保育士の人件費10.7%引き上げ 園によって支給が0円のところもある「園ガチャ」状態でいいのか

(2025年6月6日付 東京新聞朝刊)
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記者の質問に答える三原じゅん子こども政策担当相=東京都千代田区のこども家庭庁で

「まだもらえていない」「配分が…」

 「保育士の給与 10.7%引き上げへ」。昨秋、各メディアが一斉に報じました。本当に処遇改善になるのか。年明けから検証する取材を始めました。

 東京すくすくでは、4本の記事を公開しました。見えてきたのは「認可園の保育士の給与には税金が使われているのに、園によって保育士に渡る金額に差がある」という現実です。取材した2園の配分方法は全く違いました。ある園は、パート職員も含め、人事評価ごとに金額を設定。別の園では、正規職員を対象に全員に同額を振り分けました。後者は「忙しい年度末で、配分方法を考える時間がなかった」そうです。

 これらは、今回の賃上げ分を保育士に支払った適切な事例です。一方、「もらえていない」という声は多く、記事へのコメントには「家族経営の園で、身内のみがうるおっていく」「園長だけが多額を受け取っている」といった現状への不満がつづられていました。

園の裁量ではなく、確実に届く仕組みを 

 保育士の給与や、10.7%引き上げの元手は主に税金です。園によって支給額が0円~何十万円と大きく差がある「園ガチャ」状態でいいのでしょうか。

 「保育士の口座に直接振り込んで」という複数の声を受けて、4月に三原じゅん子こども政策担当相に質問しました。「支給対象者や金額に関する課題、事務を実施するにあたっての体制やコスト等の課題があり、困難だ」という回答でした。

 こども家庭庁は、「こども誰でも通園制度」を来年度から本格実施する予定です。全ての子どもの育ちを社会で支える方針は大切です。ただ、それならば、全ての保育士も大切にされるべきだと思います。子どもの命を預かるという重い責任に見合った働く環境や処遇改善が必要です。

 保育士の処遇改善についての記事はこちらから読めます。

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  • 匿名 says:

    東京都の認可保育園で働く時短正職員です。

    1人でクラス担任をしているので、週案・月案・個人記録・行事や製作全て担っていますが、都から支給されるはずの処遇改善費9,000円すら支給されていません。理由は園に裁量があるから。園で支給されない理由は標準8時間勤務の正職員ではないから。何度面談で訴えても改善されません。

    担任を持っていないなら納得いきますが、正職員と同じ仕事をしているのに短時間勤務というだけで支給されないことが遺憾です。

     女性 40代

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