韓国絵本の映像化 想定外の大躍進「子どもが楽しめることが最優先」

「あめだま」から ⓒBeak Heena、Toei Animation
88作品中の5作品に 驚きすぎて記憶が…
手がけたのはテレビアニメ「ふたりはプリキュア」シリーズを生んだ東映アニメーションの西尾大介監督(65)と鷲尾天(たかし)プロデューサー(59)。同社の作品がアカデミーにノミネートされるのは初めて。昨年1年間、国内外のさまざまな映画祭に参加し、6つの映画祭で賞を取ったが、アカデミーは想定外だったようだ。

映画「あめだま」について話す鷲尾天プロデューサー
鷲尾さんが振り返る。「いくつか賞をいただいた中の『ニューヨーク国際子ども映画祭』がアカデミーのエントリー資格をもらえる賞だったんです。せっかくだからとエントリーしたら88作品の中から15作品に選ばれて、え、どういうこと?ってびっくりしました。最終選抜5作品の発表はメインスタッフみんなと生配信で見ていて、(英題の)『マジック・キャ…』まで聞いた後の記憶がないんです。それほど驚いた」
みんなが「これは自分」と思える主人公
「ドラゴンボールZ」など東映作品は世界中で知られているが、作った会社の名前はそれほど浸透していない。映画祭で評価される作品を作れば、会社のブランド力がアップする。それが商業的には成功が難しい短編アニメに挑む意義だというが、これは少々後付けの理由。「遠回しな理屈ですが、通ってしまった」と鷲尾さんは笑う。要は、この絵本を何としても映像化したかったのだ。
「日常の小さな変化が主人公に大きな変化をもたらすファンタジーが大好きなんです。ビジネスには結び付かないだろうけど、映像にできたらいいな…と。小さな一歩を踏み出す勇気がないドンドンは、みんなが『あ、これは自分だ』と思える主人公」と鷲尾さんは原作の魅力を語る。
西尾監督とは、ページをめくる間や、ページの中で何が起きているのかまで想像して作っていこうと話し合ったという。韓国の小学生の部屋、いたずらで机に張ったシール、連絡帳、教科書、食卓に並ぶ晩ご飯などを現地で徹底取材し、「ドンドンの日常」をリアルに描き出した。

映画のポスターと鷲尾天プロデューサー
ノミネートを受け2週間限定で劇場公開
賞狙いの短編は芸術的で大人向けの作品が多いが、「あめだま」は子供のために作られた。鷲尾さんは「子どもが楽しめることが常に私の最優先事項。入社試験でも『子どもたちの記憶に残る作品を作りたい』と言った。子どもの時に見たものは一生忘れないから」と言い切る。そして「感情が豊かに表現されていれば、『子ども向け』と『アーティスティックなもの』に差はないかもしれないと改めて感じました」。
授賞式は日本時間3月3日。受賞の有無にかかわらず、願いは一つ。「多くの人に見てもらいたい」。ノミネートを受けて、28日からT・ジョイSEIBU大泉(東京都練馬区)など19館で2週間限定公開される。
原作の絵本の記事はこちら

映画の原作「あめだま」とともに映画の原作となったペク・ヒナさんの絵本「ぼくは犬や」(ブロンズ新社)
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