昨春の一斉休校が母親の離職要因に 自殺とDV相談も増加 「感染の専門家は推奨していなかった」内閣府研究会が指摘
柚木まり (2021年4月29日付 東京新聞朝刊)
内閣府の有識者研究会は28日、新型コロナウイルスの感染拡大が女性に及ぼす影響に関する調査・分析の結果をまとめた報告書を、丸川珠代男女共同参画担当相に提出した。報告書によると、政府が昨年2月末に全国の小中高校などに一斉休校・休園を要請した後、小学生以下の子どもを持つ母親の就業率が、子どものいない人よりも低下。問題の根底には、雇用慣行などを巡る男女格差があると指摘した。
労働力調査を分析 子の有無で就業率に差
報告書は政府の各種調査に基づき、コロナ禍の女性への影響を分析。(1)家庭内暴力(DV)などの増加(2)経済(3)健康(4)家事や育児、介護-の4項目について提言した。
このうち、母親の就業については、総務省の労働力調査を詳しく分析したところ、配偶者がいる女性のうち、小学生以下の子どもがいる人は、子どもがいない人に比べて、昨年4月の就業率が3.18ポイント低かった。昨年12月も2ポイント以上低く、一度仕事を辞めると就業しないケースが多い傾向も浮かび上がった。
子どもがいる女性では、シングルマザーの失業率が上がり、配偶者がいる人は求職しない人が増えた。DVの相談件数は前年同期比で増加傾向が続く。
自殺やDVの増加「つながっている」現実
女性の自殺者数は昨年10月の889人がピークだったが今年3月に増加に転じた。
報告書提出後の記者会見で、研究会メンバーの武藤香織・東京大医科学研究所教授は、一斉休校について「感染対策の専門家は推奨していなかった。感染状況による地域別の対応が必要だ」と指摘した。
研究会座長の白波瀬(しらはせ)佐和子・東京大教授は「コロナ禍の経済的な影響と自殺やDVの増加はつながっているとみられる。自殺の因果関係の特定は学術的にも難しいが、政府は『無関係ではなさそうだ』という現実を直視してほしい」と、女性の困窮対策を求めた。
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