親子で一緒にバスケ観戦を 東京ユナイテッドBCが目指す「子どもが安心して来られる」空間づくり

東京ユナイテッドバスケットボールクラブのチームマスコット「ユナイト」も子どもたちと一緒に応援=いずれも東京都江東区の有明アリーナで
1月下旬の週末にホームの有明アリーナで開催された2試合は「ファミリーデー」ということもあり、家族連れがたくさん来場。中には乳幼児を連れた来場者の姿もあり、近所から徒歩や自転車で訪れたという人も目立ちました。子どもと一緒に訪れた来場者に、観戦のきっかけや楽しみ方を聞きました。

ベビーカーを押した来場者の姿も
子どもたちを飽きさせない工夫
1月25日の土曜日、試合開始は17時30分からでしたが、2時間前の15時30分には会場となる有明アリーナが開場。いち早く訪れた家族連れは、サブアリーナに設置された子ども向けの「ユナイトパーク」に向かいます。木製のおままごとセットや電車レールなどで遊べるコーナーや、耳の聞こえない・聞こえにくいアスリートのための国際スポーツ大会「デフリンピック」の競技体験ができるコーナーのほか、この日はポケモンセンタートウキョーDXから遊びに来たピカチュ

体を動かして楽しめるコーナーで遊ぶ親子連れ
地元・江東区から3歳の長女と1歳の長男を連れて家族4人で来場した赤尾典彦さん(48)は、昨シーズンも今シーズンも開幕戦を家族で観戦したそう。「子どもと来られるのがいい。僕がバスケ好きなのですが、サブアリーナで遊べるイベントがあるので子どもも飽きません」
東京都板橋区から3歳の長男と生後2カ月の次男を連れて家族4人で来場したお父さん(30)は「僕も妻も野球やサッカーは行ったことがあるのですがバスケは初めてです。3歳の長男とスポーツ観戦を一緒にしたいと思っていて、今日が初めてのスポーツ観戦です」。赤ちゃんはお母さん(30)に抱っこされて気持ちよさそうに眠っていました。

この日は特別に「ポケモン☆キッズカーニバル」を開催。ピカチュウが登場し、大喜びの子どもたち
江東区からファンクラブに入っている2家族で来場した小学1年生、ひなこさんと、はるかさん。ひなこさんのお母さん(35)は、徒歩20分、バスで5分のところに住んでいるといい、「家の近所でプロスポーツが見られるのはありがたく、もう10回くらい来ています。近いので平日開催でも来やすく、友達とも会えるのがうれしいです」。
はるかさんのお父さん(41)は今シーズン11試合目の観戦。「バスケは子どもと見やすい環境なのがいいですね。屋内で雨風の心配がなく、試合も2時間で終わる。メインアリーナのコートに近い席でも他のスポーツと比べると安いので、選手との距離感も魅力です」と話し、「有明はまだ新しい町なので、近隣の住民が集まるきっかけになるといい」と期待します。

サブアリーナに設けられた「ユナイトパーク」の木のおもちゃで遊べるコーナーで過ごす子どもたち
「フェスのような場所と空間に」
試合開始までの時間、コートでは選手たちのアップの合間に、チアリーダーが踊ったり、試合中の応援のかけ声を練習したり。チームマスコットの青いウサギ「ユナイト」も登場していました。

試合開始前には子どもたちの元気いっぱいのチアリーディングも
現在B3リーグ3位と優勝を狙える位置につけている東京ユナイテッドBC。この日の対戦は立川ダイスとでした。「本日の注目選手」として紹介された守りの要の4番、田口暖(だん)選手を中心とした厳しいディフェンスからリズムをつくり、得点を重ねます。

この試合の「注目選手」として紹介された田口暖選手(4番)。厳しいディフェンスに加え、スティール2本、アシスト5本と活躍
観客席ではチームカラーの鮮やかな水色「ユナイトブルー」のタオルを掲げたり、「T・U・B・C!」のかけ声に合わせて「青援(せいえん)メガホン」を打って一生懸命応援するファンの子どもたちの姿が見られました。

お気に入りの選手のユニホームやグッズを身に着け、声援を送る子どもたち
友達家族と一緒に家族5人で自転車で来場した江東区の松倉美都さん(41)は、小学1年、3年、5年の子どもたちとユニホームを着て観戦。小学5年生の長男は東京ユナイテッドのクラブチームに入っているといい、「選手が教えてくれるので、とても距離が近い。子ども3人ともそれぞれ推しの選手がいて、ホームの試合は毎回見に来ています」と前の席に座らせた子どもたちを後ろから見守っていました。「楽しい!」と笑顔で観戦していた3年生の長女は「(今日は広いメインアリーナでの開催だけれど)サブアリーナだともっと近くで見られるから、もっと迫力がある」と話していました。

ゴール下に攻め込む東京ユナイテッドBCキャプテンの川島連選手

ゴール下で厳しいディフェンスを受けながらシュートするローカス・ガスティス選手(22番)。チーム最多の15リバウンドで攻守を支えた
42-22で迎えた第3Qには、キャプテンの2番、川島蓮選手が立て続けに2Pシュート、3Pシュートを決め、点差を広げます。最終的に81-53で勝利を飾った東京ユナイテッド。合計16得点の大活躍でMVPに選ばれた川島選手は、ヒーローインタビューで「最高です! 応援が力になるので、これからももっと声援お願いします!」と会場に呼びかけていました。

チーム最多16得点でこの日のMVPに選ばれた川島蓮選手(4番)
東京ユナイテッドバスケットボールクラブ広報担当の柳谷宣達(やなぎや・のぶと)さん(32)は「子どもが安心して来られる場所でレベルの高いプレーを見ることができ、会場に来たらバスケもバスケ以外も楽しめる、フェスのような場所と空間を目指して地域密着のつながりをつくっていきたいです」と話しています。

東京ユナイテッドBCの広報担当、柳谷宣達さん。メディアの取材対応に加え、試合中はコート際で自ら撮影も
取材を終えて
この日の試合時間は約1時間半。小さい子どもたちは、途中で飽きてしまわないかな、と気になっていました。私自身が、3人の子どもが小さい頃、子どもを飽きさせずにスポーツ観戦を楽しむことに苦労したからです。
スポーツ観戦となると、親は荷物の準備に、公共交通機関での移動、会場に着いてからも食事や水分補給、トイレのタイミング、おとなしく席に座っていられなくなってしまった時の時間のつぶし方など、気がかりがいっぱいです。特に子どもの年齢が小さいと、観戦のハードルは高くなるように思います。
最寄り駅で降りてまず驚いたのは、会場までの道のりのポイントポイントに誘導のスタッフが立ち、迷いやすいところで「ここを曲がると近そうに見えますが、横断歩道が渡れないので、ここはまっすぐに進んでください」と丁寧に声をかけてくれたこと。曲がり角で一瞬迷い立ち止まっただけで、少し離れた場所から飛んできて説明してくれました。子連れで道を間違えて引き返すのはダメージが大きいので、こうしたホスピタリティーも家族連れにとってはありがたいと感じました。
一緒に取材をした同僚は「野球やサッカーのスタジアムに子どもを連れて行くときに気になるのが、座席までの階段の段差が大きくて勾配が急なことや、屋外だとトイレが寒かったり、あまりきれいではなかったりすること。でも今回はその不安が一切なかった」と、会場内で子どもと動く際の安心感を高く評価していました。

チームマスコット「ユナイト」
試合開始前、試合中のタイムアウトやハーフタイムなどの短い時間には、コートにマスコット「ユナイト」やチアが登場して盛り上げたり、「T・U・B・C!」と会場と一緒にコールしたり。プロ選手のプレーを間近で見られることや、選手との距離が近く感じられることも大きな魅力の一つなのでしょう。私たちもすっかりTUBCのチームと選手に親近感を抱いて取材を終えました。
東京ユナイテッドバスケットボールクラブ(TUBC)
2020年東京オリンピック及びパラリンピック(開催は2021年)の競技会場として建設された東京都江東区の「有明アリーナ」をホームとし、2022-23年のシーズンからからBリーグに参戦する新しいプロバスケットボールチーム。1年目はB3リーグ6位、2年目は7位、3年目となる2024-25年は2025年1月31日現在、全17チーム中3位につけています。

速攻でレイアップシュートに行く今林萌(はじめ)選手(46番)。アグレッシブなプレーが持ち味
アグレッシブなディフェンスを持ち味とし、リーグでも失点数の少なさが目立つ。守りからリズムをつくり、素早い攻撃につなげる展開の速さが魅力。チーム広報の柳谷宣達さんは「点が入らない苦しい時も、ディフェンスだけは崩れない」と胸を張ります。

試合後、声援に応えながらコートを1周する選手たち
チームカラーは、鮮やかな水色「ユナイトブルー」。チームマスコットは有明けの月から来た青いウサギ「ユナイト」。シーズン52試合の半分を占めるホームゲーム26試合のうち、今シーズンは有明アリーナのメインアリーナ(収容人数1万5000人)で6試合、サブアリーナ(収容人数600~700人)で14試合、近隣の他会場で4試合を開催。次回ホームゲームは2月17日(月)、18日(土)19時から有明アリーナのメインアリーナで、ヴィアティン三重を迎えて開催します。
なるほど!
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