【年収の壁】最近話題の103万円の壁って? 壁の引き上げで手取りはいくら増える?

チェック!子育て家計術
【第12回】政府が22日に閣議決定した経済対策に、国民民主党が主張していた、いわゆる「年収の壁」の引き上げが明記されました。「壁」を気にしながら働いている子育て世帯は少なくありません。複数ある「壁」のうち、話題となっている「103万円の壁」について紹介します。

負担が生じるボーダーラインのこと

 「年収の壁」は、年収が一定額を超えた場合に、本人や扶養者に税金や社会保険料が生じるボーダーラインのことです。

 税金の場合は、年収からさまざまな「控除」を差し引いた後の課税所得に税率をかけて計算します。「103万円」は、すべての納税者が受けられる「基礎控除」(48万円)と、会社員の経費である「給与所得控除」(最低額55万円)の合計額。これを超えると、働いた本人に所得税が発生することになります。

 ファイナンシャルプランナーの八木陽子さんは「子育て世帯で関係するのは、主にパートで働いている人でしょうか」と指摘します。

 夫婦の場合、配偶者の勤務先企業が、年収103万円以下の配偶者がいる場合に手当を出している場合も少なくなく、パートで働く人たちが「働き控え」をする要因と指摘されてきました。

 子育て世代は自宅での教室など『おうち起業』をしている個人事業主の人も少なくありませんが、その場合、103万円の壁は関係ありません。個人事業主やフリーランスの方は、収入から経費を差し引いた所得が48万円を超えると、所得税がかかります。

手取り増加や人手不足の解消を期待

 「103万円の壁」が設定されたのは1995年。今日までの間に、最低賃金は1.73倍となった一方で「壁」の金額は据え置かれ、国民民主党は賃金や物価の上昇に合わせて課税ラインも見直すべきだと主張しています。基礎控除を引き上げることで、103万円に1.73を乗じた「178万円」まで、課税ラインである「壁」を引き上げるべきだとしています。

 メリットとして、所得税を払っている人は、納税額が減り、手取りが増えます。国民民主党の試算では、年収200万円の人は、支払う所得税と住民税の合計が9万1000円から5000円に減るので、8万6000円の手取り増です。年収500万円だと、手取り増は13万2000円になります。

 さらに、「働き控え」が減り、企業の人手不足解消にもつながるとも期待されています。

表 国民民主党の試算

130万円の壁を気にする人の方が多い

 一方で、課題もあります。政府試算によると、178万円に引き上げた場合、年間税収は国と地方で計7兆~8兆円ほど減少するとされています。このうち地方自治体の自主財源となる個人住民税は4兆円ほど減るとみられ、住民サービスの低下や財政破綻を招くとの懸念も出ています。

 年収が高い人ほど、減税額が大きくなることも指摘されています。引き上げられた基礎控除の額は同じでも、高い所得税率(最大45%)で納税している高所得者ほど納税額が大きく減るためです。「高所得者の方が恩恵が大きい」との声に、国民民主党は、従来の納税額に対する減税額の割合にあたる減税「率」で比べると「低所得者の方が大きい」と反論しています。

 八木さんは「最近は配偶者手当を廃止する企業が増え、103万円の壁を気にして働いている人はそれほど多くないように思います。同じ壁でも『130万円』の方が大きいので、130万円の壁をどうするかの議論が必要と感じています」と話しています。

 次回は「130万円」など社会保険料の壁について確認します。

〈チェック!子育て家計術〉 出産、子育て、習い事、教育など子育て家庭の出費は何かとかさむもの。この連載では、国や自治体の支援策や子育て家計に役立つ情報をファイナンシャルプランナーの八木陽子さんとともにチェックします。

監修・八木陽子

写真 八木陽子さん

 東京都在住。1男1女の母。出版社勤務をへて独立。2001年、ファイナンシャルプランナーの資格を取得後、マネー記事の執筆やプロデュース、セミナーなどの仕事をする。2005年、親子でお金と仕事を学ぶ団体キッズ・マネー・ステーションを設立。2008年、家計やキャリアに関する相談業務を行う株式会社イー・カンパニーを設立した。著書に「6歳からのお金入門」(ダイヤモンド社)、「10歳から知っておきたいお金の心得」(えほんの杜)など。

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