医療的ケア児の保護者 4人に1人が校内付き添いで休退職 学校に看護師がいても求められ「きつかった」
やることもないまま別室で待機
「なぜやることもないまま学校の別室にいるのか。ストレスが重なり最後は自分が体調を崩し、息子も通学できなかった」。東京都葛飾区のデザイナー秋山仁美さん(41)は、人工呼吸器を着けた小学3年の長男真(まこと)さん(9)が1年の時、校内で付き添った1年間をこう振り返る。
学校には複数の看護師がいて、入学後、6月までに痰吸引や胃ろうなどのケアの引き継ぎを教室で終えた。その後は下校までの6~8時間を別室で待機。だが、看護師や先生に呼ばれることはなく、付き添う理由を聞いても「会議で決まったから」。仕事の受注も絞った。「私は家族の協力もあり何とか付き添えたが、できなければ通学を断念するしかない。先生や友人と関わって成長する機会が奪われてしまう」と訴える。
調査は支援法施行後の状況などを調べるため昨年12月~今年1月、都内在住の障害児・医療的ケア児の保護者を対象に実施、63人の回答をまとめた。子どもは約9割が小学生で、全体の約9割が特別支援学校へ通学。約7割の子に医療的ケアが必要だった。
仕事との両立・身体的負担で苦労
調査結果では、就労していた保護者の7.3%が校内付き添いのため退職、17.1%が休職していた。困り事や苦労を複数回答で聞くと、仕事との両立と、ずっと付き添うことによる身体的負担がそれぞれ64.7%だった。
自由記述では「休職して付き添った期間は完全無給で経済的にかなりきつかった」「子どもの隣に机を置いて仕事をした。ここまでして学校へ行く意味が分からなくなり、精神的に崩れて私のせいで通学できない期間があった」「居住地で付き添いの現状が違いすぎる。学校ガチャ、自治体ガチャだ」とする人も。
登下校時も含めた付き添い経験がある保護者は90.5%。だが、23年度の文部科学省の調査では、特別支援学校小学部で「付き添いなし」の医療的ケア児は35.3%だった。この調査は年度初めから夏休みまでの「日常的」付き添いが対象で、必要性が高くなる入学や退院直後の引き継ぎを含まない。一方、フローレンスの調査は単年度ではなく、これまでの付き添い経験の有無を尋ねていることも、数値の差を生んだとみられる。
「経済的に支える制度が必要」
フローレンスによると、校内付き添いの約7割は、学校に看護師や介助員がいるのに求められていた。担当者は「保護者の心身の負担は大きい。家庭に来る訪問看護師に校内付き添いも自費で頼む保護者もいて、経済的に支える制度が必要だ」と指摘する。
校内付き添いなどの調査をした経験がある病弱児教育が専門の横浜国立大理事・副学長の泉真由子教授(51)は「保護者が安心して預けられるケアの質を保障するため、国や自治体が学校看護師配置を支援する施策が重要。障害の重い子は集中的な配慮や支援が必要だという、社会の理解も大切だ」と話している。
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