中谷一馬衆議院議員(後編)出産・子育てしやすい社会のために〈ママパパ議連 本音で話しちゃう!〉

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自身の子育てについて話す中谷一馬衆院議員=東京・永田町の衆院第1議員会館で(浅井慶撮影)

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常に全身全霊100%でなくても良い

 前編に続き、今回のリレーコラムを担当する衆院議員の中谷一馬です。

 「今の中谷さん(私)が、子どもが生まれる前の自分にアドバイスをするとしたら何を伝えたいですか」という浅野哲さんからの二つ目のご質問に対しては、当時の自分に「常に全身全霊の100%でなくても良い」ということを伝えたいと思います。

 何事も無理をすると持続せず、願望を追求し過ぎると柔軟性がなくなると感じることがあります。

 子どもが生まれる前の自分は、俗に言う「ワーカホリック(仕事中毒)」で、議員という重責にやり甲斐を感じ、その責任に対して、できる限り完璧な結果を出そうと注力し、その成果を喜んでもらえることが何よりもうれしい。まさに仕事が趣味といった状態で、1年350日くらいは仕事をしていました。これは私が特別というよりも国会議員の多くは同じような状況ではないかと推察しますが、それだけ与えられている職責が重いということだと思います。

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長女に離乳食をあげる

 しかし、子どもが生まれたことをきっかけに、私自身と仲間たちのワークライフバランスを共に見直し、新たな時代に合った議員及び議員事務所のあり方を体現したいと考えるようになりました。

 2019年5月に第1子が生まれた時に育休を取得しました。立憲民主党の青年局長を務めていましたので、「隗(かい)より始めよ」で青年局の仲間たちと共に議員が育休を取得し、社会にその賛否を問うことは議論の活性化に繋がると考えました。

 ただ当時の党内では、「男性議員が育休を取得するなんて国民の理解を得られないのではないか」という論調が主流で、理解を得るのに丁寧な説明を行う必要がありました。最後は、こうした若手の動きに対して理解を示し、応援しようとしてくれていた幹事長(当時)の福山哲郎さんが「青年局が進めたいと言っているのだから信頼して任せよう」と呼びかけ、背中を押してくれました。理解のある上司に恵まれたことが私たち若手にとっては幸いでした。

 育休期間には、「家事育児は分担ではなく共有だ」ということを認識できました。また夫婦で子どもについて話す時間が増えたことで、さらに仲が良くなったように思います。まさに、わが家では「子はかすがい」でした。

 また弊事務所には、夫婦共働きで小さな子どもを育てているスタッフや、家族の介護を行っているスタッフが多数おりますので、仲間たちの働き方改革も同時に進めました。出産・育児・介護・看護などに関する休業・休暇制度を拡充し、リモートワークにも柔軟に対応できるようにしました。

 「私たちが若いころは、働きながら子育てもちゃんとやったのに」という思いを抱く上の世代の方もいらっしゃると思います。しかしながら、2020年代に子育てをする世代と、例えば2000年代、1980年代に子育てをした世代では時代背景が違いますし、悩みも違います。2世帯以上での同居は減り、子どもの世話をしてくれる親戚や家族が近くにいない方も多くいます。

 何よりも、「自分たちが苦労したから後世も苦労しなさい」では、いつまでたっても世の中が良くなりません。「自分たちが苦労したからこそ後世には苦労させないように、自分たちの世代で改善しよう」という試みこそが、時代をより良く繋ぐことに通じると考えています。こうした観点で現状を見据えた上で、未来に向けた政策提案と実践を続けていきます。

国からの子育て支援を増やしたい

 私は自分自身が母子世帯の貧困家庭で育った体験から、世の中の貧困と暴力を根絶し、平和で豊かな社会がいつまでも続く世の中を目指したいと考えています。

 本来はこうした社会があたりまえであるべきですが、現実は厳しい状態です。

 現在の日本は出産・子育て・教育といった若者向けの社会支出が欧州諸国と比較して低水準です。子どもの7人に1人が貧困状態。学校の上履きを買えない子どもたちが、給食でしか栄養が取れないような子どもたちがいます。都市部に住んでいると理解しにくいかもしれませんが、例えば沖縄県では、3人に1人が貧困状態です。これは昭和の時代のドラマの話ではありません。平成から令和へと変わった現在もなお目の前で起こっている現実として、私たちがそのことを理解できているのか、という問題です。

 子どもは自分の努力だけでは、貧困から抜け出すことはできません。私自身もそのことを痛感しながら成長しました。子どもにできることは非常に限られていますので、自分の努力だけでは乗り越えられない壁を突破する力は、社会が補わなければなりません。これは、その子どもの将来にとってももちろん必要なことですが、巡り巡って、日本の将来にも関わってくる大きな問題です。子どもの貧困を放置すると総額で約40兆円の社会的損失が出るという推計があり、未来を担う子どもたちへの支援の拡充は、社会的にも、経済的にも必要不可欠です。

 出産・子育ての負担を軽減し、希望する人が安心して子どもを産むことができ、社会全体で子どもを育てやすい仕組みを整備することで、少子化問題を改善し、未来への展望を開く。自分が衆議院議員としての任期中にやり遂げたい政策です。

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中川西小学校で開催された「ワイワイまつり」で

 日本では、子育てを支援するために国から支出される現金給付及び現物給付といった、いわゆる「家族関係社会支出」については、フランス・イギリス・スウェーデンなどの欧州諸国と比べて低水準ですので、私は家族関係社会支出を国内総生産(GDP)比で3%程度(約15兆円)まで増やす必要があると考えています。

 また、家族関係社会支出が増えれば出生率が上昇するという正の相関があり、今後、少子化対策に本腰を入れるのであれば、家族関係社会支出を増やし、特に女性の子育て負担を軽減する施策を講じることが重要です。

 経済協力開発機構(OECD)加盟諸国のデータをみると、概ね女性の労働力率が高い国は出生率も高く、逆に女性の労働力率が低い国は少子化に苦しんでいる現状があります。また夫の家事・育児参加時間が長い家庭ほど妻の就業継続率が高く、2人目以降の子どもを持つ確率も高い状況です。

 日本も持続可能な社会づくりを考えるのであれば、将来への投資、子ども・若者への投資を行わなくてはなりません。

子育て世代の議会参画を目指して

 では、どうすればこうした政策が実現できるのでしょうか。

 私は、議会は社会の縮図であるべきであると考えていますので、子育て世代の当事者が代表として議会にもっと参画することができれば、法律・制度と年間100兆円の予算配分を未来に繋げやすくなると考えています。

 現在、2023年1月時点の国会議員の中で、40代の衆議院議員数は106人(22.9%)、参議院議員数は56人(22.6%)。30代の衆議院議員数は16人(3.5%)、参議院議員数は6人(2.4%)、20代の国会議員は0人(0%)で1人もいません。ジェンダーギャップ(男女格差)と同様、もしくはもっと深刻であるのが、ジェネレーションギャップ(世代間格差)です。未来を創る若者たちがもっと政治の現場に携わりやすくなるように被選挙権年齢や供託金の引き下げなどの環境整備を進めていく必要があります。

 また、政治参加に必要な素養を育むシティズンシップ教育を拡充し、政治情報や知識を活用する能力「ポリティカルリテラシー」の向上を図ることも重要な視点です。

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最近は、パパの本がお気に入りで抱いて寝てくれています

 よく小学生が国会へ見学に来てくれていますが、実は本会議の傍聴には10歳以上という年齢制限があります。2022年11月に私が本会議に登壇した時に、幼い娘たちの傍聴には制限があるということを知りました。調べて見ると、衆議院議院運営委員会の理事会での許可が得られれば10歳未満でも傍聴できることがわかり、各党の理事への相談などを経た上で傍聴の許可を頂きました。父親の本会議での演説を聞いた3歳の娘は、家に帰ってからもしきりに国会での話をしていましたので、子どもにとっては大変貴重な経験になったのだと思います。これは一例ですが、一般社会ではあたりまえだと思われていることでも、永田町や霞が関ではまだまだ進んでいないことがあるように感じています。将来の後輩たちが戸惑わなくて済むように、先輩・同僚の力を借りながらこうした改善を一歩ずつ積み重ねていきたいと思います。

 最後に、リレーのバトンを繋ぎたいと思います。

 1983年生まれの同級生でいつも親しくしている音喜多駿さんに質問です。

 夫婦で議員を務めながら3人の子どもを育てるというのは並大抵のことではないと思いますが、SNSを見ていると公務・党務・政務に多忙を極めながらも、家事育児をしっかり行われているという印象があります。どうやって時間を捻出して仕事とプライベートの両立をしているのか、教えてください。また、家族の仲がとても良さそうに見えるので、家庭円満の秘訣などがあれば是非教えてください。

中谷一馬(なかたに・かずま)

 神奈川7区、当選2回、立憲民主党。1983年8月生まれ、神奈川県川崎市出身。母子世帯の貧困家庭で育ち、中学卒業後に社会へ。その後、IT企業gumiの執行役員、菅直人元首相の秘書、神奈川県議会議員などを務め、2017年10月の衆院選で初当選。在任中にデジタルハリウッド大学大学院に進学・修了。現在は、党デジタル政策PT座長を務め、DXを推進する。趣味はラーメンの食べ歩き。おすすめの絵本は「ずーっとずっとだいすきだよ」(ハンス・ウィルヘルム)、おすすめスポットは「どろっぷ」(横浜市港北区)と「ファンタジーキッズリゾート港北」(同市都筑区)。

(担当:政治部・坂田奈央)

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