木工イベントや木の滑り台も 広がる「木育」の世界 木のおもちゃは子どもの想像力を膨らませる

木製の滑り台で遊ぶ子ども=東京都品川区の「IKUMOやしお」で(池田まみ撮影)
当日整理券がなくなるほどの人気
「木のおもちゃに触れる機会がない。楽しかった」。8月23日、千葉市役所の本庁舎で開かれた木育イベント。参加者からは、こんな感想が聞かれた。
子ども(幼児-小学生)と保護者約460人が、スギ材でペン立てを作ったり、木材を組んでできたジャングルジムに登ったり。10以上の催しがあり、体験ブースを回って木の感触や匂いを楽しんだ。夏休みということもあり、事前申し込みのブースは早々に定員に達し、当日の整理券もなくなった。
イベントは、企業や団体でつくる千葉市地球温暖化対策地域協議会が開催。木育活動を推進する多くの団体や千葉大学の学生らが講師を務めるなど協力した。2022年度から毎年夏に開かれ、事務局の千葉市の担当者は「森林の大切さを知ってほしい」と継続に意欲を見せる。
一方、東京都品川区は今年5月、同区八潮に子育て支援施設をオープンした。区が木育に特化した子育て支援施設を設けるのは初めて。愛称は「IKUMOやしお」という。育児の「イク」と木育の「モ」を組み合わせた。
施設の床や棚に東京・多摩地域や区が協定を結ぶ高知県産の木材を使用。木製の滑り台やおもちゃがあり、木登りやボルダリングもできる。母親が木のおもちゃで子どもをあやしながら他の母親と談笑し、父親が子どもを滑り台で遊ばせる。ある母親は「木製なので気持ちが和らぎます」と目を細める。
乳幼児とその保護者を中心に1日当たり約200人の利用がある。区の担当者は「多くの方に来ていただいてうれしいです。木のぬくもりが感じられ、居心地が良いのではないでしょうか」と話し、SNSで評判が広がったとみている。
転がる動物など別のものをイメージ
木育は2004年度、北海道庁などによるプロジェクトが提唱。子どもの頃から木に触れ、木や森について考える心を育てるのが狙い。自治体や木材関連団体、NPO法人、企業等が木材に触れる催しを開くなど、活動が盛んだ。

木のおもちゃで遊ぶ子ども=東京都品川区の「IKUMOやしお」で
埼玉大学教育学部の浅田茂裕教授(木質科学)は「木育イベントは増え、実施主体や内容が多様化している」と話す。背景には、木材利用の促進や普及啓発を目的に国から案分される森林環境譲与税(19年度創設)を使って自治体がイベントを開くケースや指導者の増加、また、木の文化継承に積極的な「東京おもちゃ美術館」(新宿区)の姉妹館が国内に増えて、木育という言葉に触れる機会が多くなったことを挙げる。
木は材質上、細かい加工がしづらい。おもちゃにしても、プラスチック製品のように実物さながらの精巧なものは作りにくい。浅田さんは「だから子どもは、木のクルマのおもちゃで遊んでいて、その漠然とした丸みを帯びた形状から、転がる動物など別のものをイメージするかもしれません。木のおもちゃは、子どもに想像力の発揮を求めるのです」と話し、成長にプラスの面があるとみている。
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