エロ広告 成人男性からも「本当に規制して」の声 署名は10万筆に こども家庭庁は夏に議論を取りまとめへ

福岡範行 (2025年5月7日付 東京新聞朝刊)
 インターネット上の性的な「エロ広告」(アダルト広告)の対策へ、市民の声を後押しにして議論が本格化している。4月には政府の検討会で議題となり、ネット広告の業界団体に10万筆のオンライン署名が出された。野放しだった現状が変わりつつある。
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日本インタラクティブ広告協会に署名と要望書の提出に向かう香川きょうさん(左)ら=東京都中央区で

保護者ら有志が国へ働き掛け

 署名は、小学生ら3人を育てる30代の母親、香川きょうさん(仮名)が昨年9月に募集を開始。「無差別に表示される性的な広告」の対策への賛同を募ってきた。今は有志の男女10人で情報収集や広告業界、国への働き掛けをしている。

 実際に目にした事例も記録する。ディズニーアニメのヒロイン名と「かわいい」の検索で出てきた豆知識の紹介ページでは、制服姿の女子が描かれた漫画の広告があった。もうろうとし、同意なく性行為を受けているような描写だった。「こちら特報部」が5月に確認したときも表示された。

 香川さんらが求めるのは、性的な漫画やゲーム自体の規制ではなく、ネット上での「ゾーニング(すみ分け)」だ。18歳未満禁止のビデオが専用区画で取り扱われるのと同じようにし、「露骨に性的な広告」を子どもらが見てしまう環境を改善したいと考えている。

 署名には400超のコメントも書き込まれた。「性加害漫画の広告、本当にやめてほしい」「自分は成人男性だけど、本当に規制してほしい」などだ。

 香川さんらは業界団体「日本インタラクティブ広告協会(JIAA)」が既に性的な広告の自制を促すガイドラインを持ち、不適切な広告の事例集でも例示していることに着目。4月16日にJIAAに署名と要望書を提出し、事例集の普及啓発などを求めた。

 こども家庭庁などが同月24日に開いたネット利用の青少年保護の検討会でも議論すべき課題の一つに「アダルト広告」が位置付けられた。委員から国レベルの指針作成や、対策する事業者を評価する仕組みづくりの意見もあった。他の課題とともに議論を重ね、今夏の取りまとめを目指す。

英国では「性的虐待になる」

 ネット広告に詳しい関東学院大の天野恵美子教授(マーケティング)は、性的な広告について「ネット利用者に問題だと認識されていたのに長らく放置されていた。10万筆の署名が小さな声を大きな声に紡ぎ上げ、動きのきっかけになった」とみる。

 ネット広告は参入しやすく、JIAAに加入しない業者が過剰な性表現に走るリスクもある。天野さんは「広告そのものの信用が下げられる現状がある」とし、広告を非表示にする「ブロッカー」によって健全な広告も見られなくなる恐れを指摘。まずは業界団体などが自主規制し、国や消費者が対応ぶりを見守る状況をつくることが「問題解決の第一歩」との考えを示し、「広告の表現の自由を守るためにも、自らのガイドラインを守りながら活動する必要がある」と述べた。

 企業に広告倫理などで助言する英国在住の中村ホールデン梨華さんは、日本の議論の課題として「何がエロ広告なのかがあいまいになっている」と指摘する。

 改善の参考として、英国の広告自主規制を担う「広告基準協議会」(ASA)の取り組みを挙げる。性的な広告が子どもの考え方に影響するという研究を基に「未成年に見せると性的虐待になる」との認識に立ち、表現に関わるルールを定め、広告関係者や弁護士、学者が個別の広告表現を協議。屋外広告なら場所が小学校近くかなど背景も踏まえて問題があるかを判断する。判断理由も公表する。

 中村さんは「日本でもASAのような議論ができるようになれば、どれをゾーニングするか判断が可能になると思う」と述べた。

元記事:東京新聞デジタル 2025年5月7日

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