コロナ感染恐れて保育士が続々退職 川崎の2保育園が急きょ閉園 園児21人は系列園で受け入れ

安田栄治、大平樹 (2020年4月2日付 東京新聞朝刊)
 神奈川県川崎市内の2つの保育園が、新型コロナウイルスの感染拡大を恐れた保育士の退職が相次いで運営困難となり、3月31日で閉園に追い込まれたことが、関係者への取材で分かった。園児計21人は市内の系列園が受け入れ、保育を継続する。
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3月31日に突然閉園となった「チャイルドランド新城園」=川崎市中原区で

「メロディ宮前平」「チャイルドランド新城園」系列8園で十数人

 閉園したのは、川崎市宮前区の認可外保育園「メロディ宮前平」と、川崎市中原区の企業主導型保育園「チャイルドランド新城園」で、いずれも同じ企業グループが運営していた。

 このグループは川崎市内で、閉園した保育園を含め8園を運営。グループ全体では、3月後半以降に退職した保育士が十数人に上っていた。

在宅勤務中の保護者が子どもを預ける…休園できずに濃厚接触

 系列園の職員によると、感染を防ぐために在宅勤務中の保護者が子どもを預けるケースが多く、休園できない事情がある。その上、密閉空間で保育士と園児の濃厚接触が避けられないため、感染への不安を抱える保育士は少なくないという。

 職員は「換気や消毒に気を付けていても、いつ、どこで感染するか分からない。著名な芸能人も感染し、『怖い』と辞めた人がここにきて続いた」と説明。保護者への閉園連絡は前日の30日だったが、1日にはトラブルはほとんどなかったという。


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川崎市への閉園通知は前日だった 関連要綱「1年前」に違反 運営会社を指導へ 

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3月31日に突如閉園したメロディ宮前平=川崎市宮前区で

 川崎市宮前区の認可外保育施設「メロディ宮前平」と中原区の企業主導型保育施設「チャイルドランド新城園」が3月31日に突然閉園した問題で、市が閉園前日に知ることになったのは市の関連要綱に違反していることが分かった。罰則はないが、市は運営会社を指導していくという。

保護者からの情報で市が把握

 川崎市保育課によると、宮前区で閉園した園は国の基準に基づく認可保育園ではないが、市独自で認定して保護者に保育料を補助する「認定保育園」だった。認定保育園に関する市の要綱で、閉園はその1年以上前に市に届けを出すことを定めている。

 両園は同じ代表者がグループ経営。今回は同30日に園側から閉園の連絡を受けた保護者から、情報が市に寄せられ、市が運営側に確認して分かったという。

 保育課の担当者は「要綱は、突然の閉園で保護者が困惑しないようにするため。再発防止に向けて園の運営会社を指導する」と説明した。

受け入れ先「トラブルはなし」

 一方、閉園した2園に通っていた園児全員が系列園で受け入れられたことを、川崎市も4月1日、確認した。この問題で保護者から市への苦情が31日には複数寄せられたが、1日にはなかった。

 メロディ宮前平の全園児を1日から受け入れた「メロディ宮崎台園」の職員は「閉園が急な話で保護者の方は驚かれたと思う。でも今日お話をさせていただき、トラブルがなかった」と胸をなで下ろした。この新旧二園の中間帯に自宅がある保護者も多く、登園の園バス利用や自家用車での送迎に大きな違いが出なかった事情もあるようだ。

 系列園の職員によると、閉園の背景には新型コロナウイルスの感染拡大を恐れて保育士の退職が相次いだことがあった。閉園した2園は比較的定員を満たしていない小規模園だったという。

「空きが多い状況」だったが…

 川崎市保育課によると、認可保育園を除き、市内の保育施設では、0歳児の受け入れ枠に余裕が出ている。国の制度改正で育児休業を取得しやすくなったことで、1歳児になるまでは園に入れずに育てる親が増えているという。

 31日に閉園した2園も、宮前区の園で定員28人に対して13人、中原区で定員21人のところ8人にとどまり、「他の施設に比べても空きが多い状況」(保育課の担当者)だった。

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  • 匿名 says:

    この法人の閉園理由は、経営者側の問題でしょう。いくらコロナが理由であっても一気に十数人が退職するというのは異常です。おそらく資格者数など足りない状況のまま今も経営を継続されているのでしょう。このような状況を市が知らないわけはなく、仮に把握していないのであればそれは問題です。

    私は保育士です。
    この法人の問題はさておき、現況保育園はウィルスの溜まり場です。幼い子たちが常にマスクを着用するのは難しいです。乳児もいます。換気にも限界があります。部屋の中で密集しないのは無理です。
    そんな中で感染をすれば報道をされ白い目で見られるのではないか…という不安を抱きつつ保育に当たっています。このような状況で、これからも保育士としてずっと働きたい!と思う人はどのくらいいるのでしょうか?
    こどもたちの命、保育士の命を守るためにも、この状況下での保育について再考して頂きたいです。

      
  • 匿名 says:

    コロナも遠因かもしれないけど、それだけではないかと。こんな状況になってようやく、日本の保育園や保育士の実情が公になったのでは。それでもまだ、一般社会に認識してもらえるほどでないとは思っています。福祉という仕事を選んだのだから自分は最後まで働く覚悟はしていますが、経済と命を天秤にかけるようなやり方には到底納得がいかないし、人や子どもを大切にしない国の行く末ははっきり言って暗いです。自分優先で預ける親もまた然り、親の質の向上も求めたい。どこに行くのかこの国は。

      
  • 匿名 says:

    名古屋市の保育園でも緊急事態宣言がでているにもかかわらず、テレワークになったのに預けにきたり、育休の母親も預けています、仕事があると嘘をついて預けたり、仕事が休みでも預けて行ったりと自粛では保育園に来る子供は減りません。休園になるまで来るようです。こんなときでも自分のことしか考えていない親たち。そんな親に育てられた子供たちが将来の日本を背負うなんて、日本の未来は真っ暗です。どうか、今は家庭で子育てをと言いたいです!今こそ子供とゆっくり向き合ってくださいと❗休園措置をとらない限り、親は登園させるのです。それを受け入れろという園側にも落胆します。保育士は毎日感染の恐怖を感じながらきています。やめたくなります。

      
  • 匿名 says:

    緊急事態宣言が出た最中、仕事を休めない事情を抱える人はたくさんいるけど、その影で、預かる人達が自分の身を守る事も十分にできない状態で、子供達の感染も気にしながら、過ごさなくてはいけない。コロナの前に疲労、心労で倒れかねないと思います。

    医療従事者、どうしてもどうしても仕事に支障をきたしてしまう理由がある人はお預かりとしてるけど、週3日開所とかって、しないと休まざるを得ない。という状況にならず、断言して対応しないと、感染の収束はますます遠くなると思います。
    仕事も大事です。収入がないと、生活できない。不安。働かざるを得ない状態なのはみんな同じだから、その辺の補助もしっかりしてほしい。これ以上被害を出さない事を考えるなら、よく考えて欲しいです。

    学童も一緒だと思います。これ以上は無理!この日だけ!と、決めないといけないと思う。これ以上広げない為に。お互いの命の為に。

      
  • 匿名 says:

    的外れなコメントかもしれませんが…
    コロナ感染を恐れて保育士さんたちが急に退職したことが閉園の一番の理由ということなのでしょうか?
    そうだとしたら、今まで子供達のために働いてきた保育士さんたちが可哀想です。この園を知っている保護者さんがこの記事を読んだら、あの先生達はコロナ感染が怖くて急に辞めたんだ、という印象を与えますよね?
    本当に辞めた先生たちみなさんが3月後半に一気に退職意思を示されたのでしょうか?もっと早くから意思を示していた人もいるのではないですか?

    閉園理由を一生懸命に働いてきた先生たちを理由にしていることに、哀しい気持ちになりました。

    先生方、今までお疲れ様でした。

      

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