巣鴨にシングルマザーや単身女性のシェアハウス 管理人もひとり親の女性「1人で子育てはできない」

(2020年4月20日付 東京新聞朝刊)
 シングルマザーや単身女性が暮らすシェアハウス「NICORI HOUSE(ニコリハウス)」で、昨年8月から管理人を務める東京都豊島区の野上有香さん(34)。「1人で子育てはできません。サポートし合ってこそ、自立もできる」。自身もひとり親で、長男(10)、長女(7つ)、次女(4つ)を育て、地域の人や入居者ら「大家族」に支えられてきた。
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シングルマザー向けのシェアハウスを立ち上げた野上有香さん

一度は専業主婦になったけれど…

 3月下旬、女性が赤ちゃんを抱っこして引っ越してきた。別の入居者と2人を囲み「かわいいね」「寒かったね」と声を掛けた。女性が荷物を運ぶ間、赤ちゃんを抱っこした野上さん。その横で、ハウス最年少だった次女が赤ちゃんの顔をのぞき込み「抱っこしたい」と、お姉さんっぽく笑った。

 青森県弘前市出身。19歳で上京し、アパレル関係の仕事に打ち込んだ。結婚を機に故郷へ戻り、ほぼ専業の主婦に。しかし、以前のように働きたいという思いが押し寄せた。夫と歯車が合わず、2017年に離婚した。再び上京し、シングルマザー向けのシェアハウスで暮らした後、子どもたちと別のアパートに転居した。

多様な大人に囲まれ、子どもの成長実感

 生活は大変だった。職場から帰宅するのは午後8時ごろ。子どもたちだけで過ごすことに心配が募った。孤立し、ストレスから、子どもを傷つける言葉を言ってしまうこともあった。以前のシェアハウスでは、子どもたちと過ごす住人たちの存在に救われていた。「子どもとゆっくりできる時間がほしい。シェアハウスを作りたい」

 そんなころ、縁あって知人から、シェアハウスの管理人に、と声がかかった。ニコリハウスで暮らすようになり、子どもたちは、住人たちから絵を教わったり、食事を一緒に作ったり。多様な大人から、ほめられ、しかられて、ぐんと成長していくのを感じてきた。

「頼れるものはどんどん頼って」

 住人にも変化があった。素の自分を出せずにいた女性は、家庭に居場所がなく、福祉施設で暮らした経験があった。住人同士で食事し、仲を深めるうちに、彼女は「楽しい」と言うように。ハウスを心の基盤ととらえ、退去後の現在はやりたい仕事に就き、自分の道を歩んでいる。

 大変なときはハウスのみならず、地域の子育て団体などにも遠慮せずに頼るという野上さん。「助けてって言えないママは多いと思う。頼れるものはどんどん頼っていい」 

NICORI HOUSE(ニコリハウス)

 東京都豊島区・巣鴨にある。3階建ての一軒家。現在、シングルマザー世帯と単身女性の8世帯が入居する。「ニッコリ笑う家」の思いを込め、野上さんの子どもたちが名付けた。ハウス専用のイラストを手掛けたのは、絵本作家ののぶみさん。玄関先には野菜や花を植えた三角形の畑があり、窓からは近くを走る都電荒川線が見える。空室情報などはフェイスブックページで。

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