希少難病児の家庭でかさむ出費 医療費に加え治療用食品、機器… 支援団体が寄付を募っています
低タンパク質ご飯 月4万円近い出費
横浜市の女性(44)は、国の指定難病フェニルケトン尿症を患う3人の息子を育てる。フェニルアラニンというアミノ酸を取りすぎないようにする食事療法が必要で、タンパク質の摂取を抑えるため、肉や魚、乳製品などはほとんど食べられない。米などの主食はタンパク質を抑えた治療用の食品を使うなど気を配る点が多く、女性は「食費はどうしてもかかる」と話す。
特に負担が大きいのは、1日に3人で5パック消費する低タンパク質のご飯。副菜はポテトサラダや肉を使わないコロッケなど野菜中心で、ご飯は多めに食べる必要がある。一般的な品に比べて高価で、月に4万円近い出費になる。低タンパク質の主食としては、ご飯に比べて割高なスパゲティやうどんなどもある。
横浜市では、昨年8月に全ての中学生以下の医療費が無料になった。医薬品に分類される他のアミノ酸を補う特殊なミルクの代金など年間10万円近い出費が減った。一方、女性と夫が食べる料理と毎食2パターンを用意する必要があり、うまみを出すためにベーコンなどを野菜と一緒に炒めた上で、子どもたちの分からはベーコンを取り出すなどの工夫もしているが、食事面での金銭的負担は避けられないという。
子の付き添いで仕事を減らし収入減
下の子どもは4歳の双子で、知的障害があり週に2回療育センターに通う。女性は、かつて派遣社員として週5日働いていたが、付き添いのため週3日に減らし、収入が大幅に減った。夫婦共働きだが「自分で何とか収入を増やそうとしても、どうにもできなくなってしまった」と明かす。
東京都内に住む脊髄性筋萎縮症の男児(11)の父親(58)は、日常生活を送るために「医療制度やさまざまな補助だけでは賄いきれない部分がある」という。運動神経に変化が起こる病気で、男児は「わずかに指が動かせる程度」で、移動には電動車いすを使い、食事は胃ろう。例えば「たんが絡むと命に関わる」ため、常に使う人工呼吸器に接続する加温加湿器の利用は欠かせない。
2年未満でバッテリー交換、8万円
外出時に機器を動かすためのバッテリーはキャンプ用で、安くても8万円程度の品を2年未満の周期で買い替える。自力では飲み込めない唾液を吸うチューブや車いすのタイヤ、調理に必須なフードプロセッサーなど、日常生活に必要で頻繁に交換する品が多く、「積み上がると結構な額になる」。自宅に入るために必要な階段昇降機が耐用年数を迎えるなど、大きな出費も控えている。
意思疎通はタブレット端末「iPad」などの機器と手元のスイッチなどで行い、小学校では補助を受けて通常学級で学ぶ。父親は「病気の部分を別にして、普通の人と変わらない生活を送らせたい。節約をしつつ、生活の質を向上させるための機器などを含めて必要なものをそろえたい」と話す。
基金「エンジェルスマイル」 緊急の追加支援のため、寄付を
希少難病の子どもや家族を支援する一般財団法人健やか親子支援協会(東京都)専務理事の川口耕一さん(66)は「難病患者がいる家庭は、差額ベッド代や遠方の専門医への交通費など、医療費以外にもどうしてもお金がかかる」と説明する。ひとり親で収入の限られる家庭も多く、「交通費がなく治療に行けない」といった声も寄せられるという。
協会では「すぐに支援しなければ困る家庭が多い」と判断し、寄付を募って難病患児ファミリーに給付する「エンジェルスマイル・プログラム」を2022年に開始。2回目の昨年は、36人の家庭に10万円ずつを支援した。
難病患者の所在などは行政でも把握していないケースが多い。プログラムでは、患者会や家族の会などを通して希望を受け付けた。昨年の第2期の支援後も、「冬を越せるか分からない」といった声が多く寄せられ、緊急の追加支援のため、3月末まで寄付を募っている。
希少難病は患者数自体が少ないこともあり、生活上の困窮が知られていない面もある。フェニルケトン尿症の3兄弟を育てる横浜市の女性は、協会の資料を見て「自分たちと同じように、大変な症状の病気で困っている家庭がたくさんあることを知り驚いた」。長男を小児がんで亡くした女性は「看病している間は、これがいつまで続くのかという葛藤もあった。支援が、少しでも多くの家庭の力になれば」と協力を期待する。
寄付は、みずほ銀行新宿南口支店の「普通預金2085000」、口座名義は「ザイ)スコヤカオヤコシエンキョウカイ」で受け付けている。
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