盛田昭夫塾館長 盛田直子さん ソニー創業者の父が頼りにした母 時には前に出て人間関係を築いて

飯尾歩

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盛田直子さん(布藤哲夫撮影)

カット・家族のこと話そう

各界で活躍する著名人が家族との思い出深いエピーソードを語るコーナーです

正反対の環境に育った両親

 父についてはよく聞かれるのですが、ソニーの創業者ということで、やはり偉大な父でした。そんな父を陰になり日なたになって支え続けた母の良子も、盛田昭夫に負けず劣らず偉大な母でした。

 三省堂書店の創業者の孫に当たる母は神田の生まれ。明るくて人懐っこくて開けっ広げな、ちゃきちゃきの江戸っ子です。父は愛知県常滑市の庄屋の長男で、15代目の当主として大切に育てられた人。正反対の環境に育ち、自分にないものを持つ母が、世界を相手に戦い、道なき道を切り開くビジネスマンの自分にとってかけがえのない存在だと分かっていたから、いつも深く感謝し、頼りにしていたのは間違いありません。

 とは言え「内助の功」とか、3歩下がって…とかではぜんぜんなくて、むしろ時には父よりも前に出て積極的にコミュニケーションをとりながら、自分自身の人間関係をしっかりと築くことができる母でした。

 そんな2人が1967年、東京の青葉台に建てた自宅には、「大使館」さながらの趣がありました。

「ちらしずし」が結んだ縁

 69~93年、そこで開いたホームパーティーは433回を数え、歴代首相をはじめ、キッシンジャー元米国務長官やマイケル・ジャクソンさんといった内外のVIPを母は全力でもてなしました。

 母の「おもてなしの心」が世界と結んだ「縁」こそが、父の、いいえ、2人の夢を実現させる原動力になったのです。

 5年前、常滑市小鈴谷の盛田本家の前に、「縁」をテーマに、父母の記念の品々や資料を展示する記念館「盛田昭夫塾」をオープンしました。

 入り口横で来館者をお出迎えするのは、愛用の塗りのお重に詰めた、母特製のちらしずしのレプリカです。「ミセスのちらしずしが食べたい」と皆さんにリクエストをいただいた「おもてなしの心」のシンボルなんですよ。

 その隣にはビジネスの七つ道具を詰め込んだ父愛用のアタッシェケース。盛田昭夫の記念館といえば、来館者の皆さんは、まず「ウォークマン」かなんかが飾ってあると思うでしょ。それがいきなり、ちらしずし。「なんだこれは」と、キャプションに目を向けていただけるんじゃないかなと。

 キャプションには、こう書きました。

 <昭夫が夢を実現させるための術を詰め込んだアタッシュケース。良子が客人への想(おも)いを詰め込んだ重箱。2人の人生を育んだ数々の人との『縁』と『信頼』が、この小さな2つの箱から生まれていった>

盛田直子(もりた・なおこ)

 1957年、東京都出身。ソニー創業者の盛田昭夫、良子夫妻の長女。97年「地球環境テニスフォーラム」の開催に当たり、イベントプロデューサーとしてデビユー。2020年から一般財団法人「天涯文化財団」代表理事と「盛田昭夫塾」館長に。塾では今年、没後10年の母・良子さんを年間テーマに、愛用の品々を展示中。

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